えー、12月20日になりました。
早いですねー。
2学期も、あとわずか。
ということは、ことしも、あとわずか。
なんでこんなに、時の流れは早いのかなあ?
……寒くありませんか?
急に冷えこんできた気がするんですけども。
とくに、朝とか、朝とか。
「足の指先とか、冷たくなっちゃうよね~」って、おねーさんと嘆き合ったりしているわたし。
足先だけじゃなく。
手の指が……かじかむ、というか、なんというか。
凍えるような空気の朝は、PCのキーボードを打つ手が震えてきて、つらいです。
…こんな季節は、朝方にノートパソコンを操作するものでもないのでしょうか?
…そうはいっても。
そうはいっても。
気づいたら――早朝にノートパソコンを起ち上げている人間も、世の中には居るんでして。
× × ×
「はぁ。
わたしの意見と、中の人の意見が、地の文でごっちゃになっちゃった」
「…あすか先輩? どーしたんですか? それ、ひとりごと??」
「あっ、ごめんヒナちゃん。ビックリしちゃうよね、いきなりヘンテコなこと口走ったら」
えーと、放課後のスポーツ新聞部活動教室なわけです。
状況説明、状況説明。
「あすか先輩、きょうはなんだか、ボーッとしちゃってる気が」
「寒いからかな」
「暖房は、じゅうぶん効いてると思うんですけど……」
「きょう、体育があったの」
「……はい」
「校庭を走ったの。冷たかったの。巨大な冷凍倉庫のなかを走ってる気分だったの」
「で、でもっ、走ったら、ちょっとはあったまりませんか」
「……フフ」
「な、なんですかっ、その意味深な笑い!?」
「ウォーミングアップの時間は、終わりだな」
「そーですよぉ。部長らしく、しっかりしてほしーです。あたし、アメちゃんあげます」
ヒナちゃんからキャンディを受け取るやいなやわたしは、
「ヒナちゃんってさ」
「?」
「キャンディのこと、いつも『アメちゃん』って言うよね」
「――昔から、そうなんです」
「小さいころから?」
「はい」
「わたし、『アメちゃん』って言うのは、大阪のオバちゃんだっていうイメージなんだけど」
「……」
「『アメちゃん』って、関西弁由来の言いかたじゃない?」
「あ、あたし、生まれも育ちも東京都」
「疑わしいな~」
「い、イジワル言わないでください、先輩」
「――ヒナちゃん、その顔、かわいい」
「先輩っ」
だけど――、
「ひとのこと、言えないや」
「?」
「わたしの兄もね、」
「アツマさんも?」
「兄も、『アホ』が口癖になっちゃってるの」
「へ、へえー」
「ときどき、『あすかのアホっ!!』とか罵倒してくることも」
「そ、そうぞうできない」
「アホらしいったらありゃしないんだけどね」
「……アツマさんが、ですか?」
「そ。アホアホ兄貴」
「……」
アホアホ兄貴宣言。
でも――。
「――基本、アホアホな言動と行動ばっかりだから、かえって、いざというときに、頼りになっちゃうのかもしれない。……変な理屈だけど、ね」
「それは、アツマさんに対する……」
「信頼宣言だよ。ヒナちゃん」
じゃなきゃ、
信頼してなきゃ、
心の底では、信頼してなきゃ、
背中に抱きついて、甘えたりなんか……しない。
× × ×
将棋盤とニラメッコの加賀くんのもとに、接近。
「ずいぶんムチャクチャなこと言ってんなあ、きょうのあんたは」
「月曜日だからかな」
「はあ?」
「週初めだし」
「…いみわからん」
「ねえねえ。将棋盤使って、『アメちゃんゲーム』できないかなあ」
「アメちゃん……ゲーム……??」
「キャンディを、将棋の駒の代わりにするんだよ」
「ふ……ふざけやがって」
「ダメー??」
「ふざけすぎだろうがっ。アメを駒代わりにするとか、どこまで将棋盤を冒涜するつもりだ……!」
「おーっ。
『冒涜』なんてことば、知ってたんだあ。えらいえらい」
「……なめるのは、アメだけにしろよ」
「ウフフッ」
「笑うな!!」
「加賀くん、そのちょーし、そのちょーし」
「っるさい」
「部長職を譲るタイミングも、迫ってきてる感じ」
「…そうなんか」
「いつにしよっかなー」
「…3月、とか、言わないよな?」
「~~♫」
「口笛吹くな」