「利比古、今日は短縮版よ」
「エッ?! ゴールデンウィーク始まったのに、いきなり短縮版なの」
「土曜日でもあるし」
「ああ……。土曜日だったら、仕方ないのか」
「ゴールデンウィーク初日は、昭和の日ね」
「そうだね」
「『昭和』の日なんだけど、わたしたちはバリバリの平成生まれ」
「……。うぅむ」
「とっ利比古?? なんなのよ、いきなり腕組みして……」
「たしかに、お姉ちゃんにしたって、平成生まれの平成世代なんだけどさ」
「……?」
「お姉ちゃんは、いろんな意味で、平成っぽくないよね」
「ええっ!?」
「だって、そーでしょ」
「た、例えば!?」
「口調だよ、口調」
「口調!?」
「話しかた。特に語尾が、ハッキリ言って昭和っぽい――」
「と、としひこくぅん」
「なに」
「あのね。昭和っぽい、ってあんたは言うけど。
『~よ』だとか『~のよ』だとか『~だわ』だとか、そういった語尾はもはや、わたしのトレードマークみたいなものなんであって」
「トレードマーク、ねぇ」
「それに。アカちゃんや葉山先輩だって、わたしと同じような話しかたで話すでしょう?? この話しかたは、わたしの専売特許じゃないのよ」
「たしかに。その理屈はうなずける」
「で、でしょっ?!」
「少し、話が逸れちゃうんだけど……」
「な、なによ」
「ぼく、お姉ちゃんとアカ子さんの喋りかたを、比較検討したことがあって」
「ど……どうしてそんな比較検討を」
「それでさ。
お姉ちゃんとアカ子さんの喋りかたが、ビミョーに違うことに気づいたんだ」
「……違う、とは?!」
「アカ子さんって、『~けれど』っていう言い回しを多用するんだよ。それに対してお姉ちゃんは、『~けれど』っていう言い回しを少しもしないんだ。お姉ちゃんは、『~けれど』じゃなくって、『~けど』なんだよね」
「……」
「どうしたのさ、お姉ちゃん。ぼくは、言い回しの差異を指摘しただけなんだよ? 呆然となる必要なんて、ある??」
「……ぽかーん」
「エーッ、口に出して『ぽかーん』を言う必要も」
「……ぽかーん。」