・グランドピアノで、愛が、Clashの曲を弾いている。
♪Lost in the Supermarket♪
愛「~♪」
青島さやか「パンクも聴くのね」
愛「パンクなの? これ」
さやか「パンクロックじゃなきゃなんなの…」
さやか「愛、『サンディニスタ!』は聴いたことがある?」
愛「う…生憎、財政的な問題から、まだーー」
さやか「(微笑んで)お小遣いが足りなかったんでしょ」
愛(ギクッ)
さやか「『サンディニスタ!』、ウチにあるから、こんど貸してあげるよ」
愛「(喜んで)ほんとう?」
さやか「ほんとう。
その・・・・・・(顔を赤らめながら)、兄が持っていたのを・・・・・・、
(どぎまぎ)」
愛「( ^_^)」
愛「でも、『サンディニスタ!』貸してもらえるのは、学校が始まってからになりそうね」
さやか「そうね。
今週末で、夏休みも終わり」
愛「わたし、こんなことしてる場合じゃなかった」
さやか「夏休みの宿題の件ねw」
愛「そう(・_・;)」
さやか「あと、どれくらい?」
愛「国語以外ほとんど終わってるけどーー」
さやか「なんで国語残るの」
愛「・・・・・・得意意識?」
さやか「まぁ、国語の先生、優しいからね。
特に伊吹先生」
愛「はい、わたしたち(文芸部)の顧問ですね・・・(-_-;)」
さやか(テーブルに置いてある文庫本を見て)
「大江健三郎読んでるんだ」
愛「そうね、『万延元年のフットボール』、
でもねえ・・・・・・この程度の長さだと、『世界文学』を読み慣れていると、短いってわけじゃないけど、物足りないのよ」
さやか「『世界文学』ってなによ」
愛「えーっと、えーっと、つまり海外の長編小説とかのーー」
さやか「まあ、小説以外にも、ホメロスやダンテの作品も『文学』の第一級だしね」
愛「そうね、文学≒小説と思ってる人の多いこと多いこと・・・・・・」
さやか「『万延元年のフットボール』で大江が物足りないなら、『同時代ゲーム』読めばいいじゃないの」
愛「うーん、読んだか読んでないか、忘れた」
さやか「あんた、読書記録のためのノート、とってないの!?」
愛「あったわよ! ーーなくしちゃったけど。」
さやか「(驚いて)どうして!?」
愛「あのね、人のこと言えないと言うかなんというか・・・・・・メンタル的に、ちょっと乱れていた時期があって」
さやか「(真顔で)それ、いつ」
愛「今月・・・」
さやか「!? 今は大丈夫なの」
ポーッと愛の顔に赤みがさす。
愛(さやかの耳元で)「あのね・・・・・・わたし」
さやか(絶句)
・・・・・・・・・
さやか「それで、その、告白・・・・・・の返事は」
愛「まだ」
さやか「もっと『押せば』いいんじゃん」
愛「いや、わたしは、『待つ』べきだと思うわ」
さやか「そんなこと言ってたら、夏休みが終わっちゃうでしょうが!」
愛「だって、わたし、いま、彼といっしょに住んでるのよ。
じっと待つのよ」
さやか「シュープリームス(Supremes)みたいなこと言うのね……(-_-;)」
愛(階上にあるアツマの部屋の方を見て)
「良かった。
アツマくんに『好きなんだと思う』って言っちゃったら、気持ちが一気に軽くなった。
さやかも、お兄さんに、もっとベタベタ甘えてみたら?」
さやか「ん…(-_-;)」
♪ピンポーン♪
愛「あ、アカちゃん来た」
さやか「夏休みの宿題の総仕上げね!」
愛「うん、始めよう!」