・夏期講習に行くために、自分の部屋から降りてくるアツマ。
すると……
アツマ「なんだ、愛、おまえも出かけんのか」
愛「アツマくんと一緒の電車乗る」
アツマ「どーして」
愛「書店に用があるの、アツマくんが通ってる予備校の近くの書店、そこで本買いたいの」
◯行きの車内
愛「……」
アツマ「……」
◯アツマが降りる駅
ふたりは改札を出た。
アツマ「それじゃあな。予備校はこっちだから。また帰りに」
愛「うん、書店はこっちの方角だから」
アツマ「(頭をポリポリ掻きながら)あのさ……」
愛「な、なに……」
アツマ「いいな、その服」
ーーそう言ってアツマは予備校に行ってしまった。
立ちすくむ愛。
◯愛の目的の書店
愛(えーと、人文書フロアに行くエスカレーターは……ここか)
ウイーンウイーンとエスカレーターに運ばれる愛、
であったがーー
『いいな、その服』
ぶるんぶるん! とあたまを振る愛……。
にわかに客の注目を浴びる。
愛「い、いけないいけないいけない」
どうして?
ほめられたなら、うれしいはず。
すなおにうれしいとおもえない。
でも、こう、あったかいかんじょうというかなんというか
・人文書フロア
わたしとしたことが……。
興味を持っていた本が、思ったより高かった。
わたしが今はいてるスカートよりは安いけど。
前もって価格を調べてこなかったわたしが悪い。
普段は、見立てより少し値段が高いぐらいなら買ってしまうんだけど、
これはなぁ……。
わたしは別の棚に行って、目当てのものより価格が安い本を探そうとした。
でも、レジに持っていこうとする決断がなかなかできない。
目当ての本より値段が安いにしても、「目当ての本ではない」という事実に変わりはない。
その事実が、レジに持っていこうとする決断力をにぶらせている。
わたしはそのフロアのすべての棚を物色した。
しかし、当然のことだけど、目当ての本の代わりになるような、目当ての本より安い本は、決めきれなかった。
腕時計を見ると、正午が迫っている!
アツマくんと一緒にお昼を食べるという発想が……
なかった。
「おひとりさま」とは本当つらいもので、わたしがひとりでは入りづらいお店が多く、お昼を食べるお店を見つけるのに、だいぶ苦労した。
アツマくんのせいじゃない。
段取りを省いた、わたしの過失。
わたしのバカバカ。
◯某サブウ○イ
愛「( ´Д`)=3」
愛(これから、どうしよう)
愛(文庫本がそろっている書店は……、少し歩くけど、あそこかな)
東京都心のいいところ。
・品揃えがきちんとしてる書店がある
・古本屋が多い
・上野に国際子ども図書館がある
・上野公園の居心地がいい
・神楽坂駅から神保町あたりまでの界隈をぶらぶら歩くのが楽しい
(ただし、夏以外)
・美術館がいっぱいある
・博物館もいっぱいある
・動物園もある
・水族館もある
水族館か……。
アツマくんと水族館に行ってから、もう1ヶ月近くになるんだ。
『いいな、その服』
愛「あーっ、もう!!!!!! ヽ(`Д´)ノ
出てくるな、アツマ!!!!!!」
(道行く人が愛に注目する)
愛「あ、どうも、すみません(-_-;)」
◯某大型書店
文庫と新書のフロアに来た。
おびただしい量の岩波文庫が敷き詰められている棚の前に立った。
立ったのだが。
あれ?
わたしの知的好奇心が落ちているのか、「手応え」がない。
新刊や復刊の岩波文庫を棚から手に取っては戻す……を繰り返している。
まるで文庫本がわたしの手からすり抜けていくみたい。
かといって、この棚、読んだのだらけ……。
わたしは、海外文学含め純文学を多く取り扱っている文庫レーベルの棚と学術系文庫レーベルの棚をしらみつぶしにした。
でも、発見がなかった。
フロアを行ったり来たりしたせいで、軽いめまいがしたので、たまらず書店に入居している喫茶店に駆け込んだ。
「えーっと、ミックスジュース」
喉が渇いていたのでミックスジュースを一気に飲んでしまった。
お冷やをコップの半分まで飲んで、本日のコーヒーを追加注文した。
まずい、今月の『読書用おこづかい』を侵食している。
カバンのなかに、3冊の本をあらかじめ入れてきた。
1冊目を読もうとした。
眼が文字を素通りしていって、うまく読めない。
2冊目を読もうとした。
眼が文字を素通りしていって、うまく読めない。
3冊目を読もうとした。
眼が文字を素通りしていって、うまく読めない。
・・・・・・
「いけない(;´д)、アツマくんからメール来てる、予備校もう終わったんだ」
『地図送るから、この書店まで来て』
『エーッ、遠くね?』
『💢💢💢』
『わかったよ』
(この喫茶店の窓から、横断歩道渡ってアツマくんがやって来るのが見えるはず)
ーー15分経過ーー
「あっ、あれ多分アツマくんだ。
となりに誰かいる。
!?」<ガタッ
喫茶店の店員さん「あ、あの、お客さま、どうされました?(^_^;)」
「アツマくんが……アツマくんが……、
女の人と腕組んでる……」
店員さん「アツマくんって、どなたですか?(^_^;)」