【愛の◯◯】伊吹先生(30)

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茶番めいた、2学期はじめの、夏休みの宿題をめぐる、伊吹先生との亀裂ーー

 

まあ結局は、アレは、わたしがいろいろ大人げなかっただけなんだけど。

 

その伊吹先生との亀裂も、すぐに修復して、たぶん、1学期よりも伊吹先生といっそう親密になったわたし。

 

最近は、締め付けがゴニョゴニョと厳しくなって、生徒が先生のおうちを訪問することすら、女同士であっても、問題視されることが多いらしい。

 

生徒が先生の家を訪問することなんて、昭和が終わる間際になっても、当たり前のことだったって聞いたけどね(明日美子さんの口からも)。

 

伊吹先生「あら、あたし昭和63年生まれだけど、中学のときとか、先生の家をたずねたり、ぎゃくに先生があたしンちに来ることなんか、当たり前だったわよ?

 ま、男の先生のところには、流石に気後れしたけどねww」

 

わたし「(プリン・ア・ラ・モードを食べる手を止めて)息を吐くように、じぶんの個人情報を晒すタイプですか、先生は……(-_-;)」

 

「私立」の女子校ゆえ、治外法権が、特権になってゆく。

ーーその是非は別として、この『メルカド』という喫茶店は、制服を着た女子生徒とスーツ姿の女教師がテーブルで向かい合って話していても、誰も咎めない、良いお店なのである。

 

それにしても……

 

わたし「(小声で)先生の誕生日っていつなんですか」

伊吹先生「(かなり大きな声で)6月8日

わたし「あっ」

 

 

伊吹先生「ねぇ、このクリームソーダに浮かんでるアイスクリーム、ピンポン玉みたいじゃない?

 

わたし『ガクッ!!』

 

わたし「天然でそう言ってるんじゃないでしょうね!?

 

 あ……ごめんなさい、タメ口みたいになっちゃいました(-_-;)」

 

伊吹先生「全然いいよ! そういう教師と生徒の関係、じつはちょっと憧れてるの!

 共学の高校で、もし生徒が男子生徒だったら、松嶋菜々子とタッキーになっちゃうけど

 

わたし「は、はい!?」

伊吹先生「知らない?

 『魔女の条件』ってドラマ」

 

スマホでいろいろググっていろいろ見せてくれる伊吹先生……。

 

 

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わたし「でもこれ初回放映1999年って、わたしが生まれる前のドラマじゃないですか!!」

伊吹先生「うん、そうそう」

わたし「あのねぇ…(^_^;)」

 

伊吹先生「もっと昔だと、『高校教師』っていう、もっっっと酷いのがあったけどね」

わたし「悲しくなるから、わたしが生まれる前のドラマのはなしはやめましょうよ。

(-_-;)」

 

伊吹先生「で、クリームソーダに浮かんでるアイスクリームがピンポン玉みたいって話にもどすけどさぁ」

わたし「まだ何かあるんですか!?(;´Д`)」

伊吹先生「卓球よ、卓球」

わたし「ああ、なるほど、福原愛さんですね……」

 

伊吹先生「羽田さんの世代は流石に『さん』付けするよねー。あたし学年がまったく同じだから、羽田さんの下の名前と紛らわしいけど、『卓球の愛ちゃん』ってずっと呼んでたのよ。

 でも愛ちゃん、あ、卓球のほうの愛ちゃんねw 

 ーー(遠くを眺めるような目で)よく頑張ったよ、彼女。

 テレビに出ずっぱりで、負けても、負けても

 

わたし「――含蓄のあることも言えるんですね。」

伊吹先生「えーっ(;´Д`)!? ひどーい」

わたし「たしか……、

 福原愛さんが入った大学って、伊吹先生と同じ大学じゃなかったですっけ。

 彼女が中退したとはいえ、伊吹先生はわせだだいgーー

 

伊吹先生「そう思うでしょw

わたし「はいぃ!?

 

伊吹先生「あのねえ、あたしが出た大学はね、エラい政治家が創って」

わたし「それ、大隈重信でしょ」

伊吹先生「日本近代文学のはじまりを告げる作家が文学部で教えてて」

わたし「それ、坪内逍遥でしょ」

伊吹先生「新型細胞をでっち上げたひととか、黒い話題には事欠かなくて」

わたし「それ、小保方晴子でしょ」

 

伊吹先生「でもねえ、あたしが出た学部の名前、『文学部』じゃないのよ」

わたし「じゃあ文化構想学部

伊吹先生「ざんねーん!!

わたし「あんまり大声出して周りに迷惑かけると、そのクリームソーダ飲んじゃいますよ!?

 

伊吹先生「あのね、あたしが出た学部の名前、第一文学部

わたし「へっ!? そ、それ、つじつまが合わないじゃないですか? だって」

伊吹先生「『だって福原愛さんと先生は同学年で……』って言いたいんでしょ?」

わたし「そうですけど」

伊吹先生「あたしと福原愛ちゃんは同学年。

 だから、あたしが出た大学は早稲田大学じゃないのよーん」

 

く……、

クリームソーダ、いますぐ強奪して飲んでやりたい!!