激安アイスコーヒーと鑑定団とビートルズ

 

bakhtin19880823.hatenadiary.jp

 

 

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 バンドを作りたくて、同学年のギターが上手いことで有名な的場マキさんを誘ったら、「ビートルズ』が人の名前だなんて、とんでもない!!」って、怒られた。

 

 ショックだった。

 あたしの無知が。

 『ビートルズ』が人の名前だって、勘違いしていた。

 ビートルズのメンバーすら知らなかった。

 

 ぜんぶ、あたしの空回りだったんだろうか……?

 

 うだるような暑さの放課後、フラフラと歩いていたあたしは、某アーケード街に迷い込んでいた。 

 

 ストレイテナーと出会ったライブハウスの横を通り過ぎる。

 あのライブで味わった衝撃と感動が--気力が萎えているせいで、戻ってこない。

 

「はぁ……」

 

 思わずため息をついてしまった。

 学校に引き返して、タイジュくんに連絡して、一緒にお茶でも飲みに行こうか。 

 

「あれ……?」

 

 いまは使われていなかったはずの、 古めかしい西洋建築の建物に、電気が灯っている。

 

 あたしが物心ついてから、そこは、廃屋(はいおく)……、っていうんだろうか、ずっと使われていなくて、建物だけが遺っていた。

 

コーヒー・紅茶 200円

 

 や……安っ!!

 何ここ、喫茶店!?

「OPEN」の札がおりているってことは、営業中……! 

 

♪カランカラン♪

 

 正直「怪しい」と思いもしたが、あまりにも暑く、喉が乾いていたので、古めかしい扉をあけて、なかに入ってしまった。 

 

「いらっしゃい」

 

 中年男性。

 悪い人じゃなさそう。

 カウンターと、少数のテーブル席。

 空調は問題なし。

 ところ狭しと、レコードのジャケットが飾られている。

 ジャズ喫茶(←行ったことないけど)みたいだ。

 

「お好きなところに」

 

 お客さんは誰もいなかった。

 カウンターの椅子に座った。

 

 洋楽が流れていた。

 ひたすら「チケット・トゥー・ライド」 というフレーズが繰り返されているような、そんな曲。

 

「申し訳ないね、メニューはまだ、コーヒーと紅茶しかないんだ、立ち上げたばっかりだから」

「じゃあアイスコーヒーください……」

「はーい(ヽ´ω`)」

 

 あたしと店主のオジサンしかいないので、間がもたない。

 次に流れてきた曲に言及してみる。 

 

「な、なんだか物悲しい曲ですね(^_^;) クラシック音楽みたい」

「そうだね、『エスタデイ』っていう曲名だから、センチメンタルな気分になってしまうこともある……この歳になると、ねw」

「は、はぁ……(^_^;)」

 

「こ、ここは、最近オープンしたんですか?」

「もともと地下にスタジオがあったんだ」

「そうだったんですか!? てっきり廃墟みたいになっているとーー、

あ、すすすみません(^_^;)」

「いやいや。

 近年、商店街の『さびれ』が進んでいるだろう? 若い人を呼び込みたくてね。 

 まぁ、商工会の要請でもあるんだけど……。

 君みたいな若い子に来てほしかったんだ。

 それで、『Ticket to Ride』や『Yesterday』みたいな曲を覚えて帰ってくれたら、僕としては最高だねw

 そして『Ticket to Ride』や『Yesterday』がどのミュージシャンの曲か、も知ってくれて、そこから音楽の世界に入り込んでくれるのなら……。

 おっと、お待たせ、出血大サービスの200円アイスコーヒーだ」

 

 グラスに入ったアイスコーヒーが出てきた。

 案外ちゃんとしたアイスコーヒーだ。

 ミルクを入れ、シロップを入れ、かき混ぜる。

 

 オジサンはレコードを入れ替えている。

 あたし、レコードプレーヤーの現物を見たの、たぶん初めて。

 あれがレコードプレーヤーなんだ……!

 

 新しいレコードの演奏が始まる……

 

あ!

「えっ(;´∀`)」

鑑定団!! 鑑定団!!

 土曜のお昼の!!!!!!」

 

「ああ、なるほど~。やっぱり君らみたいな世代だと、そんな認識になっちゃうのは仕方ないか~w」

「この曲、なんて曲ですか?」

『HELP!』

「歌ってるのは?」

「そりゃもう当然、ザ・ビートルズさ」

(゚д゚;)!?

 

 

 

The Beatles 1962-1966

The Beatles 1962-1966

 

 

ザ・ビートルズ 1962年-1966年 [Analog]

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