愛が学校をサボった理由

話は今朝にさかのぼる

♪コンコンコン♪

 

あすか「お姉さん?

 起きないと、学校に遅刻しちゃいますよ!?」

 

♪ガチャ♪

 

パジャマ姿の愛「……おはよう」

あすか「き、着替えないと、ほんとに遅刻ですよ!?

    まさか、徹夜で勉強してたんじゃ…

:(;゙゚'ω゚'):」

愛「そのまさか♥」

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

ベッドの愛「( ̄□ヾ)ファ~」

 

あっ……、

遅刻しちゃった。

しかも、ただの寝坊。

 

伊吹先生に、もっと顔を合わせづらくなっちゃった。

いま、何時なんだろう?

 

時計を見る愛。

だが……

 

愛「(|| ゚Д゚)ガビーン」

 

 

 

気が動転したまま、愛はリビングへ降りた

明日美子さんが朝ドラの再放送を観ている……

 

明日美子さん「おそよう(≧▽≦)」

 

愛「あ、あ、あぁ」

明日美子さん「どしたー?」

愛「わ、わ、わたし、なんてこと」

 

明日美子さんに抱きつく愛。

 

愛「。゚(゚´Д`゚)゚。」

明日美子さん「よしよしよしよし。」

愛「わたしぃ、にがっきのしょっぱなからぁ、とりかえしのつかないことしちゃったぁぁー」

明日美子さん「考えすぎだよ。」

 

明日美子さん「頑張ったんだから、仕方ないじゃん」

愛「(嗚咽を噛み殺しながら)でも、とちゅうで寝てしまって、最後までできなかったあ~」

明日美子さん「あのね、約束してほしいの」

愛「!? 」

明日美子さん「学校を休みたい時は、ためらわず休んで。」

愛「それが『約束』になるの……?(; ゚゚)」

 

 

わたしは部屋に戻って、夏休みの宿題と同じ教材を、必死に最後まで終わらせた。

 

途中で明日美子さんがやって来て、こういうことを伝えた。

 

学校から電話があったこと、委細を伝えたら、『伊吹先生っていう若い女の先生』が突然電話口に出て、わたしの様子を訊いて、学校が終わったらこの邸まで来る、と言っていたこと……

 

つまり、緊急家庭訪問。

もう逃げられない。

 

(つづく)

伊吹先生の緊急家庭訪問

戸部邸の前

 

伊吹先生「……:(´◦ω◦`):」

 

 

 

リビングに通される伊吹先生

伊吹先生「あの…………これ、つまらないものですが(ガチガチガチ)」

明日美子さん「あらまぁ!」

 

お茶が入った

伊吹先生「(;´Д`)ガチガチ」

明日美子さん「どうぞお飲みください、いい茶葉が買えたんですよぉ~(´▽`) 」

伊吹先生「それでは……」

 

 

 

す、すごくいい!!

肩の荷がストンとおりていく!!

 

表情に温かみが戻った伊吹先生「羽田さん、いや、えーっと、愛さんが、きょう珍しく学校を休まれたようなので、心配しまして」

明日美子さん「あら〜、それでわざわざw

 

(つづく)

伊吹先生に怒られた……

始業式の日

放課後

 

・ガーデン

 

さやか「はい、『サンディニスタ!』」

 

 

サンディニスタ!

サンディニスタ!

 

 

愛「ありがとう(*´ω`*)」

 

さやか「あのさあ……」

愛「なに?」

さやか「わたし、バイオリン、もう一度はじめてみるよ

愛「ほんとに!?

 よかった!!」

さやか「うん。」

 

 

翌日

現代文の授業

 

グデングデンの伊吹先生「みんなぁ、おはよぉ~

 

明らかに二日酔いと思われる伊吹先生の姿に困惑する生徒たち。

 

伊吹先生「ぎょめんねええ、ろぉれつがまわんなくて

 

 

放課後

 

愛(授業のときの伊吹先生、ひどかったな(-_-;))

 

羽田さ~~ん!!

 

愛「伊吹先生!」

 

さすが大人の女性……といったところだろうか。

酔いがさめて、身だしなみもちゃんとなってる。

授業のときはろれつが回ってなかったけど、声もまともな声に戻っている。

いつにもましてお肌にツヤがあるのは、……どういうことなんだろうか?

 

伊吹先生(急にあらたまった声で)「羽田さん!

愛「(゚o゚;;ビクッ!!」

伊吹先生(真面目顔で)「夏休みの宿題!!

 だめじゃないの、あんなに手を抜いたら!!(・へ・)

 バレバレだよ!?

 羽田さんなんだから。

 もっとしっかりしなきゃ💢」

 

愛「((((;´゚Д゚)))」

 

愛「(´・ω・`) ご、ごめんなさい……。

 でも、わたし、わたし、あわててやろうとして」

 

伊吹先生「『間に合わなかったから適当になった』って言いたい?

 言い訳はダメだよ。」

愛「(´・ω・`)」

伊吹先生「あのね、あたしはアナタのこと人一倍気にかけてるの、期待しているの、だからこうやって、励ましてるんだから。  (・へ・)メッ!」

愛「……先生が特定の生徒をえこひいきするのは、どうなんでしょうか……」

伊吹先生「(・へ・;)」

愛「すみません、2学期からは気を引き締めます。じゃあ今日はこれで」

伊吹先生「(・へ・;;;)」

 

駆け出す愛。

 

伊吹先生「(;´Д`)ま、まって、羽田さん!」

 

愛『喫茶店に連れて行こうとしたって無駄ですよ!』

 

伊吹先生「(;´Д`)どうして・・・・・・」

 

愛『えこひいきのえこひいきじゃないですかっ!

 

伊吹先生「(;´Д`)・・・・・・」

 

遠ざかっていく愛。

 

伊吹先生「(;´Д`)イカナイデー」

 

 

 

その夜

戸部邸

 

あすか「おね~さんっ♫

 お風呂が、沸きましたよっ♫」

 

『ごめん、先に入って。

勉強してるから』

 

あすか「でも、お姉さん、部屋にこもってから、もう3時間……(゜o゜;」

 

『あら、高校生の勉強時間の3時間なんて、勉強したうちに入らないわよ』

 

あすか「えっ……(゜o゜;」

 

 

愛の部屋

 

愛(こうなりゃ意地だ)

 

愛は、夏休みに伊吹先生が出した宿題とまったく同じ教材を購入し、一晩で片付け、伊吹先生に見せてやろうとしていたーー!

 

果たしてどうなる!?

8月30日 夏休みが終わってしまう

 

 

London Calling

London Calling

 

 

・グランドピアノで、愛が、Clashの曲を弾いている。

 

♪Lost in the Supermarket♪

 

愛「~♪」

 

青島さやか「パンクも聴くのね」

愛「パンクなの? これ」

さやか「パンクロックじゃなきゃなんなの…」

 

さやか「愛、『サンディニスタ!』は聴いたことがある?」

愛「う…生憎、財政的な問題から、まだーー」

さやか「(微笑んで)お小遣いが足りなかったんでしょ」

愛(ギクッ)

 

 

サンディニスタ!

サンディニスタ!

 

 

さやか「『サンディニスタ!』、ウチにあるから、こんど貸してあげるよ」

愛「(喜んで)ほんとう?

さやか「ほんとう。

 その・・・・・・(顔を赤らめながら)、兄が持っていたのを・・・・・・、

 (どぎまぎ)」

愛「( ^_^)」

 

愛「でも、『サンディニスタ!』貸してもらえるのは、学校が始まってからになりそうね」

さやか「そうね。

 今週末で、夏休みも終わり」

 

 

愛「わたし、こんなことしてる場合じゃなかった」

さやか「夏休みの宿題の件ねw」

愛「そう(・_・;)」

さやか「あと、どれくらい?」

愛「国語以外ほとんど終わってるけどーー」

さやか「なんで国語残るの」

愛「・・・・・・得意意識?」

さやか「まぁ、国語の先生、優しいからね。

 特に伊吹先生」

愛「はい、わたしたち(文芸部)の顧問ですね・・・(-_-;)」

 

 

万延元年のフットボール (講談社文芸文庫)

万延元年のフットボール (講談社文芸文庫)

 

 

さやか(テーブルに置いてある文庫本を見て)

大江健三郎読んでるんだ」

愛「そうね、『万延元年のフットボール』、

でもねえ・・・・・・この程度の長さだと、『世界文学』を読み慣れていると、短いってわけじゃないけど、物足りないのよ」

さやか「『世界文学』ってなによ」

愛「えーっと、えーっと、つまり海外の長編小説とかのーー」

さやか「まあ、小説以外にも、ホメロスやダンテの作品も『文学』の第一級だしね」

愛「そうね、文学≒小説と思ってる人の多いこと多いこと・・・・・・」

 

さやか「『万延元年のフットボール』で大江が物足りないなら、同時代ゲーム読めばいいじゃないの」

愛「うーん、読んだか読んでないか、忘れた」

さやか「あんた、読書記録のためのノート、とってないの!?」

愛「あったわよ! ーーなくしちゃったけど。」

さやか「(驚いて)どうして!?」

 

愛「あのね、人のこと言えないと言うかなんというか・・・・・・メンタル的に、ちょっと乱れていた時期があって」

さやか「(真顔で)それ、いつ」

愛「今月・・・」

さやか「!? 今は大丈夫なの」

 

ポーッと愛の顔に赤みがさす。

 

愛(さやかの耳元で)「あのね・・・・・・わたし」

 

 

 

 

さやか(絶句)

 

 

 

 

・・・・・・・・・

 

さやか「それで、その、告白・・・・・・の返事は」

愛「まだ」

さやか「もっと『押せば』いいんじゃん」

愛「いや、わたしは、『待つ』べきだと思うわ」

さやか「そんなこと言ってたら、夏休みが終わっちゃうでしょうが!」

愛「だって、わたし、いま、彼といっしょに住んでるのよ。

 じっと待つのよ」

さやか「シュープリームス(Supremes)みたいなこと言うのね……(-_-;)」

 

愛(階上にあるアツマの部屋の方を見て)

「良かった。

 アツマくんに『好きなんだと思う』って言っちゃったら、気持ちが一気に軽くなった。

 さやかも、お兄さんに、もっとベタベタ甘えてみたら?」

さやか「ん…(-_-;)」

 

 

♪ピンポーン♪

 

愛「あ、アカちゃん来た」

さやか「夏休みの宿題の総仕上げね!」

愛「うん、始めよう!」

 

回転するリボルバー

 

bakhtin19880823.hatenadiary.jp

 

↑前回

 

 

「・・・・・・・、

『なんでも鑑定団』の主題歌って、ビートルズが歌ってたんですか?(゜o゜;」

「そうだね。

『4人はアイドル』っていう、ダサい翻訳タイトルをつけられたアルバムに入っていてw 『HELP!!』も『イエスタデイ』も、その『4人はアイドル』って名前をつけられたアルバムに、同時に収録されているんだよ」

「『イエスタデイ』って、さっきあたしが、『クラシック音楽みたいな物悲しい曲』って言った・・・・・・」

「そう。

『イエスタデイ』はポール・マッカートニーが作った曲。

『HELP!!』はジョン・レノンが作った曲だ。

 

さすがに、ポール・マッカートニージョン・レノンの名前はわかるかな?」

 

「すみません、つい最近知りました」

「おぉ……(^_^;)」

 

(微妙な間が空いてしまう)

 

ジョンやポールの名前を覚えただけ、進歩なんじゃない?

 

 

階段を上がる音。

だれかがこの喫茶店があるフロアに上がってくる。

そしてこの声は・・・・・・!! 

 

「あ、マキちゃん」

的場さん!? (゜o゜;)

 

ギターは・・・・・・持ってないけど。

上の制服だけ水色のTシャツに着替えて、髪を結んだ的場さんが……! 

 

「なんだ、マキちゃん、この子と知り合いだったんじゃないか」

いちおう

「え(^_^;)」

 

うぅ・・・・・・、

すごくナメられてるような感じがする。

的場さん、気持ち上目づかい・・・・・・。

 

「マスター、レコードを替えてくれませんか」

「どれに?」

ビートルズつながりで『リボルバー』なんかどうでしょう」

 

 

 

 

リボルバー

リボルバー

 

 

リボルバー [12 inch Analog]

リボルバー [12 inch Analog]

 

 

すごい柄のジャケット・・・・・・。

 

 

♪「Taxman」♪

 

「戸崎(とさき)さん」

「は、はい、なんでしょー、的場さん」

ジョン・レノンポール・マッカートニーは勉強したのね」

「べ、勉強なんてとんでもない、すずかに『一般常識』だって言われて、あわてて」

「御神本(みかもと)さんに……」

 

「クイズ。戸崎さん、この曲(Taxman)を作ったのは、ビートルズのメンバーなんだけど、いったい誰でしょう?」

「えーっと、ジョン・レノンポール・マッカートニーのどちらかで・・・・・・

ジョン!!

残念!!w

「えええええ、じゃ、じゃあ、ポール?

ジョージ・ハリスン

「えええええええええええ」

 

「マキちゃん、今のはあんまりにもあんまりだなあ(^_^;)

ひっかけ問題じゃないか」

「フン( ´д)」

 

的場さんにケンカを売られて、あたしはそのケンカを買わないまま、ビートルズの『リボルバー』がひたすら演奏されていく。

 

それにしてもすごいバリエーションだ。

ビートルズって、こんなバンドだったんだ・・・・・・(゚д゚ )

 

2曲目みたいに、アカペラを積み重ねて録音したような曲。

5曲目みたいな、しんみりしたバラード。

6曲目みたいに、子供向けの童謡(?)みたいな曲もあって。

 

♪「シー・セッド・シー・セッド」♪

 

「的場さんーー」

「( ´д)プイッ」

「こ、この曲、いいね」

「(;´д)」

「英語だから歌詞はわからないけど」

「び、ビートルズの歌詞は、英語圏のロックバンドのほうでも、いちばん聴き取りやすいほうなんだから(;´д)

 中学に入ったころ、それこそ『赤盤』の曲をひたすら歌いながら練習してーー」

「『赤盤』って、さっきまでかかってた?」

「そう、ベストアルバム。

『青盤』っていう続きのベストアルバムとひとつながりになってるんだけど」

「(目を輝かせて)えっ! 

ビートルズって、これだけじゃないの!?(゚∀゚)

 

「・・・・・・ほんとになんにも知らないのね(ボソッ)」

「うっ(゚∀゚;)」

「マスター、『Tomorrow Never Knows』」

「えっ、『Tomorrow Never Knows』まで行っちゃっていいの?」

「戸崎さんには戸崎さんの用事があるんじゃない? 

時間をわずらわせるわけには・・・」

 

「『トゥモロー・ネバー・ノウズ』?

(首をかしげて)

 ミスチル

 

( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \

「こ、こら、マキちゃん、彼女が怒っちゃうよ」

「(きょとん)」

「ご、ごめんね、いつもはこんな感じじゃないんだけど、どうしちゃったんだろうね」

 

Tomorrow Never Knows

 

「えっ……(;´Д`)

ミスチルとまるっきり違う・・・・・・!!

「(´∀` )フフ…

 戸崎さん、

 この『Tomorrow Never Knows』は、ジョンとポール、どっちが作ったと思う?

 

 

的場マキ、あまりにも意地悪!!!!!!

8月26日 アツマくんに手紙を書いた

◯日曜の昼下がり

(ソファーでぐったりしている愛)

 

あすか「昼ごはんだ、って呼んでも、なかなか降りて来なかったから、心配したんですよ?」

愛「手紙を書いてた」

あすか「手紙って、だれにですか?」

愛「アツマくん

あすか「ヽ(;゚д゚)ノ ェッ!! ひとつ屋根の下なのに、わざわざ手紙書く必要ないじゃないですか!!」

愛「(あすかの肩に手を置いて)手紙じゃなきゃ伝わらないし、伝えられないこともあるのよ…」

 

 

 

 

 

アツマくん

 

この前は取り乱してしまってごめんなさい。

なんだか最近、アツマくんに甘えてばっかり。

こんなわたし、嫌い?

 

本は、少しづつ読めるようになってきました。

でも、すぐ疲れてしまうので、まだ長い時間読むことはできません。

脳が休息を求めているのかな?

頭脳労働ができなくて。

じつは、夏休みの宿題、終わってないのがいっぱいあるんです(笑)。

むかしは、8月に入るまでに、必ず全部終わらせてしまっていたんだけど。

わたし、あんまり人のこと言えない。

「大学入試まであと少しなんだよ!!」って、アツマくんを焦らせる筋合いなんてなかったんだ。

 

でも、「おまえのおかげで現代文と英語の成績が上がったんだ」って言ってくれて、ありがとう。

もうひとつ感謝しないといけないことがあった。

水族館に連れて行ってくれて、ありがとう。

(ほんとうは、チケットをくれた藤村さんにも、ありがとうって言わなきゃだけど。)

 

勉強は、はかどっていますか?

無理をせずがんばってね。

受験勉強するのにウンザリしてきたら、プールに泳ぎに行かない?

遊園地のプールとかじゃなくて、ふつうのプール。

競泳用の水着しか持ってないし。

あれ、なんでわたしこんなことまで書いてるんだろう。

平泳ぎが得意なんだよね?

あれ、なんでわたしこんなこと知ってたんだろう。

 

……やっぱり、サ◯ーランドとか、ああいう遊園地系のプールがいいかもしれない。

でも、そっちに行くんだったら、着ていく水着がない。

学校の友だちやあすかちゃんと買いに行きます。

そのときは、しっかり受験勉強をがんばっていてください。

 

◯アツマの部屋

♪コンコンコン♪

 

アツマ「はーい」

愛「あけてくれる?」

 

ドアを開けるアツマ。

手に手紙のようなものが渡されたかと思うと、愛がダッシュで逃げていった。

 

アツマ「……なんじゃこりゃ」

 

 

◯夕方

 

愛「…………その、『あれ』、読んでくれた?」

アツマ「読んだよ。」

 

愛、不安と期待が入り混じった表情。

 

アツマ「おまえ、手紙書くの、下手だなぁww」

 

がっかりして、力が抜け出たように、座り込んでしまう愛。

 

あすか「( ‘д‘⊂彡☆))Д´) パーン」

アツマ「あ・・・・・・」

あすか「なにが『あ・・・・・・』なの!?

 無神経!! 人でなし!!

アツマ「(呆然)」

 

突然走り出し、戸部邸から出ていこうとする愛。

 

アツマ「ま、待てコラ!!」

 

慌てて追いかけるアツマ。

門の手前。

立ち止まっている愛。

 

愛「そうだよね、手紙じゃ伝わらないこともあるよね……。

(アツマに振り向く)

 あのね、わたし、わたし、わたし、」

 

息を呑むアツマ。

 

愛「アツマくん、あなたのことが、たぶん」

アツマ「たぶん……? (;´Д`)」

愛「好きなんだと思う

 

 

 

 

 

流さん「おーい、ふたりとも、晩ごはんできるぞ~」

 

見つめ合って立ち尽くす愛とアツマ。

ただならぬ雰囲気。

 

アツマ「流さん、おれのぶん、とっといてくれ。あとで温めて食べる」

愛「じゃ、じゃあ、わたしも」

アツマ「おまえは食べろよ。」

愛「あ、あの、流さん」

 

流さん、柔和な表情で愛を見る。

 

愛(やっぱり、知ってたんだ、わたしの気持ち)

アツマ「(早口で)ちょっと考えさせてくれ」

 

邸の中に駆け戻るアツマ。

 

 

◯ダイニング

愛「おかわり

あすか「い、いつになく良く食べますね…これで何杯目ですか」

 

明日美子さん「(*´ω`*)」

 

終始微笑んでいる明日美子さんに目配せする流さん。

しょうがないなあ、といった表情の流さん。

 

愛「アツマくんのぶんも食べちゃおうかなあ

あすか「・・・・・・太りますよ。」

8月18日 本が読めなくなった

「いや~ごめんごめん誤解させちゃって、コイツに『じゃれてた』だけだからw」

「『じゃれてた』って、どういう意味ですか……(殺気)」

「ま、まぁ!! 愛も、藤村も、なかよくなかよく(尋常でない焦り)」

「……(微笑みながら、流し目で愛を見る)」

「……(舌を噛み、スカートの裾をギュッと握り締める)」

 

 

8月18日 朝

予備校から帰るアツマくんと腕を組んでいたのは、アツマくんと学校で同じクラスの藤村さんだった。

 

◯愛の部屋

(ベッドのなかでもぞもぞしながら)「どうしてどうしてアツマくんも藤村さんもどうしてどうして」

 

 しばらくベッドの中で転がり続ける愛だったがーー

 

♪ブルッ♪

 

「藤村さんから、LINE通知……」

 

渋々起き上がる愛。

 

昨日は悪かったね~

悪いです!!

メンゴメンゴw

 

「……かわいいスタンプ……」

 

あのねー、私、戸部のことなんか、なんとも思ってないから

はぁ……

むしろ、愛ちゃんの背中を、押してあげたい

 

 

 

 

 

 

 

 

(かぶっていた布団を投げ飛ばして)

はいいいいいいいいぃいいぃっっ???????

 

な、なにいってるんですかぁ

なにって、好きなんでしょ、戸部のこと

???????!??????!!

お、落ち着きなさい(^_^;)

 

・思わず「通話」ボタンを押してしまう愛

 

藤村「あ、愛ちゃん、落ち着きなさい、深呼吸深呼吸、ほら?

 すーーーーっ」

愛「すーーーーっ」

藤村「はーーーーーっ」

愛「はーーーーーっ」

藤村「すーーーーっ」

愛「すーーーーっ」

藤村「はーーーーーっ」

愛「はーーーーーっ」

 

 

 

 

愛「(激しく動揺しながら)どこでわかったんですか……」

藤村「バレバレ。

 喫茶店に上がってくる私と戸部を見た時の慌てっぷりで」

愛「(しおしおにしおれた声で)わたし…わたし…

藤村「どうしたい?

愛「どうしたいって……どうしたらいいかわかりません

藤村「わかるんだ」

愛「なにがですか

藤村「年上の男、好きになっちゃった子の気持ち」

愛「どうして

藤村「わたしもそうだったから

愛「!!

 

藤村「わたしもね……高1のとき、3年生の先輩に片思いしてて……。

 

(軽い沈黙)

 

けっきょく、ダメだったけどね」

 

愛「・・・・・・・・・・・」

藤村「(シャッキリした声で)あのね、これから戸部にどう気持ちを伝えるかは、愛ちゃん次第だと思うの、愛ちゃん自身で、気持ちを伝える方法を考えてほしいの。相談には乗ってあげるけど、最後はやっぱり自分でーー」

愛「その前に気持ちの整理がつきません!!

藤村「アハハ、今はまだ、そうだよね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・時計。

針はとっくに10時を回っている。

 

「・・・・・・・・・(・_・;)」

 

なにが、どうなって。

朝から、目まぐるしく「こと」が動いた気がして。

考えは巡らせたけど。

ノートになにか書いてみたりしたけど。

なんの前進もなくて。

 

(ベッドに座り込んで頭を抱える愛)

 

「あーーーーっもう、気が狂いそう」

 

そういえば。

さいきん部屋が乱雑になってるような気がする。

整理整頓が、うまくできない。

部屋の乱れは、こころの乱れーー??

 

本がグチャグチャ。

積まれた本の、ジャンルが不規則。

 

「あの本、どこにあったっけ?」っていうのが、即座に思い出せなくなった。

本を大事にしてないーー。

 

おかしいよ、わたし。

きのうも、本棚の前でアタマが混乱したり。

 

きのうかばんに入れて持っていって、書店の喫茶店で読もうとして、けっきょく読めなかった3冊。

机の上にある3冊。

きょうは、きっと読めるーー。

 

 

リビング

 

 「すーーーーっ」

 

「はーーーーーっ」

 

「すーーーーっ」

 

「はーーーーーっ」

 

深呼吸して。

気持ちを整えて。

 

きょうは、ページを開けば、きっと読める!!

 

 

 

 

 

通りかかったアツマ「愛。」

 

アツマ「おーい、愛?」

 

アツマ「愛さ~ん?(^_^;)

きのうのことで気を落としてんなら、気にすんなよ~」

 

 

アツマ「んっ」

 

愛の野郎、おかしい。 

 

かなりヤバい意味合いでおかしい。

 

ソファに座ってうつむいてるんだけど、その、うつむいてる表情が、かなり、ヤバい。病んでる

 

この前、『さみしい』って俺を引き止めたときは、気丈に振る舞ってたけど、やっぱり、ダメになりかかってるみたいだ。

 

 

アツマくん……。

 

本が、読めなくなっちゃったよぉ……。

 

いままでこんなこと一度もなかったのにぃ……。

 

毎日毎日、読み続けてきたのにぃ……。

 

手が動かないよぉ……。

 

文字があたまにはいらないよぉ……。

 

眼とあたまがヘンになっちゃったのかなぁ……。

 

とりあえず、愛のとなりに座って、しばらく様子を見る。

 

それで、どういうことばをかけてやるか。

 

考えろ、おれ。

戸部アツマ。 

 

……ヘンになってるこたぁねえだろ。

 

 おまえはがんばってる。

 

 いろんなこと、がんばってる。

 

 ひとと比較してどうこうじゃなく。

 

 いっぱい、ひとを助けたり、ひとのためになったり、ひとを楽しませたり

 

楽しませてる……?

 

 わたしが!?

 

ああ。

 

この前、おまえは、『アツマくんは、いるだけでひとを幸せにする』って言ってくれた。

 

でも、おまえだってそうだよ

 

嘘!!

 

わたしは『ひとりずもう』とってるだけ

 

……あのな。

 

おれ、現代文の偏差値、少し上がったんだ。

英語も上がったんだぜ。

 

おまえがいなかったら、どっこの大学も受からないレベルの状態で、浪人を積み重ねてたかもわからん

 

……それと『わたしがひとを楽しませてる』っていうのの、どこが関係あるの

 

やべっ。

 

・・・・・・・・・・たすけてよ

たすけて

 

涙声で、アツマをみつめて、叫ぶ愛。

 

たすけて!!!!!!!

 

たすけて、アツマくん!!!!!!!!

 

わたし、そんなに強くない!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

「……(我に帰って)アツマくん?」

 

ーー気づくと、愛は、アツマに、右腕を、やさしく、でも、しっかりと、力強く、抱きとめられていた。

 

・・・・・・はい

気が済むまで、こうしてていいぞ

・・・・・・気が済むまでって、どういう意味(;´д)

・・・・・・言い方悪かったな(-_-;)

 

おまえ調子最悪みたいだから、ちょっとだけおれによりかかってろ

・・・・・・どういう理屈(;´Д)

 

 

・・・・・・でも、

『ちょっとだけ』じゃなくて、

『しばらく』、倚りかかってていい? アツマくん……

何分でも何時間でもどうぞ

 

無言で愛はアツマに倚りかかった。

アツマに、じぶんのからだをもたせかけるように。

…………ぐすん

泣くなよw

…………アツマくんのうで、あったかい

よーしよーし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8月17日 買う本が決められなかった

・夏期講習に行くために、自分の部屋から降りてくるアツマ。

 

すると……

 

 

アツマ「なんだ、愛、おまえも出かけんのか」

愛「アツマくんと一緒の電車乗る

アツマ「どーして」

愛「書店に用があるの、アツマくんが通ってる予備校の近くの書店、そこで本買いたいの」

 

◯行きの車内

 

愛「……」

アツマ「……」

 

◯アツマが降りる駅

 

ふたりは改札を出た。

 

アツマ「それじゃあな。予備校はこっちだから。また帰りに」

愛「うん、書店はこっちの方角だから」

 

アツマ「(頭をポリポリ掻きながら)あのさ……」

愛「な、なに……」

アツマ「いいな、その服

 

 

ーーそう言ってアツマは予備校に行ってしまった。

立ちすくむ愛。

 

 

◯愛の目的の書店

 

愛(えーと、人文書フロアに行くエスカレーターは……ここか)

 

ウイーンウイーンとエスカレーターに運ばれる愛、

であったがーー

 

いいな、その服

 

ぶるんぶるん! とあたまを振る愛……。

にわかに客の注目を浴びる。

 

愛「い、いけないいけないいけない

 

どうして?

 

ほめられたなら、うれしいはず。

 

すなおにうれしいとおもえない。

 

でも、こう、あったかいかんじょうというかなんというか

 

・人文書フロア

 

わたしとしたことが……。

 

興味を持っていた本が、思ったより高かった。

 

わたしが今はいてるスカートよりは安いけど。

 

前もって価格を調べてこなかったわたしが悪い。

 

普段は、見立てより少し値段が高いぐらいなら買ってしまうんだけど、

これはなぁ……。

 

わたしは別の棚に行って、目当てのものより価格が安い本を探そうとした。

 

でも、レジに持っていこうとする決断がなかなかできない。

 

目当ての本より値段が安いにしても、「目当ての本ではない」という事実に変わりはない。

その事実が、レジに持っていこうとする決断力をにぶらせている。

 

わたしはそのフロアのすべての棚を物色した。 

 

しかし、当然のことだけど、目当ての本の代わりになるような、目当ての本より安い本は、決めきれなかった。

 

 

腕時計を見ると、正午が迫っている!

 

アツマくんと一緒にお昼を食べるという発想が……

なかった。

 

「おひとりさま」とは本当つらいもので、わたしがひとりでは入りづらいお店が多く、お昼を食べるお店を見つけるのに、だいぶ苦労した。

 

アツマくんのせいじゃない。

段取りを省いた、わたしの過失。

わたしのバカバカ。

 

◯某サブウ○イ

 

愛「( ´Д`)=3」

 

愛(これから、どうしよう)

 

愛(文庫本がそろっている書店は……、少し歩くけど、あそこかな)

 

 

東京都心のいいところ。

 

・品揃えがきちんとしてる書店がある

・古本屋が多い

・上野に国際子ども図書館がある

・上野公園の居心地がいい

神楽坂駅から神保町あたりまでの界隈をぶらぶら歩くのが楽しい

(ただし、夏以外)

・美術館がいっぱいある

・博物館もいっぱいある

・動物園もある

・水族館もある

 

水族館か……。

アツマくんと水族館に行ってから、もう1ヶ月近くになるんだ。

 

いいな、その服

 

愛「あーっ、もう!!!!!! ヽ(`Д´)ノ

出てくるな、アツマ!!!!!!

 

(道行く人が愛に注目する)

 

愛「あ、どうも、すみません(-_-;)」

 

 

◯某大型書店

文庫と新書のフロアに来た。

 

おびただしい量の岩波文庫が敷き詰められている棚の前に立った。

立ったのだが。 

 

あれ?

 

わたしの知的好奇心が落ちているのか、「手応え」がない。

 

新刊や復刊の岩波文庫を棚から手に取っては戻す……を繰り返している。

まるで文庫本がわたしの手からすり抜けていくみたい。

 

かといって、この棚、読んだのだらけ……。 

 

わたしは、海外文学含め純文学を多く取り扱っている文庫レーベルの棚と学術系文庫レーベルの棚をしらみつぶしにした。

 

でも、発見がなかった

 

 

 

フロアを行ったり来たりしたせいで、軽いめまいがしたので、たまらず書店に入居している喫茶店に駆け込んだ。

 

「えーっと、ミックスジュース」

 

喉が渇いていたのでミックスジュースを一気に飲んでしまった。

 

お冷やをコップの半分まで飲んで、本日のコーヒーを追加注文した。

 

まずい、今月の『読書用おこづかい』を侵食している。 

 

カバンのなかに、3冊の本をあらかじめ入れてきた。

 

1冊目を読もうとした。

眼が文字を素通りしていって、うまく読めない。

 

2冊目を読もうとした。

眼が文字を素通りしていって、うまく読めない。

 

3冊目を読もうとした。

眼が文字を素通りしていって、うまく読めない。

 

・・・・・・

 

「いけない(;´д)、アツマくんからメール来てる、予備校もう終わったんだ」

 

『地図送るから、この書店まで来て』

『エーッ、遠くね?』

『💢💢💢』

『わかったよ』

 

(この喫茶店の窓から、横断歩道渡ってアツマくんがやって来るのが見えるはず)

 

ーー15分経過ーー

 

「あっ、あれ多分アツマくんだ。

となりに誰かいる。

 

 

 

 

 

!?」<ガタッ

 

茶店の店員さん「あ、あの、お客さま、どうされました?(^_^;)」

 

「アツマくんが……アツマくんが……、

 

 女の人と腕組んでる……

 

店員さん「アツマくんって、どなたですか?(^_^;)」