【愛の◯◯】それぞれの成長曲線

 

「なつきせんぱ〜い、おはようございま〜〜す」

「おっ? オンちゃんもしかして、さっき眼が覚めたな?」

「ばれちゃったか」

「夏休みだからって、ネボスケさんは良くないゾ?」

「えへ♫」

 

× × ×

 

「なつき先輩。スポーツ新聞部の新入部員男子2人ですけど、無事に定着してくれましたねえ」

「そうだね。うれしいね。ノジマくんとタダカワくん。タダカワくんの方が背が高い身長凸凹(デコボコ)コンビ」

「身長凸凹コンビとか言っちゃダメですよー。わたし、ノジマくんは自分の背が低めなのを気にしてると思うんです。『まだ高校1年なんだから。男の子はこれから伸びていくかもしれないじゃん?』って、1学期の間に言ってあげれば良かったかなぁ」

ノジマくんにはこれ以上伸び代(しろ)は無いとわたしは思うな」

「つめたいですよー、せんぱーい」

「わたしの長年の観察眼がそう言わせるんだよ」

「それなら……『タダカワくんの中学時代の成長曲線』なんかも、分かったりするんじゃないですか? 成長曲線っていうのは、例えば、中学時代のどの時期に身長が一気に伸びたのかなー、とか」

「んー。夢が無いかもしれないけど、中学入った当初から既に、カラダ大きかったんじゃないかなぁ? たしかに、男子は中学時代にグーンと身長伸びがちだけど、タダカワくんは、早熟タイプ。最初からカラダが出来上がってたと思うんだ」

「そういう男子も居るんですかね」

「いるでしょ。成長の個人差。女の子と同じだよ」

「ムムムム……。」

「ど、どーかしたの、オンちゃん。電話の向こうで唸(うな)ってる顔が浮かんできそうだよ……?」

「……なつき先輩の、成長曲線。」

「え、え、わたし!?」

「同じ女子でも気になっちゃうんです。先輩が如何にして、現在の体型になって行ったのか。ほらっ、先輩は、女子の中でも抜きん出て長身ですし」

「ぬ、抜きん出ては、いないよ!?」

「いますよ。」

「ちょちょちょーっとソコは……デリケート、かなー、って」

「慌てすぎ。」

「……電話の向こうのオンちゃんのニヤつき顔がまざまざと浮かぶよ」