「おはようアツマくん」
「おーおはよう、愛」
「アツマくん、忘れてないわよね? 明後日の昭和の日はお邸(やしき)に行って、葉山先輩と会うのよ」
「忘れてないぞー」
「たいへんよろしい」
「また葉山のためにクリームソーダ作ってやらにゃいかんのよな」
「面倒いの」
「少し面倒い」
「面倒くさがっちゃダメよー? それがあなたの『仕事』なんだから」
「仕事休みの日まで喫茶店員みたいなコトせにゃいかんのか」
「ブツブツ言わない」
「チェッ」
「なにその態度、朝ご飯の量半分にするわよ!?」
× × ×
「朝からおまえを怒らせてしまってゴメンナサイ」
「分かれば宜しい」
「朝飯美味かった」
「そーでしょ☆」
「んーっと。明後日葉山と会って、おまえは葉山に勉強を教えてやるんだよな」
「センパイは京大を受けるんだからね」
「なんで明後日なんだ? 明日でも良いんでねーのか? あいつ基本的にヒマだろうに」
「あなたはわたしとセンパイを怒らせた」
「えっ……。なんかコワい」
「明日はセンパイ忙しいわよ。日曜日なんだから」
「あっ」
「気が付いたみたいね」
「お馬さんか」
「春の天皇賞があるの」
「でもさ、確か春の天皇賞は京都競馬場のレースなんだし、あいつは基本スマホで馬券買うから東京競馬場に行くワケでも無かろうし。そんなにお馬さんに時間を取られるか?」
「なんにも分かってない!!」
「ま、前のめりになるな」
「G1レースの日は彼女の中では朝から『お祭り』なのよ!!」
「お、オマツリ?? フェスティバル!?」
「競馬の祭典は日本ダービーだけど、彼女にとって全てのG1の日が『祭典』なのっ」
「……ひとついいか」
「なによ」
「そんなにお馬さんにうつつを抜かしてて、京大に合格できるんかいな」
「……」
「呆然としてるな〜」