「ムラサキくん、今日は短縮版だよ」
「そっか」
「……」
「え、えっ、茶々乃(ささの)さん、どーかしたの!?」
「ムラサキくんってさ」
「う、うん」
「『自分がブログ内でレアキャラになりかかってる』って自覚は無いの?」
「えええ……。そんなに登場頻度が低い印象なの、ぼく!?」
「わたしにはそう見えるんだよ」
「で、でも……。そんなことを言う茶々乃さんだって……」
「~~♫」
「鼻歌!?」
× × ×
「茶々乃さんのサークルは最近どうなの」
「『虹北学園(こうほくがくえん)』?」
「そう」
「しーらないっ♫」
「さ、さ、さすがに冗談だよねっ!?」
「わたし冗談言っちゃったね、ムラサキくん」
「驚愕しちゃうでしょ、さっきみたいに言われたら。きみはサークル内で副幹事長格のポジションなはず……!」
「ムラサキくんのほうは、どうなの?」
「エッ、ぼくのほう?」
「わたしとムラサキくんはいま、学生会館入り口付近のベンチに座ってて。それで、ムラサキくんの『MINT JAMS(ミント・ジャムス)』っていうサークルは、学生会館入ってすぐのとこにお部屋があって」
「……そうだね」
「で、『MINT JAMS』から少し奥のほうに行くと、わたしたちの『虹北学園』があるわけなんだけど」
「……うん」
「育ってるの?」
「育ってる?? な、なにが」
「ムラサキくんのサークルの後輩会員に決まってるでしょ。鴨宮学(かもみや まなぶ)くんとか朝日(あさひ)リリカちゃんとか、活きのいい2年生部員がいるよね?」
「……。
元気だよ、後輩は。特に鴨宮くんやリリカさんは、毎日のようにサークル部屋に来てくれてるな。
だけど……茶々乃さん、きみの『活きのいい』って表現は、どうなのかな」
「……なによ。『活きのいい』って形容したのが不穏当だっていうの」
「い……いまいちばん不穏当なのは、きみの醸し出す雰囲気だよね!?」
「わけわかんない!! どういうツッコミ、それ!?」
「あ……あまり喚かないで茶々乃さん。通行してる人が3人立ち止まったよ」
「ムラサキくん!!」
「は、はい」
「わたし以外の風景は、よく見えてるのね……!!」