「ムラサキ君、今日は短縮版だよ」
「……そうですか」
「あれ~? なーんかムスッとしてるねえ」
「梢さん。あなたが、ぼくのサークルの会員でもないのに、ぼくのサークルの部屋にやって来るからですよ」
「え、それが原因!?」
「楽しそうに驚かないでください」
× × ×
「まったくもう……。梢さんは自分の持ち場に戻ってくださいよ」
「持ち場?」
「あなたには『西日本研究会』っていう居場所が……」
「いーじゃんいーじゃん、そーんなこと!」
「不都合です!! ぼくらのサークルにとっては」
「本当に不都合?? 今日、きみ以外に1人もこのお部屋に来てないじゃない」
「……」
「言い返せない」
「ま、まぁ、祝日でもありますし、みんな出不精なのかも」
「苦しい言い訳だね」
「べつに苦しくないですっ!」
「おー、ツンツンとんがっちゃってる」
「ぼくだってそんなときもあります」
「和ませてみたいなあ」
「ぼくを?」
「きみを」
「和ませるって言ったって……」
「せっかくだから、『西日本』のお話をしてマッタリとしよっかぁ」
「不穏過ぎます。」
「不穏じゃないよ。
ねえねえ。
ムラサキ君はさぁ。
KBS京都ってテレビ局があるの、知ってる?」
「はい!? 知ってるわけないでしょ」
「マジ」
「すぐに関西地方の放送局やら鉄道路線やらの話題に持っていくんですね……」
「アイデンティティだし」
「コワいことを言わないでください」
「関西地方は、独立系のテレビ局多くって」
「ぼくの話を聞いてるんですか!?」
「なんとね。KBS京都って、1回倒産してんのよ」
「!? テレビ局が、倒産!?」
「したの。倒産」
「と、倒産、というよりも、経営破綻、としたほうが、良いのでは」
「まあコトバの適切さは二の次であって」
「どうなったらテレビ局が潰れるんですか……」
「話せば長ーーくなるけど」
「ぼ、ぼくを拘束したいんだ梢さん、きっと」
「拘束したい気持ちは否めない。
だけど……KBS京都のこの件に関しては、ググってもらったほうが早いかな☆」
「『無責任年上女子』もほどほどにお願いしたいんですけどっ!!」