「いいお天気ねえ♫」
「そうだね、お母さん」
「初恋の頃を思い出しそうな天気だわ♫」
「えっ」
「しぐちゃんは、どう?」
「ど、どうと言われましても」
「思い出さないの? 初恋の頃のキ・モ・チ♫♫」
「えええっ」
「ずいぶん派手にビックリするのね♫」
「だ、だって、だって……」
「しぐちゃんはまだ若いから、初恋のキオク、まだ鮮明なんじゃないかなー、って思うんだけど♫」
「な、な、なんで、そ、そ、そんなコト言うかな、お母さん」
「テンパってるわね♫♫」
「なぜそんなに嬉しそうな顔!?」
「いいお天気が、わたしを嬉しくさせるのよ♫」
「……初恋なんて、遠い過去だし。もう消化できてるから、私」
「ホント~~~??」
「せ、せまってこないでっ」
× × ×
「もうっ。お母さん、こっちはね、初恋バナシどころじゃないんだよ??」
「なにかあったのー?」
「あったの」
「詳しく♫」
「さっき、麻井律(あさい りつ)と通話してたの」
「あらー、律っちゃんと♫」
「久々に、あいつと、口論みたいになっちゃって」
「ケンカー? あなたと律っちゃん、『ケンカするほど仲が良い』って感じだけど♬」
「些細なコトで、なんだけどね」
「是非とも詳しく♫♫」
「あるわね。美味しいわよね♫」
「果汁グミだと、私はブドウ派なんだけど、あいつはなんとマスカット派で」
「それで論争に!?」
「うん……。すごーく下らない議論なんだけど、お互い譲るコトができなかったの」
「おもしろ~~い♫♫」
「そんなに面白くも無くない……?」
「面白いわよー! スゴいコトで議論になるのね!! まさに『ケンカするほど仲が良い』、理想の女友達♫♫♫」
「お母さん、音符マーク重ね過ぎだよ」
「メタフィクションはお仕置きダゾ♬」
「ぐっ」
「ところでぇ☆」
「こ、今度は星マーク!?」
「――しぐちゃんは」
「な、なに!?」
「ナンパされたり、しないのぉ??」
「おかあさんっっ、とーとつすぎる、とーとつすぎるからぁ」
「悲鳴、上がっちゃった☆」
「愉しそうに星マークつけないで!!!」
「しぐちゃんだって、ビックリマーク3本」
「あああああっもうっ」
「そうねえ。しぐちゃんだったら、原宿が、ナンパされる確率高いかしらね♫」
「根拠が無いよ。私の大学に原宿が近いってだけじゃん」
「もうひとつ、『ナンパ注意報』出そうなのは――目黒♫♫」
「目黒!?」