【愛の◯◯】後輩はいつも口から出任せ

 

「葉山先輩、今日は短縮版ですよ」

「分かったわ、羽田さん」

 

× × ×

 

「センパイ。明日は菊花賞ですねえ」

「羽田さんッ!?」

「え、なんですかそのリアクションは。のけぞったりしなくたって」

「あなた……勝馬投票券を購入したりしたことは」

「まだ無いですが」

「よ、良かったぁ」

「あーそっかー。わたしがどんどん競馬のことに詳しくなっていくのを危惧してるんですねー」

「そういうことよ。全部、競馬ファンのわたしの責任なんだけど」

「この前わたし、東京競馬場に関するコトを小耳に挟んで」

「えっ?」

東京競馬場って意外に空気が美味しいそうで」

「……」

「どうしてそんなにわたしの顔面を見つめてるんですかー?」

東京競馬場の空気云々に関しては、ノーコメントで」

ダイタクヘリオスみたいな逃げかたするんですね」

ど、どーしてダイタクヘリオス知ってんのよ!?!?

 

× × ×

 

ウマ娘TVアニメ第3期が始まった影響もあるんだと思います」

「のめり込まないでね……くれぐれも」

「ところで。ウマの話なんかよりもずーっと重要なトピックですけど」

「?」

「葉山先輩の誕生日までちょうど1ヶ月」

「!」

「23歳ですよね。23回目のバースデーおめでとうございます」

「気が早いわよ羽田さん。フライングで祝わなくたって」

「いいえ祝います」

「よ……予祝??」

「いいえ違います」

 

× × ×

 

「わたしも祝ってあげる。センパイの幼なじみのキョウさんも祝ってあげる。そしてもちろんセンパイのご両親も」

「祝ってくれるわね。きっとお父さんがわたしのためにご馳走(ちそう)を作ってくれる」

「センパイのお父さんはセンパイよりも料理上手なんでしたよね?」

「料理の腕を披露するのはホントに稀だけどね」

「センパイのお料理偏差値を京都大学レベルだとすると――」

「きょ、京大レベルのお料理偏差値って、なに」

「――センパイのお父さんのお料理偏差値はコロンビア大学レベル、かしら?」

「……そもそも京大とコロンビア大ってどっちが偏差値高いのよ」

「わかんないです。あとで世界大学ランキングとか見ときます」

「あなたらしいわね……そういういい加減さ」

「溜め息禁止ですよセンパイ☆」