「流(ながる)くん、今日は短縮版だよ」
「えっ、カレンさん!?」
「だからあ、短縮版だって言ってるの。800字程度でおさめたい」
「……なんだか懐かしい響きだな。『短縮版』」
「わたしも~~」
× × ×
「で、ぼくたち2人は、短縮版という制限の中で、いったいなにを話せばいいんだろう」
「わたしは話したいことがあるよ」
「どんな?」
「話したいことっていうより、訊きたいこと、かな」
「ぼくに? 訊きたいって、どんなことを」
「愛ちゃんいるでしょ。羽田愛ちゃん」
「う、うん。いるけど」
「お邸(やしき)から巣立って、彼氏のアツマくんとふたり暮らしをしてるわけだけど」
「そ、そうだね」
「流くん。あなた、画像持ってないの」
「画像??」
「愛ちゃんの画像っ!! ずっとお邸(やしき)で一緒に暮らしてきてたんだし、巣立ってからも彼女、定期的に『帰省』してくれてるんでしょ!? だったら写真ぐらい撮ってるわよね」
「……」
「黙んないで流くん」
「ま、まあ、撮ったりは、してるね」
「ツーショットとかも?」
「うん。愛ちゃんのほうから一方的に、『ツーショット撮りましょうよ』と言ってきたり」
「うわあ、愛ちゃんカワイイ。自分から積極的にツーショットを望むカワイイ愛ちゃんの姿が、眼に浮かんできそうだわ」
「なはは……」
「もうっ、『なはは……』じゃないからっ。ツーショットの画像、あなたのスマホに入ってるんでしょ?」
「入ってる」
「見せなさいよ」
「な、なんかゴーインだねえ」
「早くして。ますます美人になった愛ちゃんを味わいたいのよ」
× × ×
「……ツーショット見せたけど、どんな感想を抱いただろうか」
「オトナっぽかった~~」
「やっぱりか」
「花も恥じらう女子大学生」
「まあ、愛ちゃんも21歳になったわけだし。実感できる、年々オトナっぽくなっていってるのは」
「流くんに質問」
「えっ」
「現在(いま)の21歳の愛ちゃんと、16歳のときの愛ちゃんとでは、どっちが好み?」
「な……なにそれ」
「選んでよっ」
「どんな意図でもって、そんな2択を」
「意図なんかどーでもいいよっ!! もうとっくに800文字超過してるんだよ!?」
「……やっぱり、カレンさんには敵わないな」