「利比古くん利比古くん」
「はい、あすかさん」
「つい先日利比古くん、わたしに向かって、岩手めんこいテレビについて熱く語ってくれたけど」
「……。それがなにか?」
「ああいうのは程々にしといたほうが良いと思うよ。いくら全国各地の放送局が好きだからって」
「オタク過ぎるってことですか」
「顔面とは裏腹に」
「また危うい発言を……」
「危うい?」
「こっちの話です。……要するに、趣味を押し出し過ぎるなってことですよね」
「もっとマトモな趣味だったらいくらでも語って良いんだよ。映画とか小説とか」
「確かにそれは言えますね」
「ほのかちゃんだって機嫌が悪くなっちゃう」
「いきなり川又さんの名前を出してきましたね」
「ほのかちゃん、ああ見えても気が強くって」
「なんとなく分かります、ぼくにも」
「なんとなくじゃダメっ」
「え」
「はぁ……。
あのさ。
たとえば、だよ??
不機嫌なほのかちゃんと、利比古くんが一緒に居たとします。
利比古くんが、いきなり高知さんさんテレビの歴史について語り始めたとします。
……どうなると思う??」
「――あすかさん」
「こ、答えてよ」
「あすかさん案外、シチュエーションを仮定するのが苦手なんですね」
「だ、だからっ、高知さんさんテレビの歴史を、ほのかちゃんに熱弁しちゃったらっ!!」
「まあ、叩かれますよね。そこらへんにあったスポーツ新聞を丸めたものとかで」
「そ、そーだよ。ほのかちゃん、利比古くんを叩きたくなると思うよ」
「それはちょっとイヤかもです」
「……閑話休題」
「閑話休題?」
「知ってるよね、利比古くん? ……高知さんさんテレビって、何チャンネルなの」
「興味がそこですか~!」
「……そこなんだよ。悪い!?」