年明け早々、同学年の女友だちについて考えてみる。
小泉小陽(こはる)。
慶應文学部合格を一発でツモって、順風満帆。
きのう、電話で話したが、案の定テレビの年末年始特番について熱く語りつづけて、わたしを呆れさせた。
ただ、小泉の話自体は面白かった。
それから、小泉にはある野望があって、お正月に地方都市を旅行して、宿のテレビで地元企業の「止め画(え)CM」をひたすらチェックしたいらしい。
「止め画CM」って、いったい、なによ……?
八木八重子。
あけまして浪人生。
でもその身分は、3月で返上しないとね。
…予備校通ってるだけ、わたしより全然えらいよ……
それはともかく!
八重子がどの大学受けるかも気になるところだが、なんと八重子にはどうも気になっている男の子がいるらしく、個人的にはその男の子のほうが気になる。
工藤くん? だったかしら。運命的に放送部のコンテストで出会い、運命的に同じ予備校で再会したという。
しかし彼の第一志望は、京都大学。
八重子、彼のあとを追って(?)、関西の大学に行きはしないかしら。
もちろん八重子本人の意志のままに…だけど、八重子が東京からいなくなっちゃうのは、さみしいな。
藤村アン。
実を言うと、きょうこれからわたしは、藤村家におじゃまするのであります。
ま、新年の挨拶がてら、ふたりだけの女子会みたいなものね。
アンの家に行くの、久しぶりも久しぶりな気がする。
たぶん、高等部時代末期に、アンの家庭教師役を買って出て、通っていたとき、以来?
じゃあほんとうに久々ね。
楽しみ。
素(す)のアンが見られそうでw
お昼前
葉山家ダイニング
「おとーさん、おはよう♫」
「おー、むつみおはよう。
なんだかきょうは、ウキウキしてるみたいじゃないか」
「おとーさんどうしてわかるの…」
「なんだ、そのリアクションw」
「…友だちのウチに行くって、言ってなかったっけ」
「藤村さん、だっけ?」
「そうよ」
「こっちの家にもよく来てくれてるみたいじゃないか」
「そうよ…おとうさんとは、あんまり顔を合わせてないと思うけど、ね」
「紹介してくれてもいいだろ~w」
「(-_-;)恋人みたいに…アンは女の子だって」
「下の名前、アンちゃんっていうのか」
「そう、杏(アンズ)って書いて、アン。」
「あのね、アンが大学入ってから、なんか一方的に彼女のほうからわたしんちに来るみたいな状態になってたから」
「自分から動いてみることにしたんだな」
「そう。今後は積極的に『外に出てみる』ことにしたの」
「むつみ、
お父さん、おまえが外に出るってことは、とってもいいことだと思う。
でも、無理のしすぎは心配だ。
お母さんも、同じように、心配してるぞ」
「わかってる…。
お母さんが心配になるのは、わたしも心苦しい」
「それはみんなそうだ」
「うん、わかってる」
「でも、以前と違うのは、おまえを助けてくれる、支えてくれるひとが、数え切れないくらい増えたことだ。
むつみ、しんどくなったら、そんな人たちに寄りかかってみなさい。
いつか、じぶんが助けられたように、相手を助けてあげられるときが来る」
ーー何から何まで、おとうさんは、
正しい。
「ま、重い話は、ここまでにして。
お父さん、今年の目標を立てたんだ」
「目標?」
「むつみと一緒にフランス語を勉強すること」
Σ(・・;)そういえば、せっかくおとうさんとの共同所有になったフランス語の教科書、全然読めてなかった。
「むつみ、一日15分でも10分でもいいから、お父さんとフランス語を勉強する時間をつくろう。」
「…語学は反復と継続が大事だからね。」
「それだけじゃないぞ、大事なことは」
「ーー??」
「いつか、わかるよw」
× × ×
こうしてわたしは出かけた。
言い忘れてましたが、
藤村家、マンション住みです。
・玄関
・アンのお母さんが出迎えてくれる
「(丁重に)あけましておめでとうございます」
「おめでと~~、久しぶりねえ、ね、おせちの残りがあるんだけど、晩ごはん食べてくでしょ? ね!」
「はい、よろこんで。
あのーー、
(心なしか顔を近づけて、)アンの苦手なおせちって、なんですかw」
「(´∀`*)ウフ、それはね…ww」
・アンの部屋
「めずらしくきちんとしてるわね、髪も服装も」
「いつまでも子どもじゃないし。
ハタチだし、ことしで。
ママの説教、いやだから…」
「wwwwwww」
「ほ、ほめてよっ、はーちゃん」
「ママ離れ、できてないじゃないw」
「できてるよっ!」
「強情ねww」
「(´・ω・`)」
「あなたのママさんは、」
「はーちゃんまで『ママさん』っていうっ!
戸部とおんなじみたいにっ」
「(構わず)あなたにガミガミ口やかましく言うみたいでも、そのいっぽうで、あなたに甘えてほしいとも思ってるのよ」
「そんなことないよ、わたしが甘えるなんて」
「いい?
あなたのママさんやパパさんは、いつまでもあなたのママさんやパパさんなのよ。
わたしの両親だって、おなじ。
でしょ?」
「(´・ω・`;)」
「はーちゃん」
「はい」
「ちょっとこっち来て(自分が座っているベッドに招き寄せる)」
「(右隣に座り、)はい。
なにか話があるのね。
女子会らしくなってきたなってきたw
かしこまっちゃってw」
「………(沈黙を続ける)」
「アンがしたい話、当ててみる」
「」
「好きな男の人、できたんでしょ」
「(うわずった声で)どうしてわかったの!?」
「そんな大声出したらママさんが来ちゃうよ」
(くちびるを噛むアン)
「はーちゃん、
ひとつだけ、約束…
戸部には言わないで、
これ、約束」
「了解」
× × ×
・アンの恋愛模様を聴取する
「ーーだいたいわかったわ」
「あんまり言いふらしちゃダメね」
「とくに戸部くんには絶対言うな、と」
「だって、戸部、わたしの弱み握ってるから」
ほほー。
「どんなこと?」
「戸部、高2で、はじめてクラス一緒になったんだけど、
…冬、ちょうど今ごろにね、
わたし野球部の4番バッターとつきあい始めて…でも3日で別れて…そのあとでわたし、ちょっとメンタル的におかしくなっちゃったというか……うん、ちょっとだけおかしくって、かなりどーしよーもなくなってたんだけど、そんなときにね、戸部がわたしに声をかけたことがあって、うれしくて、うれしかったけど、今思うと…照れくさい」
「しゃべりがこんがらがっちゃってるじゃないw」
「(枕を抱きしめながら)戸部はまったく男としてタイプじゃないの、それは、これまでも、この先だって永久に変わらない」
「それはわかったわ。
わかった、けれどね、アン、
ごめんね、
そのエピソード…、
とっくに戸部くんから知らされてるのよww」
「あ、
あんにゃろ、
ますますキライになった、
戸部の大バカ、
トコロテンやおせちの黒豆よりもキライなんだからっ」
(^_^;)…アンが戸部くんを嫌いじゃないのが、
かえってはっきり分かって、非常によろしい。