【愛の◯◯】草刈り男子・巧くん

 

「巧くん、今日は短縮版だよ?」

「――え、なぎささん??」

「なにボーッとしてんの。ボヤボヤしてたら、おいてくよ。

 短縮版なの、短縮版っ。

 もう言わないんだからね!?」

「……そうか。わかった。呑み込めた」

「ホントかな」

「……ホントだよ」

「じゃあ自己紹介して」

「自己紹介!?」

「ブログ読者の皆様に」

「き、きみからやってくれよ、なぎささん」

「えーーーっ」

「……。

 すみません、読者の皆様。

 んーと、ぼくは、黒柳巧(くろやなぎ たくみ)と申しまして、いちおう、いま隣にいる板東(ばんどう)なぎささんと、交際しておりまして――」

巧くんバカ

「!??!」

「『交際しておりまして』に『いちおう』を付けるなっ」

「そ、そっか。ぼく、気弱すぎて、余計な修飾語付けちゃって……ごめんね」

「ヘタな修飾(しゅうしょく)語の付けかたしてると、就職(しゅうしょく)も失敗するよ!?」

 

「――ねえ、なぎささん」

 

「……え、え、巧くん、なんなのその眼は。まるで、わたしのことを心配しすぎなぐらい心配してるみたいな……」

 

「するさ、心配」

「どうして!?」

「きみ、睡眠不足なのを、無理にテンションを上げることで、ごまかしてない?」

 

「……どうしてわかるわけ、わたしの、寝不足……」

 

「なぎささん」

「た、巧くんっっ!!」

「男子を――あんまりナメてもらっても困るんだよ?」

「な、なにその言いかたっ。べつにナメてないし」

「寝不足、回復したくないの」

「んん……」

「お昼寝すればいいじゃないか」

「ど、どこで」

「ここで」

「え」

「ここは、なぎささんの実家の、なぎささんルーム以外のどこでもないじゃんか

「そ、そうだけどっ……!」

「ぼく、邪魔なんかしないから。遠慮なく」

「だけど、わたしの眠るあいだ、巧くんはなにをして」

「きみのおうちのお庭の草でも刈ってあげようかな?」

 

「ジョーク……よね……!?」

 

「いや。

 こう見えても、暑さには強いんだ」