「ムラサキさんムラサキさん」
「なあに？ リリカさん」
「わたしは今日、このブログに登場することができましたけど」
「……？？」
「学（まなぶ）くん。鴨宮学（かもみや まなぶ）くんが、ずっとブログに浮上できてないって思うんですけど」
「ふ、浮上、とは！？」
「コトバ通りです」
× × ×
「分かったよ。リリカさんに言わせれば、鴨宮くんがずーっと『空気』のような存在になっちゃってると」
「そうですよ。
あとですね。
わたし、いつも気になるんですよ。
なにが気になるかと言うと――」
「う、うん」
「なんでムラサキさんは、『学くん』じゃなくて、『鴨宮くん』呼びなんですか？」
「……それは、ぼくの『苗字呼び』が問題だと？」
「問題ではないかと。さっきも『鴨宮くんが～』って言ってましたよねえ」
「確かに……そうだね」
「もっとフレンドリーに」
「……」
「後輩からの命令です」
「……はい」
× × ×
「ところでさ。リリカさん、きみ、ACIDMANってロックバンド知ってる？」
「どーいう話題の切り換えなんですかね。不自然なまでに唐突に切り換えてくるんですね」
「ど、どうなの、ご存知？？ ACIDMAN」
「存じ上げませんが」
「じゃ、じゃあ、名前を覚えて帰るといいよ。とてもいいバンドなんだ。例えば、『スロウレイン』って楽曲があって。ぼく、『スロウレイン』を何十回も聴いて、レポート用紙を『スロウレイン』に関することで埋めて……」
「あのぉー」
「ど、どうしたの」
「気付かないんですか！？ わたしがいかに苦々しい気持ちになってるか」
「ど、どうして！？ 苦々しいってことは、とっても不機嫌ってことでしょ！？ ぼくのなにがマズかったのさ」
「答える義務ないです」
「そんな！？？！」
「ヒントは、今回のムラサキさんの発言の中に」
「……むずかしいよ」
「むずかしくないですから」
