「ムラサキくん、今日は短縮版だよ」
「!!」
「え、なに、どうしたの」
「デジャブった」
「デジャブ……?」
「いや、まあ、デジャブったんだ、うん」
「やっぱりしょーがないね、ムラサキくんって」
「『やっぱり』って」
「――900字程度でよろしくお願いします」
× × ×
「茶々乃(ささの)さん。ぼく、若干眠くて」
「寝不足なの」
「大当たり」
「ダメじゃん。900字に到達する前に眠り始めたりしないでよね」
「それぐらいなら」
「寝不足ってことは夜更かしだったってことでしょ。いったいムラサキくんは、なにをして夜更かしだったの?」
「机に向かって、考えてることをずっとノートに書いてて」
「こ、怖っ」
「ヘンな考えごとしてたワケじゃないよ。音楽関連」
「あー……。音楽鑑賞サークル所属者ゆえの」
「うん。
そして、今ぼくと茶々乃さんが喋ってる場所は、音楽鑑賞サークル『MINT JAMS』のサークル部屋」
「無理やり結びつける必要があったの?」
「だって。どこで会話してるのかぐらい、明示しておきたいじゃん? 今回は地の文が無いんだから、この会話の中で『場所』に触れておかなきゃ――」
「5W1Hってこと?」
「5W1Hは大事だよ」
「じゃあ、今の時間帯にも触れとくべきじゃない?」
「今は……ちょうど午前10時か」
「土曜日のね」
「そうだね」
「プリティーリズムの時間だ」
「……えっ?」
× × ×
「ムラサキくんは音楽オタクのくせにアニメに疎いんだね……」
「り、理屈がわかんない」
「音楽のことしか見えてないからダメなんだよ」
「理屈がブッ飛び過ぎじゃない!? さすがに」
「……」
「ど、どーしたの、」
「……やっぱやめた」
「えええ!?」
× × ×
「あーもうっ、脳内がこんがらがって来ちゃったから、アーティスト名でしりとりするっ!」
「きみ、大丈夫……? ぼくとは真逆で、眼が冴えすぎてるんじゃ……」
「ムラサキくんのバカ」
「と、突然の罵倒だ」
「『竹内まりや』」
「……。『山下達郎』」
「『宇崎竜童』」
「『ウルフルズ』」
「『ず』……『ず』……」
「エッ、有名なアーティスト居るでしょ、最近大流行の――」
「ず、
ずっと短縮版だったらいいのにっ」
「――聴こうか? 悩みごとでもあるんだったら」