きのう、戸部邸で、ルミナさんのお誕生会をひらいた。
ーーギンさんと、ルミナさん。
幼稚園から、ずっといっしょの、
いつでもいっしょの、どこでもいっしょの、
幼なじみ。
ーーいいなあ。
幼なじみ。
わたしには、幼なじみ、いないから。
葉山先輩における”キョウくん”さんみたいな存在。
正直、うらやましく、思うときも、ある。
……ウチの学校のみんなは、どうなんだろう?
さやか
「いないねえ」
アカちゃん
「いないわ。
ーー強いて挙げるなら、蜜柑がそうなのかしら?」
文芸部の香織センパイ
「いたら教えてほしいぐらいだよっ」
文芸部の川又さん
「特にそういった人は…」
伊吹先生
「いるよ」
「えっ、もしかして、ダンナさんですか?」
「まっさかぁ。
マンガじゃあるまいし。
ーー自立して、家庭を作ってるよ。
ずっと近所に住んでたんだけどね。
でもアイツはいい相談相手になってくれたなー。
中学のとき、あたしに初めて恋人ができたときも、一番最初に相談相手になってくれたのは、アイツだったし。
あたしが悩んでるとき、よく相談にのってくれた。」
「ーーなんか、お悩み相談窓口みたいですね…」
× × ×
けっこう久々な感じの校内プール。
水泳部の練習を顔パスで見学する。
3年の千葉センパイが泳いでいる。
「千葉センパイはもう大会には出られないんですよね」
「ーーうん。ほんとうは引退なんだけど、身体がなまっちゃうからw」
「大学でも水泳は続けられるんですよね?」
「(遠くを見るような目で)
ーーどうしよっかな。」
「ど、どうしてそこで迷ってるんですか、センパイ!?」
「迷うよ~?w
小学生のころとかは、大会でいい成績残すとチヤホヤされて、それはそれでうれしかったんだけどさ。
自己ベスト出したら、美味しいもの食べさせてもらったりさ。
でも、最近、思うの。
記録を更新すること、他人よりいい成績を出すことだけが、水泳なのかな、って。
表彰台に上るのだけが、スポーツじゃないよなあ、って」
「で、でもっ! スポーツってのは自分を高めるものじゃあないんですか!?」
「羽田さん、運動部に入ったことは?」
「ありませんけど…」
「体育会畑に長年いるとね、いろいろな不都合も見えてきちゃうんだよ」
「千葉センパイ……、
どうして、そんな寂しい眼をするんですか!?
そ、そういうことで相談できる、
悩みを打ち明けられる、
幼なじみの男の子とか、いないんですか!?」
「ーーーー!!」
「(;´Д`)せ、センパイ!?!?
顔が真っ赤ですよ?
もしかして……、
図星ですか?」