朝、眼が覚める。
ベッドから身を起こす。
身を起こした3秒後に、会津くんのことを考え始める。
昨日。
だけど、
『会津くんを死ぬほど罵倒したから、苛立ちが翌朝まで持続している』
というのとは、『ちょっと違う』。
実のところ、起床直後のわたしの感情は、苛立ちとはかけ離れたモノになっていて。
その『感情』をコトバにすることを……ためらう。
その『感情』は文字にも声にもできないモノ。
うまく表現できない。
そう……お上手に自分のお気持ちを扱うことなんて……現在(いま)のわたしには……。
『感情』を取り扱う代わりに。
わたしはわたしのパジャマの胸を押さえる。
× × ×
階下(した)に下りた。
休暇中のママがテレビを前にしてくつろいでいる。
ソファでくつろぎ中のママに、
「おはよう」
と言ってからすぐ、
「わたしシャワー浴びたい」
と言う。
しかし、
「ゴハンが先がいいんじゃない?」
と振り向いてきたママに言われてしまう。
「ゴハンよりも、シャワーが先……」
と突っぱねるが、
「ゴハンが先がいいわよお」
とやり返されてしまう。
「どうしてそう思うの、ママは」
訊く。
すると、
「ゴハン食べるほうが、気持ちも落ち着くでしょ」
わたしはわけがわからず、
「……気持ちを落ち着かせるのなら、シャワーでもいいんじゃん」
と言うが、
「だーって。現在(いま)の状態のソラは、シャワー浴びちゃうと、のぼせちゃいそうだし」
「のぼせる?? シャワーでなんか、のぼせないよっ」
「ソラぁ」
「……?」
「たまには、ママの言うこと、よーく聴きなさいよ」
とくん、とくん。
心臓の音の高鳴りが……高鳴りまくってきた。
ひとりでに。
ひとりでに、とくんとくんとくん。
「昨日、ソラの叫びが、階下(ここ)まで漏れてきたのよ。
あなた、スポーツ新聞部の会津くんと、スマホで大喧嘩してたんでしょう」
どくん。
どくん、どくん。
どくんどくんどくんどくん。
危険なぐらい、鼓動がハイスピードになっていく。
心臓が、アクセルを踏みっぱなし。
「ほ~~ら」
ママの微笑が胸に突き刺さる。
胸だけじゃない。
カラダのいろんな部分に。
突き刺さって……臓器まで、届く。
ママが急にソファから立って、
「冷やしタオル作ってあげよっか♫」
と言ってくる。
それから、
「とりあえず、火照った顔を冷やすのよ。冷やしてから、朝ゴハン」
と、ママは……。
わたしは、
「か、か、かってに、わたしの『こうどう』を、きめないでっ」
と、理性を喪いながら言うけれど、
「決めるわよ。
だってあなた、シャワーのための着替えを全部床に落とすぐらい、混乱しまくってるんだもの~~」
と、ママは……。