戸部邸
昼下がり
♫ピンポーン♫
「やっほーい。来たぞ~、戸部」
来やがったな藤村、
だけでなく、
葉山と、
八木と、
小泉さんも。
女子4名が一度に邸(いえ) に押し寄せてきた。
『おじゃましま~す』
× × ×
「葉山、調子はどうだ?
気持ちが後ろ向きだと、どんどん後ろ向きになっちゃうぞ」
「うん…。
気づかってくれてありがとう、戸部くん」
「それと、誕生日、おめでとう」
「(照れくさそうに笑って)…ありがとう」
「それじゃおれ冷蔵庫から飲み物出してくるから」
「待って、戸部くん」
「ん?」
「あの……ごめんね、前にここに来たとき、頭ごなしに怒るみたいになっちゃって」
「へ?
なんにも気にしてないよ。
反省してんのは、おれのほうだから」
「(恐縮そうに)そう…それなら…よかったの」
× × ×
・ペットボトルを冷蔵庫から出して、持ってきた
「ほらよ。葉山、メロンソーダ入れてやるから」
「え、えっ、わたし自分で入れられるのに」
「きょうは葉山をお祝いする日だろが。葉山が主役なんだよ」
「(コップにメロンソーダを注(つ)いで)メロンソーダ好きなんだろ? 葉山」
「どうしてわたしがメロンソーダ好きだってわかったの……」
「そりゃ、愛と暮らしてるからな、教えてくれたんだよ、あいつが」
「とっ戸部くん、このメロンソーダ、コンビニやスーパーになかなか置いてないやつだよね」
「よくわかったなw」
「わざわざこれを買ってきてくれたの?
大変だったでしょうに…」
「あーっ! 葉山、感激してるww」
「バカね小泉。感激しないわけないじゃないの…」
× × ×
「(テーブルにありったけのお菓子を置いて)
ほれ。好きなだけ食え。カロリーは知らん」
小泉さん「こんなにドッサリと」
八木「こ、これも戸部くんがぜんぶ買ってきてくれたの?」
おれ「買い置きだよ」
八木「まじで」
おれ「まじで」
小泉さん「お菓子が欲しくなったら戸部くんとこ来ればいいね」
葉山「お菓子だけじゃないでしょ…UNOとかジェンガとか人生ゲームとかドンジャラとか、いたる所にいろんなモノがあるんだから」
小泉さん「夜通し遊べるじゃん!」
おれ「よく知ってるなあ葉山」
葉山「わりとしばしば来てるからねw」
おれ「真っ先に見つけたのは花札と麻雀牌だったみたいだけどなw」
葉山「うっ」
八木「戸部くん空気よめな~い」
おれ「(-_-;)すんません」
葉山「気にすることないから戸部くん。いまのは会話の自然な流れ」
八木「そうだ。流れついでに、葉山に麻雀のルール教えてもらおうよ」
葉山「な、なにを言い出すの八重子」
八木「戸部くん持ってきてよ麻雀牌」
おれ「今度は八木が無茶ぶりかよ」
小泉さん「でもルールって言ったって、わたしネットで少し調べたことあるけど、あれかなりややこしいでしょ」
八木「えー」
おれ「ど、ドンジャラで我慢しないか」
葉山「たしかにルールを説明してたら、日が暮れちゃうわね。
でもーー」
おれ「な、なにおれの顔見てんだよ。おれだって詳しいことはわかんねえよ」
葉山「『役』ぐらいは知ってるんじゃないの」
小泉さん「あー、国士無双とか?!」
葉山「まあそういうことね。
(乗り気になって)どんな役があるか、みんなに見せてあげる」
× × ×
葉山「これがピンフ」
葉山「これがタンヤオ。正確にはメンタンピン」
葉山「これがチートイツ」
葉山「純チャン三色」
葉山「大三元」
葉山「国士無双」
葉山「四暗刻」
葉山「小四喜」
葉山「字一色」
(-_-;) ーーどうしてこうなった。
おれ「なんでそんな手つき慣れてんだ」
八木「きょうの戸部くんひとこと多いね」
小泉さん「いいじゃん細かいことは。
葉山の眼、キラキラしてるよ」
葉山「……そう?」
八木「(肩をすくめ、)ま、何であれ、夢中になれるものがあるのは大事なことだよね。
顔色もなんだか良くなったみたい、葉山。」
葉山「そう……」
<ガチャッ
葉山「だ、だれか帰って来た」
おれ「たぶん、愛だな」
(急いで片付けようとする葉山)
八木「いいんじゃないの? 慌てて隠そうとするみたいにしなくても」
葉山「(焦って)いや、羽田さんの教育上よくないから」
八木「(ソファーにもたれて)そのままでいいじゃん、ありのままでいいじゃん」
おれ「たしかにな。
愛の前では、葉山はありのままでいてほしいと思うな」
葉山「なんで…?」
おれ「愛の教育上」
× × ×
「アツマくん、いつの間に麻雀のルール覚えたの!?」
葉山「誤解だよ羽田さん。
これは、わたしのワガママ」
八木「ちがうでしょ、葉山じゃなくてわたしのワガママ」
愛「?????」
愛「アツマくんなにか粗相をしませんでしたか」
葉山「まっさかあ。
ーー楽しかった」
愛「よかったです、
それがいちばんよかったです。
センパイ、誕生日おめでとう。」
葉山「(愛に歩み寄って、胸元で)ありがとう、羽田さん。」
小泉さん「泣けるねえ」
八木「こら、茶化さないのっ」
おれ「そういえば……、
なんかきょう、藤村の存在感がずっと薄くねえか!?」
藤村「そっ、そんなことないよ、わたしちゃんといるよ」
おれ「じゃあなんで口数極端に少なかったんだよ、八木や小泉さんとももっと打ち解けろよ」
藤村「いや、そういう問題じゃなかったの」
おれ「(゚Д゚)ハァ?」
藤村「ブログの事情で」
おれ「便利な言葉だな」
藤村「大丈夫だよ、責任は管理人さんにあるから」
おれ「キャラクター運用の失敗ってやつか」
藤村「こうやって多人数になると処理できないのね」
おれ「そうやって藤村の口を使って自己弁護するんだな。いいかげんにせいや」
小泉さん「あのー」
八木「メタフィクション中、すみませんが」
小泉さん「(ウキウキして)藤村さん!!」
八木「(ワクワクして)戸部くんの高校時代のこと、教えて!!」
藤村「あ、お安い御用で♫」
おれ「(~_~;)」