戸部邸
新年の朝
「読み終わっちゃった。
近いうちに、読み返したほうがいいかな、また」
あけましておめでとうございます。
羽田愛です。
今年もよろしくおねがいします。
思ったよりはやく起きてしまったので、読みかけたままになっていた『トニオ・クレエゲル』に手を付けたら、すんなりと最後まで読み終えてしまった。
これが何度目の通読か、もはやわからない。
2019年の読書は不本意だった。
読んだ冊数、とてもじゃないけど、ひとには言えない。
2020年は、立て直したいな、読書。
立て直せるかな。
考えても仕方ない。
読まなきゃ始まらない。
今年がーー、
音楽と本が、充実した年に、なりますように。
「さてと。
キッチンでも磨くか。」
× × ×
・あすかちゃんが起きてきた
「あけましておめでとうございます! おねーさん」
「あけましておめでとうあすかちゃん。
今年もよろしくね」
「よろしくです~」
「あすかちゃんのバンドはさ、」
「『ソリッドオーシャン』がどうかしましたか?」
「そ、そうね『ソリッドオーシャン』ね、
クリスマスのアレで終わりじゃないんでしょ活動。
今年もどこかでライブするんでしょう、きっと」
「(キョトーン)」
「し、しないわけないよね!?」
「…そういえば今後のこと、まったく考えてませんでした。
バンドはいまの4人で継続するんですけど、なんにも話し合ってなかった」
「燃え尽き症候群になっちゃダメよ…あすかちゃん」
「燃え尽きました」
「ええぇっ」
「でも、いったん燃え尽きて、生まれ変わりましたから、わたし」
「生まれ変わった…?」
「大げさすぎましたかw
リスタート、ってことですよ」
・そこに流さんが起きてきた
あすかちゃん「ながるさーん、あけましておめでとうございます」
わたし「あけましておめでとうございます」
流さん「こちらこそ、ふたりともあけましておめでとう」
流さん「(あすかちゃんを凝視して)………」
あすかちゃん「? どうしました、ながるさーん」
流さん「いやね、あすかちゃんの眼がーー、
新年早々から、輝いてるみたいで、いいなあって」
あすかちゃん「どうしてわかるんですか、ながるさん……」
わたし「言われてみれば」
あすかちゃん「お、おねーさんも、そう思います!?」
わたし「なんかキラキラしてる」
あすかちゃん「ほんとですか!?」
わたし「あすかちゃんさっき、『燃え尽きて、生まれ変わった』って言ってたけど…あすかちゃんがそう言った意味、わかったような気がする」
あすかちゃん「わかるんですか?」
わたし「うん、
あすかちゃん、眼だけじゃなくて、全体的になんか、キラキラしてる。
まぶしいw」
あすかちゃん「おねーさんまたまたぁ~ww」
・少し経ってから、アツマくんが起きてきた
アツマくん「お、3人とも、あけおめ」
わたし「いい加減ね、新年の挨拶なのに」
あすかちゃん「そうだよぉお兄ちゃん」
わたし「……今年もがんばってね、アツマくん」
アツマくん「なにをがんばれってのw」
わたし「いろいろあるでしょ、がんばること💢」
アツマくん「おまえもがんばれよ」
わたし「言われなくたって」
アツマくん「(わたしの頭に手をぽすっ、と置いて)
まぁよろしくな、愛。今年も」
不意をつかれたわたし「………よろしく。」
アツマくん「ところで今年はオリンピックがあるのだが。
しかも開催地はおれたちの東京都だ!!!」
あすかちゃん「東京都だけじゃなくなっちゃったけどね」
流さん「札幌マラソンかw」
アツマくん「くぅ」
わたし「アツマくんは出ないの? オリンピック」
アツマくん「はぁ!?」
わたし「種目によってはけっこういいとこまで行くんじゃないのかしらw」
アツマくん「じょ冗談に決まってるよな」
わたし「でも何%かは本気よ」
アツマくん「どうせ8%とかだろ」
わたし「どうかしらね~~」
・最後に明日美子さんが起きてきた
明日美子さん「あらら~、みんなはやいのね~~」
流さん「でももうすぐお昼どきですよw」
わたし「いけない、わたしお雑煮まだつくってない」
明日美子さん「マアマア、お雑煮の前に」
わたし「前に?」
明日美子さん「あけおめ~~」
わたし「(-_-;)あ、はい。
あけおめ。」
明日美子さん「で、お雑煮に取り掛かる前に」
わたし「まだなにかあるんですか??」
(不敵な笑みの明日美子さん)
わたし「???」
明日美子さん「愛ちゃん、お年玉ほしいでしょ」
わたし「あ!」
わたし「ーーで、でも、
たしかに過去3年はお年玉もらいましたけど、
わたしもう今年は高等部の3年だし、
いい加減もらうような歳でも、ないような、」
アツマくん「何遠慮してんだ、もらえばいいだろ」
明日美子さん「(わたしに抱きつくようにして)そうよ~。
この邸(いえ)では、わたしは愛ちゃんのお母さんなんだから!!」
わたし「じゃ、じゃ、じゃあ、
お、
おかあさん、
お年玉、
ください」
明日美子さん「(ポチ袋を手渡して)はい、素直な愛ちゃん」
わたし「ありがとうございます、うけとります……
あの、
素直って言ってくれて、うれしいです、
明日美子さんーーじゃなくって、わたしたちのおかあさん」
アツマくん「もうずっとおかあさんって呼べばいいんじゃね」
わたし「ど、どうしよ」
明日美子さん「どっちでもいいのよwwwwどっちでもw」
わたし「(-_-;)か、考えときます」
明日美子さん「で、もちろんアツマとあすかにも、お年玉ね」
あすかちゃん「(ノ≧∀)ノわぁ~いありがとう♫」
アツマくん「か、母さん、それこそ…おれ、バイトで稼いだし、もう子どもじゃないよ、大学生にもなって」
明日美子さん「ずっとお年玉はあげるから。」
アツマくん「『ずっと』っつったってーーいつまで?」
明日美子さん「いつまでかなあ。
今は、未定かな」
アツマくん「み、未定って…もうじき、親戚の子がいたらお年玉あげるような年齢になっちまうぜ」
明日美子さん「(´∀`*)ウフフ…
楽しみだわわたし、いろいろと、アツマ。」
アツマくん「(ポチ袋を受け取りながら)『何が』楽しみなんだよっ、思わせぶりに…」
わたし「けっきょく受け取るんだw」
アツマくん「るせっ」