2020-04-01から1ヶ月間の記事一覧
『ランチタイムメロディ』 『ランチタイムグルーヴ』 『ランチタイム・ステーション』 『ランチタイム・グッドネス』 ……『ランチタイム◯◯』という形式から、離れるべきか。 旧校舎向けの昼休み放送ラジオ番組。麻井会長は「GW明けに正式名称を決める」と言っ…
朝起きて、カーテンを開けた。 いい天気。 すごくいい天気。 「小春日和」、っていうのかな。 「小春」、わたしの小泉小陽(こはる)って名前と、おんなじ。 × × × きょうは、昭和の日。 昭和は遠くになりにけり――か。 昭和28年にテレビ放送が始まって、 …
麻井律(あさい りつ)。 桐原高校3年。 女子。 × × × 昼休みのチャイムと同時にすぐさま教室を抜け出し、旧校舎へと急行。 KHK(桐原放送協会)の根城(ねじろ)たる【第2放送室】のカギをあける。 そしてアタシは、ミキサーのスイッチをちからを込めてグ…
加賀くんは、みごとに、作文の課題を椛島先生に出すことに失敗した。したがって、加賀くんのスポーツ新聞部入部が決まった。 1年生部員を確保できたものの、これで一件落着、とは行かなそうだ。 × × × わたしは加賀くんと将棋を指している。 もちろん駒落ち…
放課後、【第2放送室】に行こうとしたら、同じクラスの野々村さんに呼び止められた。 「羽田くん、もしかして、『KHK』に入るつもりなの?」 145キロのストレートみたいな尋(たず)ね方だ。 それにしても、KHKの存在、またたく間に、浸透してないか……?…
おれの部屋で、愛と勉強会をしている。 おれは大学の課題をやり、愛は学校の宿題をやる。 何気なく向かいの愛を見ると、珍しく、宿題に手こずっているような表情だ。 「…難しいのか?」 「なにが?」 「宿題が。」 愛は強がるように、 「そうね、きょうのは…
朝、羽田さんみたいに、コーヒーを、砂糖・ミルクなしで飲もうとしたけれど、苦くて飲めたものではなかった。 羽田さん、やっぱし大人だな。 × × × このところ、羽田さんと、週3回電話で話している。 でも、週3回電話で話すのは、羽田さんとだけじゃない。…
部屋で勉強していたら、こんこんとノック。 あけてみると、あすかちゃんが立っていた。 なんだか申し訳無さそうにして立っているあすかちゃん。 「どうしたの?」 「入っていいですか?」 「もちろん。一緒に座ろ?」 で、ベッドに腰掛ける。 わたしの左隣で…
夕食後、ダイニングで雑誌を読んでいたら、おねーさんがやってきて、何やら含みのある笑みを浮かべてわたしに声をかけた。 「あすかちゃんあすかちゃん」 「なんでしょうか?」 「さっきインターネットしてたら、こんなものが見つかってねえ」 こんなもの、…
「……それで、『私たちが集団ヒステリーだっていうのを取り消してくれたら、羽田くんをそっちにあげる』って、甲斐田部長が」 「そっち、ってのは、ええと…桐原放送協会、だっけ」 「そう。KHK」 まるであすかちゃんの通ってる高校の「スポーツ新聞部」みたい…
【第2放送室】。 古い校舎の一隅(いちぐう)にある、【第2放送室】。 『KHK』という大きな略称の貼り紙のあるーー、 桐原放送協会(KHK)の、活動部屋……。 「麻井会長は、放送部の活動に縛られるのがイヤだったんですよね」 放課後の、【第2放送室】の、…
岡崎さんは新入生の加賀くんに将棋7番勝負で一度も勝てず、加賀くんの入部は叶わなかった。 「もう、彼は来てくれないんだろうか……」 ため息ついでに、瀬戸さんが嘆く。 「あんなヤツ、むしろ来てくれないほうがいいよ。将棋部のほうが絶対向いてるよ」 「…
きのうアツマくんが元気づけて、勇気づけてくれたから、きょう学校ではルンルン気分だった。 放課後、「部活……行きましょう?」と、率先して伊吹先生を促したら、 「なんかいいことでもあった?」と訊かれたので、 「はい、ありました」 「正直だね。元気そ…
金曜に学校から帰ってきたあたりから、愛が、少しだけ元気がないような気がしている。 土曜日曜と、部屋からあまり出てこなかったからな。 塞ぎ込んでるみたいだ。 なにがあったというのか。 × × × 夕方。 かなり早い時間帯に、愛は帰ってきた。 気になって…
中止になった期末テストの代わりとして実力テストが行われ、きょう結果がすべて返ってきた。 さやかとアカちゃんに激励され、わたしは学年1位への復帰を目指して、ここ1ヶ月間がんばって勉強した、つもりだ。 その結果ーー。 「学年3位だったんだって?」…
新学期になって、髪を少し切った。 同級生の奈美は、 「似合ってるじゃん、でも、なんで?」 と言ったが、 「なんとなく」とわたしは答えた。 「あいまいな表情だね」と奈美。 「あいまいじゃないよ」とわたしが突っぱねたら、 「ふ~~ん」と奈美は少し笑っ…
放送部の勧誘を受けているところを、強奪したってことは、どうしてもぼくが欲しかったってことだ。 どうしてぼくだったんだろう。 気になって、アサイ先輩のKHK(桐原放送協会)をたずねてみたくなった。 とはいってもKHKの活動場所がわからなかったの…
昼休みにタイミングよくアツマくんが利比古の写真を送ってきてくれたので、わたしはゴキゲンだった。 学校のことをいろいろ聞き出してやろうと思って、うきうき胸をはずませながら、弟がすでに帰っているお邸にわたしは向かった。 帰ってみると、居間のソフ…
つつがなく入学式も終わり、付き添いの母さんとおれは利比古と合流、記念写真を撮っている。 愛には、「利比古の写真を撮ったらすぐ送信するように!」とうるさく言われている。 スマホを見ながら、あいつの学校の昼休みって何時何分からだったっけ、と思い…
保健室の一ノ瀬先生が黒髪ロングストレートでツンツンしていた女子高生時代を想い出す話。
こんな時代、こんな状況、こんな世の中、こんなムード、だからこそ、のーー愛の「所信表明演説」。
羽田愛、17歳、4月から高等部3年。居候の日々を、ちょっぴしセンチメンタルに振り返ってみたりなどして。