「流(ながる)さん!!」
「ず、ずいぶん元気良いね、愛ちゃん」
「本日は『短縮版』です」
「ああ、土曜日だからか」
「ですねー。土曜日恒例の短縮版のブログ記事」
「ぼくと愛ちゃんの会話だけで、地の文は無いワケだ」
「賢いですね、流さん」
「いやいや」
「時間がかなり『押している』ので、短縮版の中でも短い文字数になっちゃうんですけど」
「『押している』ってのは……」
「ブログの『中の人』が、時間が『押している』んです。なので、『焦点』を1つに絞りたいんですけど」
「『焦点』? フォーカス??」
「今、わたしと流さんはダイニングテーブルで向き合っている。そしてこれからわたしは2人分のお昼ごはんを作る」
「ぼくが手伝ったらいけないんだったよね」
「1人で出来なきゃ意味が無い。1人で調理するコトに意義があるんです」
「愛ちゃんは強いよね」
「激強(げきつよ)ですから」
「アハハ……」
「なーんか間の抜けたリアクションですねえ?」
「んんっ」
「本気で言ったワケじゃ無いですよーっ☆」
「こ、ここらへんが激強なんだよな、愛ちゃんは」
「今回の焦点(フォーカス)は、『わたしのお料理スキルが如何にして向上していったのか』です」
「お母さんに教えてもらったんだろう? きみのお母さんのコトだから、ずいぶんと厳しく……」
「ちょーっとちがうんですよねー☆」
「違う?」
「一方的に厳しく指導されたコトなんて無いんですよ。わたしとわたしのお母さんは、ケンカしながらお料理を作っていたんです」
「それってどういうコトなんだ……。愛ちゃん」
「青い顔にならなくたって」
「ケンカしながら、お料理??」
「ハイ! 互いに罵り合いながら」
「で、でもでも、技術の指導は、お母さんの方から……」
「そこがビミョーだったんですよねぇ」
「教えてもらわないと……技術は身に付かないでしょ」
「〜〜♫」
「鼻歌!?!? 突然過ぎるよ愛ちゃん」
「流さん。わたし野菜を切りたいです」
「始めちゃうの、お料理」
「時間が押してますし♫」
「例えばさ、野菜切るにしたって、きみはお母さんからみっちりと教わったはずで」
「わたしはケンカしながら野菜を切ってたんですよ☆」
「……幼少期から『激強』だったんだね。良く分かるよ」