8月7日 アツマくんといっしょにいた

中学に入るとき、ホックを留めるタイプのブラジャーをはじめてつけた。

おかあさんといっしょに、おかあさんにつけ方を教わりながら、悪戦苦闘して。

 

反抗期だったのかな? 途中で「ひとりでできるもん!」って、おかあさんを部屋から追い出しちゃって。

でも、 けっきょく、できなくて、おかあさんに助けを呼んで、手伝ってもらって……ようやく自分でできるようになって。

鏡を見たら、「これがわたしなんだ」って思って。

 

「最初はひとりではできないこと」が、女の子のほうが多くて。

強がってるって見られたくなくて、強がるしかないのが、悔しくて。

わたし、悔しいのが、いちばんイヤ。

 

そんな負けず嫌いのわたしのことを、わかってくれる男の子が、アツマくんで、でも、時々は寄り添いたくて、いつから、いつから……!

 

◯戸部邸

突如帰ってきたアツマと愛がソファーに並んで座っている。

 

アツマ「……(・.・;)」

愛「……(//////)」←なんだか恥ずかしい

 

 

 

愛「流さんに、彼女さんがいるって、わかったとき」

アツマ(その話かよ……)

愛「泣いちゃったよね、アツマくんの前で。

 (笑いながら)ボロボロに泣いた。」

 

愛「あのね、アツマくんは、わたしのヒーローなんだ、たぶん」

アツマ「(・_・;)」

愛「10回に1回だけ大活躍するヒーロー」

アツマ「ズコー!!

 

アツマ「おまえなあ、その言い方はどうなんだよぉ」

愛「感謝してるのっ!」

 

愛「ねえ、一日だけ、家にいて。

 一日だけのわがまま。

 明日からまた夏期講習に行って」

アツマ「(できるだけ柔らかい言葉遣いで)さみしいんじゃないのか?

愛「大丈夫。

(元気に笑って)わたし、そんなに弱くない

 

 

8月7日。

 

アツマくんに昼ごはんを作って。

 

アツマくんも料理をちょっと手伝って。

 

アツマくんと一緒に勉強して。

 

あすかちゃんの部屋で彼女の勉強もみてあげて。

 

アツマくんがリクエストした曲を弾いて。

 

途中から弾きながら歌っちゃったりして。

 

弾くのと歌うのとで疲れて、ソファで寝てしまって。

 

目覚めたら、こんどはアツマくんのほうが横になって爆睡していて。

 

たぶん、受験のプレッシャーで、いろいろ気が張っていたのね。

 

 

 

わたしは、水族館で買ったイルカのぬいぐるみを持ってきて、枕代わりに、爆睡しているアツマくんの頭の下に入れてあげた。

 

 

 

部屋から下りてきたあすか「お兄ちゃん、だらしないなあ」

愛「よく頑張ってるのよ。」

あすか「それはそうと」

愛(トクン

あすか「(満面の笑みで)進展はありましたかw」

愛(トクントクントクントクントクン

 

愛「な、なかったわよ、そんなの! (;´д)プイッ」

 

 

あすか「……(・∀・)」

(ま、いっか。

 まだ8月が始まったところだし。

 

 時間の問題だと思うけどな、

 お姉さんのほうがーー)

 

8月7日 さいきん愛の様子がおかしい

アツマ「なぁ、あすか」

あすか「なに? お兄ちゃん」

アツマ「昨日の夜、愛が……」

 

bakhtin19880823.hatenadiary.jp

 

 

「勉強頑張ってるのはいいけど…

もう少し長く、家にいてもいいじゃない」

 

アツマ「こう言ってきたんだ。

 で、『夏期講習があるから仕方ないじゃないか』って言ったら……」

あすか「言ったら……?」

アツマ「すっげえ、俺を、その……(頭をポリポリかきながら)いとおしそうな眼で見てくるんだ。

 まるで、家を出ていくおれを引き留めるような感じで……」

 

あすか「(・∀・)!!」

アツマ「なんだそのひらめいたような顔は」

あすか「(・∀・)ニヤニヤ」

アツマ「気色悪いな……」

 

◯ダイニング

 

アツマ「おーーっす、愛」

アカちゃん「おはようございます、アツマさん」

アツマ「アカ子さん(デレデレ)

 

愛がうつむいている。

なぜか、アツマがいつも座る席から、かなり距離を置いている。

 

アツマ(いったいどうしたっていうんだ……)

 

朝食が終わる

明日美子さん「ふああああ~(´ぅω・`) ネムイ」

流さん「さてと池袋の書店にでも本を見に行くかな」

あすか「アカ子さん、庭の花に水をやりに行きません?」

アカちゃん「あら素敵」

 

アツマと愛のふたり以外、その場からいなくなる……。

 

 

 

 

 

アツマ「あのな、おれだって危機感があるんだってこと、わかってほしい。だから夏期講習だけでなく、居残り勉強だってやってる。出遅れてるっていう自覚があるから。

 だから、昼間この家にはいられない」

 

愛「うん…そうだよね、そうだよね」

 

アツマ「おまえ、なんでおれが家をあけてるのがイヤなんだ? おまえの学校の友だちだって、よくここに来てるじゃんか」

愛「わからない

アツマ「わからない?」

愛「わからない……わからない……わからないわからないわからない

アツマ「お、おちついてくれ」

愛「わからないよ!! 国語のテストの100倍難しい!! わからない!!

 

アツマ「……( ゚д゚)」

 

愛「(弱々しい声で)ねぇ……きょう、アツマくんを待っててもいい?

アツマ「待つって、家で、か?」

愛「(弱々しい声で)予備校の近くで

アツマ「予備校の近くって……電車で行くのかよ」

愛「(弱々しい声で)アカちゃんと一緒に行く

アツマ「(苛立たしげに)アカ子さんまで巻き添えにする気か!? おまえ、夏期講習が何時間あるのか知らないのか?」

愛「アカちゃんとは途中で分かれる

アツマ「じゃあ夏期講習が終わるまでどーやって待ってんだ」

愛「どっかのカフェで本読んでる

アツマ「ぐっ……」

 

愛はクッションを抱えて、ふさぎ込んでいるが……、

 

愛「こんなのワガママだよね

アツマ「ワガママじゃないと思うが、おまえ、いったいぜんたい、どーしちまったんだ」

愛「時計!

アツマ「び、びっくりした、突然大声出しやがって」

愛「やっぱいいよ、わたしはここにいる。はやくしないと予備校に遅刻しちゃうよ、時計をみて」

アツマ「(時計を見上げ)たしかに……」

 

 

都心へ向かう電車

愛は笑っておれを見送った。

 

でも、ぜんぜん元気のない笑い方だった。

 

愛が来たのは2年前だけど、毎日顔を合わせていたら、元気のないことぐらい、わかってしまう。

 

ちくしょう、どうすれば……

 

 

◯ふたたび戸部邸

 

アカ子はけっきょくひとりで帰った。

明日美子さんは寝てしまった。

あすかは部屋で勉強している(忘れてはいけない、彼女も受験生だ)。

 

愛は居間でひとり、ソファーにちょこんと座っていた。

 

愛(あんなこと、アツマくんに言わないほうが良かったな、動揺させちゃって……。

 自分の弱さを、アツマくんに見せすぎてるんだ、わたし。

 前はアツマくんに強がってたのに。

 自分に甘えちゃダメ、自分に甘えちゃ。

 わたしは強いヒロインにならなきゃ。

 小説の主人公のお相手役じゃだめ。

 しっかりしないと。

 なんでも自分で解決しなきゃ。)

 

愛はテーブルの上にある文庫本を手に取る。

 

愛(そりゃ、これまで、「ひとりじゃできなかったこと」も何度かあったけど。

 もう子供じゃないんだし。

 なんか、今朝のわたしの態度、アツマくんに依存しすぎてるのが見え見え。

 バカだな、わたし。)

 

愛(--でも。

 夏休みとはいえ、平日の朝から、こうやって大きなリビングにひとりで居ると、なんだか変な感じだ。

 なにか、空虚なものが、胸にたまってる感じーー。)

 

愛は文庫本をめくり始めるが、数ページ読んだだけで閉じてしまう。

 

愛(あれ……? この小説、前は大好きだったのに)

 

愛(おかしいな、飽きちゃったんだろうか)

 

 

『ガチャッ!』

『バーン!!』

 

 

愛「え……(;・∀・)」

 

玄関のドアが開く音だよね、いまの。

まさか……ドロボウ? そんなばかな……。

 

『ドドドドドド』

 

愛!!

 

愛「(今までになく驚いた顔であ、アツマくん!?

 

愛「ちょっと、どうしたのよ、夏期講習は!?」

アツマ「お前の様子がおかしかったから」

愛「わたしのワガママのせい!? それで戻ってきちゃったの!? わたしが変なお願いしたせいで」

アツマ「うっせえ!!!!!! お前は悪くねえ!!!!!! 誰も悪くねえ!!!!!

 悪いとしたら、おれがお前の感情を理解するのができなかったことだ!!!!!

 

愛「感情って、理解って、当然でしょ? 他人のこころがわからないのは」

アツマ「愛、お前、さみしかったんだな? おれがいなくて

愛「どうしてわかるの……

アツマ「わかんねえ

 

 

8月6日 アカちゃんとスイカを食べた

8月6日(月)

台風が近づく

 

午前

勉強、勉強、勉強、読書、読書

 

そんなことをひたすらやっていて、疲れて、ひとりぼっちでソファに倒れ込んでいたら、予定どおりアカちゃんがやって来た。

 

切って冷蔵庫に入れて置いたスイカを、ふたりで食べた。

元気が出た。

 

アカちゃん「青島さんがいなくて残念ね」

愛「さやかはお兄さんと予定があるんだって」

アカちゃん「……青島さんのことは呼び捨てにするのね……(   ^ω^)

愛「あ、アカちゃんも呼び捨てにしてほしい!?(;^ω^)」

 

愛「あのね、わたしとしては、呼び捨てよりも、『アカちゃん』って呼ぶほうが、親しみがこもってる気がするの。

 

試しに、呼び捨てにしてみるね」

アカちゃん「どうぞ。」

愛「アカ子、わたしが切ったスイカ、美味しい?

 

アカちゃん「……(赤面)」

愛「……(//〇__〇//)」

 

愛「や、やっぱり、これからも『アカちゃん』って呼ばせてほしいかな? (//////)」

アカちゃん「(///﹏///)」

 

アカちゃん「す、スイカ、はやく食べちゃいましょう??」

愛「そ…そうね」

 

それから私たちはグランドピアノで交代に好きに曲を弾いていた。

 

わたしがビーチ・ボーイズの曲を弾いていたら、お外の雲行きが怪しくなってきた。ビーチ・ボーイズには似合わない天気だ。

 

愛「(手を止めて)一難去ってまた一難、か」

アカちゃん「台風!?」

愛「あら、ニュースで散々言ってたじゃないの」

アカちゃん「わたし、きょうはまだテレビいちどもみてないの(; ゚゚)」

愛「……大丈夫? 怖いの?(;´・ω・)」

 

(雷鳴)ピシャーン!!

 

アカちゃん「(愛に抱きついて)きゃあああ!!

愛「大丈夫、大丈夫、遠いから(;^ω^)」

 

(もう1発雷鳴)ピシャーン!!

ゴロゴロゴロゴロ

 

愛に抱きつき続けるアカちゃん

 

ふたり「…………………」

 

 

 

愛「えーと、アカちゃん(/////)」

アカちゃん「(小刻みに震える)」

愛「きょう、とまっていってもいいよ(/////)」

アカちゃん「! (≧▽≦)

 

 

 

 

 

 

あすかちゃんから二時間遅れでアツマくんは帰ってきた。

 

愛「もう!」

アツマ「なに怒ってんの?」

愛「遅いぞ!!

アツマ「……悪かったよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ……」

階段を上がろうとするアツマ「なんだよ。

まだなにかあるのかよ」

愛「勉強頑張ってるのはいいけど…

 もう少し長く、家にいてもいいじゃない

アツマ「あのなあ、夏期講習だぞ夏期講習。

お前も『時間割』っつうもんがあるのは知ってるだろ……!?

 

これまでになく、つぶらな瞳で、愛がアツマを見ている!!

 

アツマ「………………どうした?(゜д゜)」

激安アイスコーヒーと鑑定団とビートルズ

 

bakhtin19880823.hatenadiary.jp

 

 

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 バンドを作りたくて、同学年のギターが上手いことで有名な的場マキさんを誘ったら、「ビートルズ』が人の名前だなんて、とんでもない!!」って、怒られた。

 

 ショックだった。

 あたしの無知が。

 『ビートルズ』が人の名前だって、勘違いしていた。

 ビートルズのメンバーすら知らなかった。

 

 ぜんぶ、あたしの空回りだったんだろうか……?

 

 うだるような暑さの放課後、フラフラと歩いていたあたしは、某アーケード街に迷い込んでいた。 

 

 ストレイテナーと出会ったライブハウスの横を通り過ぎる。

 あのライブで味わった衝撃と感動が--気力が萎えているせいで、戻ってこない。

 

「はぁ……」

 

 思わずため息をついてしまった。

 学校に引き返して、タイジュくんに連絡して、一緒にお茶でも飲みに行こうか。 

 

「あれ……?」

 

 いまは使われていなかったはずの、 古めかしい西洋建築の建物に、電気が灯っている。

 

 あたしが物心ついてから、そこは、廃屋(はいおく)……、っていうんだろうか、ずっと使われていなくて、建物だけが遺っていた。

 

コーヒー・紅茶 200円

 

 や……安っ!!

 何ここ、喫茶店!?

「OPEN」の札がおりているってことは、営業中……! 

 

♪カランカラン♪

 

 正直「怪しい」と思いもしたが、あまりにも暑く、喉が乾いていたので、古めかしい扉をあけて、なかに入ってしまった。 

 

「いらっしゃい」

 

 中年男性。

 悪い人じゃなさそう。

 カウンターと、少数のテーブル席。

 空調は問題なし。

 ところ狭しと、レコードのジャケットが飾られている。

 ジャズ喫茶(←行ったことないけど)みたいだ。

 

「お好きなところに」

 

 お客さんは誰もいなかった。

 カウンターの椅子に座った。

 

 洋楽が流れていた。

 ひたすら「チケット・トゥー・ライド」 というフレーズが繰り返されているような、そんな曲。

 

「申し訳ないね、メニューはまだ、コーヒーと紅茶しかないんだ、立ち上げたばっかりだから」

「じゃあアイスコーヒーください……」

「はーい(ヽ´ω`)」

 

 あたしと店主のオジサンしかいないので、間がもたない。

 次に流れてきた曲に言及してみる。 

 

「な、なんだか物悲しい曲ですね(^_^;) クラシック音楽みたい」

「そうだね、『エスタデイ』っていう曲名だから、センチメンタルな気分になってしまうこともある……この歳になると、ねw」

「は、はぁ……(^_^;)」

 

「こ、ここは、最近オープンしたんですか?」

「もともと地下にスタジオがあったんだ」

「そうだったんですか!? てっきり廃墟みたいになっているとーー、

あ、すすすみません(^_^;)」

「いやいや。

 近年、商店街の『さびれ』が進んでいるだろう? 若い人を呼び込みたくてね。 

 まぁ、商工会の要請でもあるんだけど……。

 君みたいな若い子に来てほしかったんだ。

 それで、『Ticket to Ride』や『Yesterday』みたいな曲を覚えて帰ってくれたら、僕としては最高だねw

 そして『Ticket to Ride』や『Yesterday』がどのミュージシャンの曲か、も知ってくれて、そこから音楽の世界に入り込んでくれるのなら……。

 おっと、お待たせ、出血大サービスの200円アイスコーヒーだ」

 

 グラスに入ったアイスコーヒーが出てきた。

 案外ちゃんとしたアイスコーヒーだ。

 ミルクを入れ、シロップを入れ、かき混ぜる。

 

 オジサンはレコードを入れ替えている。

 あたし、レコードプレーヤーの現物を見たの、たぶん初めて。

 あれがレコードプレーヤーなんだ……!

 

 新しいレコードの演奏が始まる……

 

あ!

「えっ(;´∀`)」

鑑定団!! 鑑定団!!

 土曜のお昼の!!!!!!」

 

「ああ、なるほど~。やっぱり君らみたいな世代だと、そんな認識になっちゃうのは仕方ないか~w」

「この曲、なんて曲ですか?」

『HELP!』

「歌ってるのは?」

「そりゃもう当然、ザ・ビートルズさ」

(゚д゚;)!?

 

 

 

The Beatles 1962-1966

The Beatles 1962-1966

 

 

ザ・ビートルズ 1962年-1966年 [Analog]

ザ・ビートルズ 1962年-1966年 [Analog]

 

 

 

7月26日 さやかといっしょにボブ・ディランを演奏した

愛の日記帳より

7月26日(木)

 

少しだけ涼しい

 

 アツマくんは今日も図書館に勉強に出掛けていた。

 

さみしかった 

 

 あすかちゃんも参考書を買いに街まで出掛けていた。

 さみしかった。

 

 わたしは青島さやかの携帯電話に電話をかけた。

 そしたら戸部邸に来てくれることになった。

 

 友だちとの距離感は、むずかしい問題だと思う。

 まだ、さやかと出会って1ヶ月ぐらい。

 最初は喧嘩していた。

 でも、さやかがこころのなかに闇を抱えていることがわかって、さやかに優しい気持ちで接することができるようになった。

 それから、何回かさやかをここに呼んだ。

 さやかはこの家に来ることを快く承諾してくれた。

 文学の話や、音楽の話をした。

 いまでは、わたしは『さやか』と呼び、さやかはわたしを『愛』と呼んでいる。

 こころなしか、さやかの表情も柔らかくなったと思う。

 

 さやかは、バイオリンがまだ弾けない。

 学校のガーデンで弦を切ってしまったことが、トラウマになっているんだと、わたしは考えている。

 

 きょう。

 さやかは昼下がりにやってきた。

 わたしはこう言った。

 

ピアノ……弾いても、いい?

 

 それまで、さやかの前でピアノを弾いたことはなかった。

 

なんでそんな遠慮気味なの?

 

 さやかは、疑わしそうな表情と口調で答えた。

 

 そういえば、さやかの前でピアノを弾かない理由は、なかった。

 

わたしがあのグランドピアノで曲を弾いても、耳障りじゃない?

 

 できるだけ優しく、距離を詰めるように、さやかをいたわるように、わたしは言った。

 

聴いてみたい。

 聴いてみたいな、愛の弾くピアノ

 

 さやかの顔に笑いがあふれてきた。

 

ねえ、わたし、ハーモニカ、いつもカバンに入れてるの

へーっ

お兄さんのお下がり

照れなくてもいいじゃん

は、はずかしくなんかない

 

お兄さんがむかし好きでよく観てたアニメの登場人物が、ハーモニカを持っていたんだって」と、さやかはしどろもどろに説明したが、わたしにはまったく見当もつかなかった。

 

 

じゃあ、さやかはハーモニカを吹いて

ボブ・ディラン

そ、そ

ライク・ア・ローリング・ストーン

そうよ

 

追憶のハイウェイ61』。

 わたしは、このアルバムを、持っている。

 

追憶のハイウェイ61

追憶のハイウェイ61

 

 

浜田省吾がね

浜田省吾

うん、『ラストショー』って曲で、この曲の名前を出しているんだけど、なんで『ライク・ア・ローリング・ストーン』を出したのか、彼の意図が理解出来ない

ずいぶん辛辣ね

曲が悪いわけじゃないわ、歌詞で違和感があるところがあっただけ

日本で、『ブルース・スプリングスティーンに影響を受けました系』のミュージシャンっているでしょ

 「うん、具体名はわたしも挙げないけど、居るわよね(笑)

 

 わたしは吹き出してしまった。

 つられてさやかも笑いだしてしまった。

 

浜田省吾は自分の名前で損をしている

佐野元春は何度か弾いた

 

 

 ーー気を取り直して、わたしがピアノを弾き、さやかがハーモニカを吹いて、『ライク・ア・ローリング・ストーン』を演奏した。

 

 

 

ノーベル賞万歳。

 

弾きながら、サビの有名なフレーズを歌うと、気持ちよかった。

 

 

……そうそう。

さやかが着て来た服。

スカートが可愛かった。

買いたいかも。

エストもたぶんあんまり違わないだろうし

 

7月21日 アツマくんと水族館に行った

 

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↑(前回)のつづき、

 図書館に行ったアツマだったが……。

 

藤村「ヤッホー」

アツマ「(゚o゚;)ゲッ!! お前も来てたのかよ」

藤村「マンガでも読みにきたの」

アツマ「(`ヘ´) チガウ!!! 勉強に決まってるだろ」

藤村「行動が遅いねえ~w

アツマ「(`Д´) ダマレ!」

 

  • 自習用の部屋

アツマ「・・・・・・φ(..)カリカリ」

 

黙々と集中するアツマ。

 

藤村「(⌒-⌒)」

 

藤村「(こっそりと)ね、ね、戸部」

アツマ「なんだよ、私語禁止だぞ

藤村「これ💛」

アツマ「は!?

 

・藤村が差し出した手には、何やらチケットが2枚あった

 

アツマ「ぐはぁ!!

 

(一斉に振り向く勉強中の人たち)

 

藤村「ちょっと!! 変な大声出さないでよ」

アツマ「どういうつもりだ藤村?

 

○近所のファーストフード

アツマ「水族館のチケット」

藤村「そうだよ」

アツマ「見せびらかしてどうすんだよ」

藤村「鈍いなあ」

アツマ「まさか……」

藤村「(ニヤリ)」

アツマ「藤村、お、おまえ(;´Д`)」

藤村「(ノ∇≦*) キャハハッッッッ

アツマ「えっ」

藤村「も~~~~www あんたとなんか行くわけないじゃんwwwwww

アツマ「あ……(;・∀・)」

 

アツマ「えっ、くれるの!? そのチケット

藤村「親戚からもらったんだけどね、一緒に行く相手もいないし、予定詰まってるし」

アツマ「夏期講習とかか」

藤村「ま、そんなところ。あんたは申し込んでないの?」

アツマ「えっはやくね」

藤村「あんたが遅すぎるのよ!! バカじゃないの?

アツマ「うっ……(´Д`;)」

 

 

○帰宅したアツマ

○自分の部屋

アツマ「(水族館のチケット2枚とにらめっこして)う~む、どうすべきか……」

 

 

愛の日記帳

7月21日(土)

 

猛暑

 

 夏休み初日だけど、早起き。

 アツマくんと、朝から水族館に行く。

 

 どうしてこんなことに……。

 きのうの晩、わたしの部屋のドアに、水族館のチケットが差し込まれていたときは、何事かと思った。

 チケットを差し込んだ犯人がアツマくんだとわかったとき、笑いがこみあげてきた。

 感情表現がどんだけ下手なのよ! って。

 

 でも、よく考えたら、わたしはわたしで感情表現が下手だった。

 流さんに「素直じゃないね」って言われたのは、図星だ。

 じゃあどうして、わたしはアツマくんに素直じゃないのか。

 アツマくんにどういう感情を向けられないのか。

 

 それは、

 

 それは

 それはつまり

 それはどういうことかというと

 具体的には

 

 あー、もう!

 とにかく、アツマくんとふたりで、すす族館に行ってきた!!

 

 水族館は楽しかった。

 大きな水槽に、お魚だけじゃなくて、いろんな生き物がいて、眺めてるだけで1時間ぐらいあっという間に過ぎて行って、アツマくんに呆れられて……迷めいわくをかけて、それでもこころの中の熱中症は収まっていった気がする。

 ありがとう。

 

 アシカショーも観た。

 面白すぎて涙が出そうだった。

 すさまじく笑ったので、アツマくんの顔が感感惑 とまどっているように見えたかもしれない。

 

 イルカアシカショーのあとで、「青島さやかのことでなんか抱えてるのか」みたいなことをアツマくんにそれとなく訊かれたのは、よく考えたら……よく考えなくても、わたしが笑いすぎたからかもしれない。

 わたしって、かなりバカ。

 

                 「大丈夫だよ」って言っておいた

 

 ペンギンさんも観れたられた。

 ふだん伊吹先生に激しくスキンシップで迫られているけど、きょうは

                     ↑ハグされたりとか!

 わたしがペンギンさんを抱きしめたくって、しかたなかった。

 

 帰りにグッズショップで、小さめのシャチイルカのぬいぐるみを買った。

 ペンギンさんと悩んだんだけど……。

 今度は、こっちからイルカのぬいぐるみを持って、あすかちゃんの部屋に押しかけてやろうか、なんて思う。(夜這いじゃないけど)

 

 

最大級の胸騒ぎ

終業式ーー

アツマ「やったああああぁ!!! 夏休みだ夏休みだ夏休み」

愛「( ‘д‘⊂彡☆))Д´) パーン

アツマ「うわっ出た!!」

愛「夏休みなんてないでしょ!?

アツマ「へっどういうこと」

愛「受験勉強💢」

アツマ「あっ( ゚д゚)」

愛「なに平和ボケしてんの? あと半年したらセンター試験が始まっちゃうのよ」

アツマ「」

愛「固まらないでよ」

アツマ「」

 

 

さすがに危機感を持ったのか、アツマがなにやらパンフレットをまさぐり始める

 

アツマ「(予備校のパンフレットを眺め)じーーーーーーっ」

愛(夏期講習か・・・)

 

 

夏期講習・・・・・・

行くのかな、アツマくん、夏期講習。

どこの予備校に?

校舎はやっぱり都心になるのかな。

そしたら、昼間はこの邸(いえ)には居ないのよね。

さみしい・・・・・・

 

 

 

 

 

あ、あれ!?

 

なんでわたし、

なんで、

アツマくんが夏期講習に行くと、さみしいの・・・・・・!?

 

アツマ「おーい」

愛「(・_・;)」

アツマ「おーーい」

愛「」

 

アツマ「夏風邪か?

 

愛「はい!? (;´Д`)」

アツマ「あたまが沸騰しそうじゃないか」

愛「だれの」

アツマ「おまえに決まってるだろ

 

えっ・・・・・・。

 

「さみしい」という感情で、なんで顔が火照るの、わたし・・・・・・。

 

たぶん、たぶん、外が暑すぎるからよ!

 

アツマ「図書館行く」

愛「どうぞ・・・・・・」

 

 

 

流さん「アツマが自分から図書館行くなんて珍しい」

愛「読みたい本でもできたんでしょうか。今夜はお祝いしないと(・_・;)」

流さん「いや、たぶん受験勉強でしょ」

愛「あ(;´Д`)」

 

愛「わ、わ、わたし」

流さん「?」

愛「プールにでも行ってきましょうか。こんな暑さだし、とろけそうになっちゃうから」

流さん「( ̄ー ̄)ニヤリ……」

愛「・・・・・・・・・・・・流さん?」

 

流さん「素直じゃないなあ

 

愛「!!!!!!!!!

 

 

あわてて階段を駆け上がり自分の部屋に飛び込む愛

 

呼吸が……

息苦しい……?

 

ちがう、

焦って?

でも、焦りとはちょっと違う気持ち、

ドキドキしそうな気持ち、

だから脈拍が速くなって、

でも、わたし、なんでドキドキしてるの?

 

アツマくんがいないとさみしいから!?

流さんに、素直じゃないって言われたから!?

 

そもそも、なんで流さん、わたしが素直じゃないなんて、

 

!!!!!

 

もしかして、わたしのアツマくんへの感情が、素直じゃないってこと!?

 

もしかしなくても。

 

でも、どうして!?

 

そんなにわたし、

アツマくんを……

もとめてるの!?