「葉山先輩、今日は短縮版ですよ」
「そうなのね、羽田さん」
「いちおう、900字ぐらいで」
「分かったわ」
「状況説明をします。
土曜の昼下がり。
センパイが、お邸(やしき)を訪問中。
明日美子さんが焼いてくれたクッキーを、ふたりで味わっているところ」
「このクッキーすごく美味しいわ。わたしだったらこんなに美味しく作れないわ」
「センパイもそう思いますよね? わたしにも無理です」
「戸部くんとあすかちゃんのお母さんはいったい何者なの」
「元・編集者ですが」
「いやいや、そういう話ではなくて」
× × ×
「――えっと、昨日ここに、梢(こずえ)さんっていう女性(ひと)が来て、羽田さんは接待しようとしたんだけど、ついついヤキモチが出てしまったのよね?」
「ハイ。ヤキモチが膨らんでました」
「ヤキモチが膨らんだところまでは聴いたけど、そのあと収拾はついたの?」
「それなりに打ち解けましたよ? 明日美子さんも梢さんを見に来て、彼女が『緩衝材』の役目を果たしてくれて」
「それ、明日美子さんサマサマじゃないの」
「そうだったんですよね……」
「あなたが溜め息をついちゃう気持ちも分かるわ。あなただけだったら、ヤキモチが膨らみ切ってパチン!! って割れちゃったかもしれない」
「そうなんですよ、まさに」
「どうせ戸部くんは不甲斐なくて緩衝材には成れっこなかっただろうし」
「まさにまさに」
× × ×
「梢さんの身長は166.5センチだそうです」
「あら、わたしとあなたより、ちょうど6センチ高いのね」
「スタイル良いのが眼についちゃったから、最初はついつい攻撃的になってしまって。……どうですかセンパイ? センパイも、あと6センチぐらいは身長が欲しかったんじゃないですか??」
「ちょっぴり」
「ちょっぴり……ですか」
「わたしは意外なの、羽田さんがそんなにモデル体型に憧れてるみたいだってことが」
「見栄えがもっと良くなりますし」
「あははっ……。
だけど、羽田さん。あなたは今の体型のままで十二分に魅力的よ?? たしかに女子の平均身長より少し高いだけだけど、カラダのラインがとっても綺麗なんだし」
「……」
「もっと誇ったって」
「……センパイのカラダのラインも、同じくステキですよ」
「あらぁ」