見知らぬ、洋楽

前回

 

(あれは……もしかして……あかりが『スカウトする』って言ってた、的場マキさん!?)

 

TSUTAYAのレジ

 間違いない、あれは、あかりが言っていた、ギターを弾くのがすごく上手いという、同学年の的場マキさんだ。

 でも、的場さんは、なんかレジの人と揉めてるみたいだ。

 

だから、【スライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーン】ですよぉ!

『だから、知らないけん、おれ、そのアーティスト。勘弁してくれへん!?』

 

 すずかは、抜き足差し足、レジで店員さんと的場さんが揉めているところに近づいていく。

 

 的場さんがこっちを見た。

 同じ制服だから、慌ててるのが顔にモロに出ていて、正直かわいい。

 

「きみら勝高(カンコウ)の友達か」

「同級生です。

 的場さん、どうしたの?」

「え、い、いや、あの、え、えーと、わたしは、ただ、その……」

「おれも勝高(カンコウ)のOBだけどな、どげすーか、よーわからんだわ、この娘(こ)を」

「的場さん、なにを探していたの?」

「わ、わ、わたし、す、す、す、すすすすす『スライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーン』っていうバンドのアルバムを探していただけで……(;´Д`)」

「なんてアルバム?」

「す、す、すすすすす『スタンド!』っていうアルバム(・_・;)」

 

スタンド!

スタンド!

 

 

「ふーん、知らないなあ」

「そげだがな、お姉ちゃん。この娘も知らんゆーとるがな」

「的場さん、あそこに検索機があるから、探し方を教えてあげるよ」

え、え、ええええええええ!?(;´Д`)

 

結局『スタンド!』は見つからなかったーー。

 店外に出た。

 カフェもマックも腰を下ろす場所もないので、立ちんぼでふたりで話した。

 

「残念だったね、『暴動』ってアルバムだったらあったのにね」

 

暴動

暴動

 

 

「でも、『暴動』は、お父さんが……(; ゚д゚)ハッ!

 え、ええーと、『暴動』ってアルバムはね、家にあるの」

「フフフ(´∀`*)」

「ええーと、な、なにかおかしいこといったっけ(・_・;)」

「的場さんのお家って、やっぱ音楽ファミリーなんだ」

「ヽ(;゚д゚)ノ ビクッ!!」

 

「そもそもなんでわたしの名前知ってたの?」

「ごめん、戸崎あかりから聞いた」

「別のクラスだよね」

「わたしとあかりがね」

 

「でも的場さんすごいなあ。『スライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーン』なんて、長い長いバンドの名前がスラスラ出てくるんだもん」

「別にすごくはないよ」

「またまた~w謙遜しちゃってww」

「え……(゜o゜;)」

「たぶん、わたしのクラスの男子も女子も、『スライアンドザストーン』なんてひとりも知らないよ?」

違う! (💢・_・)

「え!? ご、ごめん、なにか気に障ること言った!?」

「『スライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーン』!!

 ( ー`дー´)キリッ」

「あ、(m´・ω・`)m ゴメン… 名前長いから間違えた」

 

「ごめんなさい……OTL

 つい、音楽の話になると、目が血走って」

「いーよいーよw」

 

「で、お父さんが持ってるその『ぼーどー』ってアルバムのほかに、代表作があって、それを探していたんだ?」

There's a Riot Goin' On ( ー`дー´)」

「!?」

 

「ご、ごめんなさい……OTL 『暴動』の正式タイトルがそういうタイトルなの」

「あ、そ、そうかw」

 

「『暴動』って、なんか物騒なタイトルだし、なんか激しい曲を想像しちゃうなあ」

全く逆ね( ー`дー´)

「ヽ(;゚д゚)ノ ビクッ!!」

 

「ごごごごめんなさい……orz

  でも、『スライ』(・アンド・ザ・ファミリー・ストーン)のアルバムの中で、『暴動』はいちばんの名盤って認められているけど、到底、はじめて聴くひとには薦められないの」

「どうして?」

「スライは、本来は、『スタンド!』みたいな、すごくファンキーなサウンドが持ち味だったんだけど」

「ああ、さっき的場さんが探してたアルバム」

「そう。でも、リーダーのスライ・ストーン麻薬中毒になっちゃって、『暴動』になると、すごく気だるい音楽になっちゃうのね。

『暴動』はそこがいいんだけどね」

「へ、へえ、麻薬中毒(;・∀・)」

「この頃のミュージシャンはクスリに溺れた人がたくさんいるよ。最悪の場合、それで死んじゃう。ほんとうに、有名なミュージシャンが何人も20代や30代で、薬物中毒がもとで死んじゃったの」

 

「……( ^ω^)」

「ご、ごごごごめんね、ひとりで勝手に変な話進めちゃって」

「的場さんって、面白い」

「ヽ(;゚д゚)ノ ェッ!!」

ほんとうに、音楽が、好きなんだなあって

 

~つづく~