【愛の◯◯】お探しの商品は、父のメーカーのクルマの模型です

 

はい、皆さまこんにちは、アカ子です!

久々に、このブログに『地の文』が戻ってきましたね!!

…もとい、

きのうは、『短縮版』だったそうですが、

きょうは、『短縮版』とは行かないまでも、『省エネ』モードで行きたいという、中の人の……ご意向だそうです。

なにをもって『省エネ』なのか、わたしは少しもわからないんですけれども、

とにかく『省エネ』進行で行こうね――という当局からのお達しで。

そもそも、なぜ『省エネ』なのか?

それは……企業秘密、なんでしょう。

中の人の、企業秘密……!

 

× × ×

 

『省エネ』の具体性を把握できないまま、わたしはバイトへ。

…どうでもいいことかもしれないけれど、

わたし、日曜日に登場することが、極端に多い気がする。

登場というか、『登板』というか……。

日曜日にブログの『当番』で『登板』するのが定着してる、って感じるの。

いわば、『サンデーアカ子』?

――わたしに不都合はないので、いいんだけれど、ね。

 

日曜日は、定例のミニ四駆大会。

先週とは色違いのタ◯ヤ模型風Tシャツを着て、お店に行った。

 

「あ、ねーちゃん、きょうは水色Tシャツだ」

小学生の男の子が、ミニ四駆大会会場に入ってくるなり、わたしのTシャツの色違いに言及してくる。

「おんなじデザインのTシャツ、何枚も持ってんだな」

そう言って彼は元気よく笑う。

罪のない笑い。

「――けど、そんなTシャツ、どこのお店で売ってんの?」

気になるらしく、Tシャツの話題を続ける彼に、

「売ってるわけじゃないのよ」

と、伝える。

「え、どういう意味」

「作ったの」

「だれが」

「わたしが」

「…ウソだぁ」

「ほんとうよ」

「…マジか?? 信じらんねぇ」

「信じられなくてもいいわ」

暖かい微笑みで彼に言うと、

彼は少し戸惑いの色を見せながらも、

「…どんな、『ぎじゅつ』なんだよ」

ということばを漏らす。

ふと気になるのは――、

この子は、『ぎじゅつ』を漢字で書けるのかしら、ということ。

 

わたしは小学何年生のとき、『技術』が漢字で書けるようになったかしら――。

そんなことを思いながら、サーキットのほうに去っていく彼を見送った。

 

× × ×

 

ミニ四駆大会の対応だけでなく、レジ番もする。

もともと、

 

ミニ四駆

・ラジコン

・クルマの模型

 

こういったカテゴリーに、強みのある模型店で、

そうとうマニアックでレアな製品を求めてやってくるお客さんも、少なくない。

 

『助けが要(い)ったら、遠慮なく呼んでくれよ』

バイトを始めるときに、店主のイバセさんは、わたしにそう伝えた。

『助け…ですか』

『尋ねられた製品がどの場所に置いてあるのかとか、そもそも尋ねられた製品が流通しているのか――とか、わからなくなったときは』

『…はい』

わたしがうなずくと、イバセさんは、不敵な笑みで、

『もっとも――』

と言い、

それから、意味深に、

『きみならば――助けなんて、必要ないのかもしれないが』

と言ってきたから、

『そ、そんなことないですっ、バイト初めてなんですから、わからないことしか、ないですっ』

と慌て気味に言ったのだけれど、

イバセさんは……ニヤリ、とするばかりだった。

 

 

男性客が、レジカウンターに近づいてくる。

「…あれっ、イバセさん居ないのか」

不思議そうな眼でわたしを見下ろす。

怯(ひる)むことなく、

「――ご用は?」

とわたしは訊く。

いけない。

いきなり、態度が強すぎたかしら。

「んっ……」

不意打ちを食らったようになる男性客。

困っちゃったのかも。

「――失礼いたしました」

ここは、

社長令嬢らしく――おしとやかなスマイルを作って、

「いらっしゃいませ。

 なにか――お探しの商品でも、ございますでしょうか?」

 

穏やかに、穏やかに。

 

うろたえ加減ながらも、男性客は、

「……あるんだけどね、探してるクルマの模型が。

 でも……。」

 

笑顔を崩さないよう、心がけて、

「でも?」

 

すると男性客は、

「……いや、キミに訊いたとしても、ちょっとわかんないんじゃないかな~、と、正直思うんだけど、な」

 

笑顔を崩さず、

なおかつ、攻めの姿勢を――崩さず。

 

「――クルマの模型といいますと、どのメーカーの、どの車種になりますか?」

 

「――えっ」

 

たじろがせちゃったか……。

 

でも、引き続き、わたしはニッコリと、営業スマイルで。

 

「とりあえず、メーカーと、車種だけでも。」

 

「……」

 

「おっしゃっていただけませんか?」

 

「……◯◯の、△△、なんだけども」

 

――ああ、それなら、すぐにお持ちしますよ♫

 

!?

 

 

よかった。

イバセさんに助けを求める必要も、なかった。

 

――お父さんのメーカーのクルマだった、

そんなオチこそ…ついたものの。

 

けれども、

たとえ、お客さんが探し求めているのが、お父さんのメーカーのクルマの模型ではなかったとしても、

わたしなら、対応できる――自信がある。

 

イバセさんは、そこも、織り込み済みなんだろう。

 

『やたらクルマに詳しい女子大生が模型店でバイトしてる』

――って、評判になっちゃうのは、

それはそれで、良し悪しだけれど。

……ま、いいわよね。

お父さんは……そういうのを、まったく気にしない社長なんだし。