葉山家
の
午後
いま、4時。
横にねっころびながら、フジテレビの某レース中継番組(婉曲)を観ていて、いま番組がちょうど終わったところ。
……雨かー。
あちゃーっ。
近所の本屋さんに行けないな。
正確には、行く気力がない。
雨天の悪影響による、心身の不調。
「(寝返りを打って)買わなきゃいけない漫画雑誌があるんだけどなー」
『むつみ、買いたいマンガあるの?
おかあさんが買ってきてあげようか』
あ、おかあさんに聞こえちゃった。
「べ、べつにいいよ。マイナーな漫画雑誌でおかあさん探しにくいし、単行本で読めばいいんだし、
……でも、好きなマンガが、今月号で最終回なんだ……。」
「本音はすぐに読みたいんじゃんw」
「あいにく、その通り」
「雑誌の名前、なんていうの?」
「『コミックガーデン』。
でもわたしが行かなきゃ、探しにくいからさ、だから、やっぱり」
「むつみちゃーん、いまはスマホって便利なものがあるの知ってる?w
この雑誌よね? 『コミックガーデン』」
「そ、そうか今はスマホで1発で画像ツモれるんだ」
「ツモれる、?」
「な、なんでもないよ、おかーさん」
「(わたしの頭に手を置いて)おかあさんはなんでも知ってるよ、知らないことも知ってるかもしれない」
困惑すると同時に、冷や汗がいっぱい流れた。
「でも品薄でもうお店にないかもしれないよ」
「いーのいーのブライアン・イーノ」
「(- -;)唐突なダジャレ…」
「でも連載17年ってすごいわね、あんたの年齢とほとんど変わらないじゃん」
「そうだよ、わたしが物心つく前からずっと続いてた」
窓の外は雨。
そういえば、
小箱とたん先生、
「雨の描写」が上手かったっけ。
『スケッチブック』。
新聞掲載以外の4コマジャンル限定だと、連載期間、上から数えて何番目だったんだろう。
『ひだまりスケッチ』よりも長かったよね、たしか。
母が「コミックガーデン」を買いに出た
『悲しいときは悲しい曲を聴くのよ』
正確には記憶してないけど、
『スケッチブック』のとある登場人物が、そんなことを言っていた。
べつに悲しい気分じゃないから、
悲しい曲は聞かないけど、
こういう天気でモヤモヤした気分だから、
スローでダウナーな曲を聴こうと思って、
耳にヘッドホンを突っ込んだ。
× × ×
「(o_ _)o…ムクリ」
「あれ!?
お、おかあさん、なにやってるの」
おかあさんがいつの間にか帰ってきて、
眠りに落ちていたわたしを膝枕している。
「むつみ、おかえり、は?」
「おかえり、おかあさん……」
「もひとつ言うことは?」
「…ごめんなさい。」
「(わたしの背中にもたれて)
ちがーう!!」
「?!?!」
「ーーあ、
『コミックガーデン』、よかった、まだ置いてあったんだね。
わざわざごめんね、おかあさん」
「ちがーーう!!w」
「え?!
あ、そ、そっかそっか、
ありがとう。
雨の中ご苦労さま、ありがとう、おかーさん」
「はい、むつみはよくできる子」
「子ども扱いしないで」
そう言いつつも、
目頭がじんわりしてきたが、
少しだけの嬉し涙を、
わたしは我慢したくなかった。
羽田さん、
あなたの名前じゃないけど、
『愛』ってものが、わたし、
わかりかけてきたんだと思う。
いろんな人と繋がっていて、いろんな人とのあいだに「愛」のかたちはあるんだけど、
きょうのは、家族愛だった。