8月7日 さいきん愛の様子がおかしい

アツマ「なぁ、あすか」

あすか「なに? お兄ちゃん」

アツマ「昨日の夜、愛が……」

 

bakhtin19880823.hatenadiary.jp

 

 

「勉強頑張ってるのはいいけど…

もう少し長く、家にいてもいいじゃない」

 

アツマ「こう言ってきたんだ。

 で、『夏期講習があるから仕方ないじゃないか』って言ったら……」

あすか「言ったら……?」

アツマ「すっげえ、俺を、その……(頭をポリポリかきながら)いとおしそうな眼で見てくるんだ。

 まるで、家を出ていくおれを引き留めるような感じで……」

 

あすか「(・∀・)!!」

アツマ「なんだそのひらめいたような顔は」

あすか「(・∀・)ニヤニヤ」

アツマ「気色悪いな……」

 

◯ダイニング

 

アツマ「おーーっす、愛」

アカちゃん「おはようございます、アツマさん」

アツマ「アカ子さん(デレデレ)

 

愛がうつむいている。

なぜか、アツマがいつも座る席から、かなり距離を置いている。

 

アツマ(いったいどうしたっていうんだ……)

 

朝食が終わる

明日美子さん「ふああああ~(´ぅω・`) ネムイ」

流さん「さてと池袋の書店にでも本を見に行くかな」

あすか「アカ子さん、庭の花に水をやりに行きません?」

アカちゃん「あら素敵」

 

アツマと愛のふたり以外、その場からいなくなる……。

 

 

 

 

 

アツマ「あのな、おれだって危機感があるんだってこと、わかってほしい。だから夏期講習だけでなく、居残り勉強だってやってる。出遅れてるっていう自覚があるから。

 だから、昼間この家にはいられない」

 

愛「うん…そうだよね、そうだよね」

 

アツマ「おまえ、なんでおれが家をあけてるのがイヤなんだ? おまえの学校の友だちだって、よくここに来てるじゃんか」

愛「わからない

アツマ「わからない?」

愛「わからない……わからない……わからないわからないわからない

アツマ「お、おちついてくれ」

愛「わからないよ!! 国語のテストの100倍難しい!! わからない!!

 

アツマ「……( ゚д゚)」

 

愛「(弱々しい声で)ねぇ……きょう、アツマくんを待っててもいい?

アツマ「待つって、家で、か?」

愛「(弱々しい声で)予備校の近くで

アツマ「予備校の近くって……電車で行くのかよ」

愛「(弱々しい声で)アカちゃんと一緒に行く

アツマ「(苛立たしげに)アカ子さんまで巻き添えにする気か!? おまえ、夏期講習が何時間あるのか知らないのか?」

愛「アカちゃんとは途中で分かれる

アツマ「じゃあ夏期講習が終わるまでどーやって待ってんだ」

愛「どっかのカフェで本読んでる

アツマ「ぐっ……」

 

愛はクッションを抱えて、ふさぎ込んでいるが……、

 

愛「こんなのワガママだよね

アツマ「ワガママじゃないと思うが、おまえ、いったいぜんたい、どーしちまったんだ」

愛「時計!

アツマ「び、びっくりした、突然大声出しやがって」

愛「やっぱいいよ、わたしはここにいる。はやくしないと予備校に遅刻しちゃうよ、時計をみて」

アツマ「(時計を見上げ)たしかに……」

 

 

都心へ向かう電車

愛は笑っておれを見送った。

 

でも、ぜんぜん元気のない笑い方だった。

 

愛が来たのは2年前だけど、毎日顔を合わせていたら、元気のないことぐらい、わかってしまう。

 

ちくしょう、どうすれば……

 

 

◯ふたたび戸部邸

 

アカ子はけっきょくひとりで帰った。

明日美子さんは寝てしまった。

あすかは部屋で勉強している(忘れてはいけない、彼女も受験生だ)。

 

愛は居間でひとり、ソファーにちょこんと座っていた。

 

愛(あんなこと、アツマくんに言わないほうが良かったな、動揺させちゃって……。

 自分の弱さを、アツマくんに見せすぎてるんだ、わたし。

 前はアツマくんに強がってたのに。

 自分に甘えちゃダメ、自分に甘えちゃ。

 わたしは強いヒロインにならなきゃ。

 小説の主人公のお相手役じゃだめ。

 しっかりしないと。

 なんでも自分で解決しなきゃ。)

 

愛はテーブルの上にある文庫本を手に取る。

 

愛(そりゃ、これまで、「ひとりじゃできなかったこと」も何度かあったけど。

 もう子供じゃないんだし。

 なんか、今朝のわたしの態度、アツマくんに依存しすぎてるのが見え見え。

 バカだな、わたし。)

 

愛(--でも。

 夏休みとはいえ、平日の朝から、こうやって大きなリビングにひとりで居ると、なんだか変な感じだ。

 なにか、空虚なものが、胸にたまってる感じーー。)

 

愛は文庫本をめくり始めるが、数ページ読んだだけで閉じてしまう。

 

愛(あれ……? この小説、前は大好きだったのに)

 

愛(おかしいな、飽きちゃったんだろうか)

 

 

『ガチャッ!』

『バーン!!』

 

 

愛「え……(;・∀・)」

 

玄関のドアが開く音だよね、いまの。

まさか……ドロボウ? そんなばかな……。

 

『ドドドドドド』

 

愛!!

 

愛「(今までになく驚いた顔であ、アツマくん!?

 

愛「ちょっと、どうしたのよ、夏期講習は!?」

アツマ「お前の様子がおかしかったから」

愛「わたしのワガママのせい!? それで戻ってきちゃったの!? わたしが変なお願いしたせいで」

アツマ「うっせえ!!!!!! お前は悪くねえ!!!!!! 誰も悪くねえ!!!!!

 悪いとしたら、おれがお前の感情を理解するのができなかったことだ!!!!!

 

愛「感情って、理解って、当然でしょ? 他人のこころがわからないのは」

アツマ「愛、お前、さみしかったんだな? おれがいなくて

愛「どうしてわかるの……

アツマ「わかんねえ