(あれは……もしかして……あかりが『スカウトする』って言ってた、的場マキさん!?)
TSUTAYAのレジ
間違いない、あれは、あかりが言っていた、ギターを弾くのがすごく上手いという、同学年の的場マキさんだ。
でも、的場さんは、なんかレジの人と揉めてるみたいだ。
『だから、【スライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーン】ですよぉ!』
『だから、知らないけん、おれ、そのアーティスト。勘弁してくれへん!?』
すずかは、抜き足差し足、レジで店員さんと的場さんが揉めているところに近づいていく。
的場さんがこっちを見た。
同じ制服だから、慌ててるのが顔にモロに出ていて、正直かわいい。
「きみら勝高(カンコウ)の友達か」
「同級生です。
的場さん、どうしたの?」
「え、い、いや、あの、え、えーと、わたしは、ただ、その……」
「おれも勝高(カンコウ)のOBだけどな、どげすーか、よーわからんだわ、この娘(こ)を」
「的場さん、なにを探していたの?」
「わ、わ、わたし、す、す、す、すすすすす『スライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーン』っていうバンドのアルバムを探していただけで……(;´Д`)」
「なんてアルバム?」
「す、す、すすすすす『スタンド!』っていうアルバム(・_・;)」
- アーティスト: スライ&ザ・ファミリー・ストーン
- 出版社/メーカー: エピックレコードジャパン
- 発売日: 1991/08/30
- メディア: CD
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (26件) を見る
「ふーん、知らないなあ」
「そげだがな、お姉ちゃん。この娘も知らんゆーとるがな」
「的場さん、あそこに検索機があるから、探し方を教えてあげるよ」
「え、え、ええええええええ!?(;´Д`)」
結局『スタンド!』は見つからなかったーー。
店外に出た。
カフェもマックも腰を下ろす場所もないので、立ちんぼでふたりで話した。
「残念だったね、『暴動』ってアルバムだったらあったのにね」
- アーティスト: スライ&ザ・ファミリー・ストーン
- 出版社/メーカー: エピックレコードジャパン
- 発売日: 1990/12/21
- メディア: CD
- 購入: 1人 クリック: 1回
- この商品を含むブログを見る
「でも、『暴動』は、お父さんが……(; ゚д゚)ハッ!
え、ええーと、『暴動』ってアルバムはね、家にあるの」
「フフフ(´∀`*)」
「ええーと、な、なにかおかしいこといったっけ(・_・;)」
「的場さんのお家って、やっぱ音楽ファミリーなんだ」
「ヽ(;゚д゚)ノ ビクッ!!」
「そもそもなんでわたしの名前知ってたの?」
「ごめん、戸崎あかりから聞いた」
「別のクラスだよね」
「わたしとあかりがね」
「でも的場さんすごいなあ。『スライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーン』なんて、長い長いバンドの名前がスラスラ出てくるんだもん」
「別にすごくはないよ」
「またまた~w謙遜しちゃってww」
「え……(゜o゜;)」
「たぶん、わたしのクラスの男子も女子も、『スライアンドザストーン』なんてひとりも知らないよ?」
「違う! (💢・_・)」
「え!? ご、ごめん、なにか気に障ること言った!?」
「『スライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーン』!!
( ー`дー´)キリッ」
「あ、(m´・ω・`)m ゴメン… 名前長いから間違えた」
「ごめんなさい……OTL
つい、音楽の話になると、目が血走って」
「いーよいーよw」
「で、お父さんが持ってるその『ぼーどー』ってアルバムのほかに、代表作があって、それを探していたんだ?」
「There's a Riot Goin' On ( ー`дー´)」
「!?」
「ご、ごめんなさい……OTL 『暴動』の正式タイトルがそういうタイトルなの」
「あ、そ、そうかw」
「『暴動』って、なんか物騒なタイトルだし、なんか激しい曲を想像しちゃうなあ」
「全く逆ね( ー`дー´)」
「ヽ(;゚д゚)ノ ビクッ!!」
「ごごごごめんなさい……orz
でも、『スライ』(・アンド・ザ・ファミリー・ストーン)のアルバムの中で、『暴動』はいちばんの名盤って認められているけど、到底、はじめて聴くひとには薦められないの」
「どうして?」
「スライは、本来は、『スタンド!』みたいな、すごくファンキーなサウンドが持ち味だったんだけど」
「ああ、さっき的場さんが探してたアルバム」
「そう。でも、リーダーのスライ・ストーンが麻薬中毒になっちゃって、『暴動』になると、すごく気だるい音楽になっちゃうのね。
『暴動』はそこがいいんだけどね」
「へ、へえ、麻薬中毒(;・∀・)」
「この頃のミュージシャンはクスリに溺れた人がたくさんいるよ。最悪の場合、それで死んじゃう。ほんとうに、有名なミュージシャンが何人も20代や30代で、薬物中毒がもとで死んじゃったの」
「……( ^ω^)」
「ご、ごごごごめんね、ひとりで勝手に変な話進めちゃって」
「的場さんって、面白い」
「ヽ(;゚д゚)ノ ェッ!!」
「ほんとうに、音楽が、好きなんだなあって」
~つづく~