【愛の◯◯】「あすか先輩のお兄さんはMAX」

 

「おはようー、ヒナちゃん」

「おはよーございます、あすか先輩」

「今日と明日は、母校の文化祭だね」

「行くんですか、あすか先輩? あたし、ちょっと迷ってて」

「わたしもだよ〜、迷うよね」

「ダルさ半分、好奇心半分」

「文化祭の運営はもちろん生徒会なんだけどさ、今年の生徒会長って誰なんだっけ?」

「忘れちゃいましたねー、男の子だったと思うけど」

「まあ、いっか」

 

× × ×

 

「聴いてくださいよ、あすかせんぱ〜い。あたしの兄貴、超ウザいんですよ〜〜」

「なんでかな」

「あたしが貸した漫画を酷評してきたんですよ!! 酷評するのならわざわざ借りるなって感じ」

「あーっ」

「あり得ないですよね!? なんであたし、こんな兄貴を持ってしまったのかなぁ」

「尊敬できないか」

「その点、あすか先輩のお兄さんは素晴らしいですよね」

「……えっ??」

「――尊敬してるんでしょ?」

「そっそんな。ウチの兄貴に尊敬の念だなんて……」

「えぇ~」

「……なんでそんなにわたしの愚兄(ぐけい)を高く買うのかな」

「先輩、『愚兄』って言っちゃった」

「だって、愚兄は愚兄なんだもん」

「アツマさんは絶対、愚兄の反対ですよぉ」

「根拠は!?」

「んーー」

「こ、根拠が、無くちゃ」

「たくましいトコロ、とか。」

「カラダつきのコト?? 確かに兄は、筋肉質ではあるけど」

「ピンチになったら救ってくれそうでしょ」

「んんっっ」

「あたしの兄貴、あたしがピンチになっても、全然頼りにならなそう。その点、先輩のお兄さんのアツマさんは、頼り甲斐MAX」

「ま、MAXだなんて」

「あ。……見える見える、先輩が電話の向こうで、慌てふためいてる様子が」

「ひ、ひ、ヒナちゃんは今、電話の向こうで、絶対ニヤけ顔になってるよね!?」

「良く分かりましたねー☆」

「ヒナちゃあん……」