「アツマくん、きょうは短縮版だよ」
「ぬぬっ…」
「できれば、1000文字以内で――」
「あーっわかったわかった」
「え、なに……!?」
「おまえの言いたいことはわかったから。
ついでに、管理人の言いたいことも」
「……そうなの」
「1000文字以内で、済ませるよう、努力する」
「た、たのもしいわね、どうしてそんなに、たのもしいの」
「なんどめだ短縮版、って感じだろ?
慣れてんだ、もう」
「ポジティブじゃない、ずいぶん」
「おれは、オトナなんだ」
「オトナの対応、ってこと?」
「YES」
「…なんか、楽しんでるわね」
× × ×
「ところでさ」
「なによ」
「さいきん、思うんだけど」
「なにを」
「管理人のヤツ……『手抜き』してねぇか?」
「……かしら?」
「だってー。
ここ3日間ぐらい、地の文がない記事が連発されてるし。きょうの記事だって、おんなじスタイルだろ?」
「……地の文がないのが、そんなに悪いのかしら?」
「地の文書くほどエネルギー使ってないってことじゃねーか。省エネも、良し悪しだよな」
「会話文だけの記事も、変わりなく好評であるってわたしは認識してるんだけど」
「それはそうとなー」
「そんなに不満あるわけ」
「3人以上登場人物がいるときに、どーすんの? どーしても地の文要るよな」
『そのときは、もちろん、地の文で、分かりやすくしますから』
「ウワァびびった、だれの声だ、どっから聞こえてくるんだこの声」
「管理人さんの『天の声』でしょ?」
「愛、お、おまえ、なんでそんな冷静沈着なんだ」
「今回はそーゆーコンセプトだから」
「…は?」
× × ×
「まったく…管理人ディスったら、すぐにこれだよ」
「懲(こ)りた?」
「懲り懲りだっ。
…おれは、残りの時間、英語の勉強をさせてもらう」
『熱心ですね』
「うるせぇよ管理人ッ!!」
「まぁまぁ」
「チキショッ」
「――もしかして、いまアツマくんが手に持ってる新聞、英字新聞?」
「そーだ。これで、英語スキルを高めるんだ」
「前代未聞の意識の高さね」
「おれをなんだと思ってやがる」
「――はやく読みなよ」
「言われんくたって。
……あのなー、いちおうおれ、英米文学専攻なんだからな」
「知ってるよ」
「別に、高すぎねーよ、意識」
「そっかあ♫」
「なんだその、浮足立ったテンション……」
「提案があります」
「えぇ……せっかく英字新聞に眼を通し始めたのに」
「――ねぇ、こんど、『外国人に英語で道を尋ねられそうなところ』に、わたしとふたりで行ってみようよ」
「なんじゃいな、その提案はっ」
「ひとえに、アツマくんの英語力を試したくって」
「どゆこと…?」
「外人さんに英語で道を尋ねられたら、アツマくんが英語で道案内してあげるの」
「英会話してみろ――と?」
「英会話スキルをどれだけ発揮できるか」
「――そんなシチュエーション、頻繁にあるか? 街を歩いていて、『エクスキューズミー』、とか……」
『ぼくはありましたよ』
「るせぇよ管理人ッッ!! 3回もしゃしゃり出てくんじゃねぇよ」
「アツマくぅ~ん」
「なんでしょーかーっ、愛さーん」
「天井に向かって喚いても……なんにも変わんないよ」
「フンッ」
「居直りも、ほどほどに」
「いや居直りとは違うから」