【愛の〇〇】「コミックガーデン」2019年7月号

葉山家

午後

 

いま、4時。

横にねっころびながら、フジテレビの某レース中継番組(婉曲)を観ていて、いま番組がちょうど終わったところ。

 

……雨かー。

あちゃーっ。

近所の本屋さんに行けないな。

正確には、行く気力がない。

雨天の悪影響による、心身の不調。

 

「(寝返りを打って)買わなきゃいけない漫画雑誌があるんだけどなー」

 

『むつみ、買いたいマンガあるの?

 おかあさんが買ってきてあげようか』

 

あ、おかあさんに聞こえちゃった。

 

「べ、べつにいいよ。マイナーな漫画雑誌でおかあさん探しにくいし、単行本で読めばいいんだし、

 ……でも、好きなマンガが、今月号で最終回なんだ……。」

 

「本音はすぐに読みたいんじゃんw」

「あいにく、その通り」

「雑誌の名前、なんていうの?」

「『コミックガーデン』。

 でもわたしが行かなきゃ、探しにくいからさ、だから、やっぱり」

「むつみちゃーん、いまはスマホって便利なものがあるの知ってる?w

 この雑誌よね? 『コミックガーデン』」

 

コミックガーデン 2019年 07 月号 [雑誌]

 

「そ、そうか今はスマホで1発で画像ツモれるんだ」

「ツモれる、?」

「な、なんでもないよ、おかーさん」

「(わたしの頭に手を置いて)おかあさんはなんでも知ってるよ、知らないことも知ってるかもしれない」

 

困惑すると同時に、冷や汗がいっぱい流れた。

 

「でも品薄でもうお店にないかもしれないよ」

いーのいーのブライアン・イーノ

「(-  -;)唐突なダジャレ…」

「でも連載17年ってすごいわね、あんたの年齢とほとんど変わらないじゃん」

「そうだよ、わたしが物心つく前からずっと続いてた」

 

窓の外は雨。

 

そういえば、

小箱とたん先生、

「雨の描写」が上手かったっけ。

 

『スケッチブック』。

新聞掲載以外の4コマジャンル限定だと、連載期間、上から数えて何番目だったんだろう。

ひだまりスケッチ』よりも長かったよね、たしか。

 

母が「コミックガーデン」を買いに出た

 

『悲しいときは悲しい曲を聴くのよ』

 

正確には記憶してないけど、

『スケッチブック』のとある登場人物が、そんなことを言っていた。

 

べつに悲しい気分じゃないから、

悲しい曲は聞かないけど、

こういう天気でモヤモヤした気分だから、

スローでダウナーな曲を聴こうと思って、

耳にヘッドホンを突っ込んだ。

 

 

 

× × ×

「(o_ _)o…ムクリ」

 

「あれ!?

 お、おかあさん、なにやってるの」

 

おかあさんがいつの間にか帰ってきて、

眠りに落ちていたわたしを膝枕している。

 

「むつみ、おかえり、は?」

「おかえり、おかあさん……」

「もひとつ言うことは?」

「…ごめんなさい。」

「(わたしの背中にもたれて)

 ちがーう!!

「?!?!」

 

コミックガーデン 2019年 07 月号 [雑誌]

 

「ーーあ、

 『コミックガーデン』、よかった、まだ置いてあったんだね。

 わざわざごめんね、おかあさん」

ちがーーう!!w

「え?!

 あ、そ、そっかそっか、

 ありがとう。

 雨の中ご苦労さま、ありがとう、おかーさん」

 

「はい、むつみはよくできる子」

「子ども扱いしないで」

 

そう言いつつも、

目頭がじんわりしてきたが、

少しだけの嬉し涙を、

わたしは我慢したくなかった。

 

 

 

 

羽田さん、

あなたの名前じゃないけど、

『愛』ってものが、わたし、

わかりかけてきたんだと思う。

いろんな人と繋がっていて、いろんな人とのあいだに「愛」のかたちはあるんだけど、

きょうのは、家族愛だった。