部屋で勉強していたら、こんこんとノック。
あけてみると、あすかちゃんが立っていた。
なんだか申し訳無さそうにして立っているあすかちゃん。
「どうしたの?」
「入っていいですか?」
「もちろん。一緒に座ろ?」
で、ベッドに腰掛ける。
わたしの左隣で、両手を握りあわせて、なんだか小さくなっているあすかちゃんなのであった。
「だいじょうぶ、なんか元気ないよ?」
「…ごめんなさい。
それと、きのうはごめんなさい」
「え」
だいぶ恐縮そうに、わたしの顔を見ているあすかちゃん。
「きのうって…なに?
もしかして、わたしが作文オリンピックを紹介したときのこと??
なんにも悪いことしてないじゃん、あすかちゃん。
謝る必要なんてないよ。
むしろ、わたしのほうが調子に乗ってた」
「いえ、調子に乗ったのはわたしのほうでした。
わたし、態度が大きすぎました。
タメ口になったり。」
タメ口、なってたっけ。
そもそもあすかちゃんがタメ口でも、気にしないけど……。
あすかちゃんのほうに近づいて、なだめようとする。
「そんなことないよ」
「あります…」
「ないない。わたしのほうが態度が大きかった」
「いいえわたしのほうです」
「違うって。わたしのほうだって」
「違わないですわたしです」
「違う違う、あすかちゃん悪くない、わたしが悪い」
「わたしですって」
「違うってば! わたしのせい」
「おねーさんのせいじゃありません!」
「ある!」
「ありません!!」
「あるって!! ど、どーしてわからないかな…」
「ない!!」
「なくない!!!」
「なくなくないですっ!!!」
口論は、平行線をたどり、
しだいにお互いに、息切れがしてきて、
言葉数も少なく、
休戦状態にーー。
「……疲れてきちゃった。」
「……おねーさんもですか?
実はわたしも…夜だし、なんだかウトウトしてきちゃいました。」
「ほんとだ、あすかちゃん、眠そう」
情けなさそうにあすかちゃんはウトウトしながら苦笑いする。
それを見てわたしは、なんだかホッとした。
そして、
「わたしのーー負け。」
わたしの敗北宣言を聞いたあすかちゃんは肩をひっつかせて、寝言のように、
「かちまけなんかじゃありませんよぉ…」
半分寝てるじゃない。
子猫のようなあすかちゃんの肩を抱きながら、
「わたしのほうがおねーさんだから、わたしの負け」
「いみわかんない」
「年上のおねーさんの責任と、あすかちゃんを眠たくさせちゃった責任」
「だからなんですか…そ…れは……せきにん…なんて、……おーげさなっ」
「あすかちゃん、」
反応なし。
しょうがないなあ、と、
「わたしも、まぶたが重たくなってきちゃった」
でも、返事がなくって、それは、あすかちゃんが寝息をすぅすぅとたてているからで。
やがて、わたしの意識も、うつらうつら、となっていきーー。
× × ×
「久しぶりだね、あすかちゃんと一緒に寝るの」
恥ずかしいのか、彼女はそれには応えず、甘えるようにして身を寄せてくる。
正直、彼女の胸が当たっているのだが、彼女の胸の大きさに配慮して、
「ぬいぐるみとか、持ってこなかったの?」
「もう中学生じゃないんで……」
「関係あるかなあ」呆れたようにわたしは笑う。
「おねーさぁん」
わたしにベッドの中で抱きつきながらあすかちゃんが言う。
こんなに寝相悪かったっけ? と訝(いぶか)りながら、
「なにー?」と問いかけると、
「おねーさんのからだ、やわらかいですねぇ…」
そう言って、わたしの上半身の中心に顔をうずめるように、頭の角度を変えてきた。
わたしの胸が小さいの、わかってるクセに。
あすかのエッチ。
「おにいちゃんがうらやましいです~」
「💢」