【愛の◯◯】愚兄を崇める女子(ひと)たち

 

トリオ女子会である。

場所はアカ子さんファミリーのお邸(やしき)で、

・わたし(あすか)

・アカ子さん

・マオさん

の3名が参加者。

 

久々にアカ子さんに会ったというマオさん。

アカ子さんと相対するソファに座っている彼女は、

「アカ子ちゃんは、つらいよね……」

としんみり言い、

「ハルがわたしの実家の店に来た時に、不穏な気配をもっと感じ取っておくべきだった。感じ取れてたら、『ハルの様子がおかしい』って、アカ子ちゃんに前もって連絡することもできてたのに」

と、肩を落とし、視線も落とす。

アカ子さんは優しく、

「気を遣わなくてもいいですよ、マオさん」

「でも、でもでもっ」

「きっとマオさんは、ハルくんに強い憤りを感じてるんでしょうけれど」

「……けれど?」

「彼に怒るよりも、彼を心配してくれるほうが、わたしは嬉しいんです」

困惑するマオさんに、アカ子さんは、

「今はもう、わたし、彼のこと、だいぶ許すことができていて」

「許す……!? 許すって、アカ子ちゃん――」

「理由を説明すれば長くなりますけれど、聴きたいですか」

よりいっそう困惑するマオさん。

アカ子さんは、ちょっぴり申し訳無さそうに、

「ごめんなさい。なんだかマオさんを追い詰めるみたいになっちゃって」

「……」となにも言うことができないマオさん。

「結局」

と、アカ子さんは、

お酒が全部解決してくれるんだと思います」

ギョッとするマオさん。

「おさけ!? おさけっていった!?!? アカ子ちゃん」

「ハイ」

満面の笑みでもって、21歳のお酒大好きお嬢さまのアカ子さんは、

「『酒は百薬の長』ですから」

「ちょ、ちょーっと、それ、意味合い違うんじゃないかなー」

マオさんを華麗にスルーして、にっこりと、

「違わなくたって違ったってどっちでもいいんですけれど」

と言い、

「今は呑みませんから。そこは安心してください」

と言って、

「あすかちゃんも安心していいわよ」

と、わたしに向けて言ってくる。

 

× × ×

 

わたしから見て右斜め前に座っているのが、脅威のアルコール耐性を誇っている社長令嬢のアカ子さんである。

左腕で頬杖して、アカ子さんがわたしのほうを見てきた。

麗しきお顔で、

「それにしても、あすかちゃん」

と言ったあと、

「あなたのお兄さんは、とってもステキなお兄さんよね!」

と言ってきたから、ドッキリ。

超弩級のドッキリのあとで、わたしの胸が勝手にドキドキし始める。

「わたしアツマさんを心から尊敬しているわ。これまでに何度も助けられたし。ピンチの時にいちばん頼りになるのは、なんといってもアツマさんなの」

衝撃を受けながら、

「な、な、なんですか、それ……。なんで、そこまで、兄を持ち上げるの、持ち上げるコトができるの」

「『なんでも』よ、あすかちゃん」

1つ年上の余裕で、不可解にもわたしの兄貴を限りなくリスペクトしているアカ子さんは、

「そこまで驚きを受けるのは意外ね。以前から、『アツマさんはカッコいい』とか、あなたに言ってきたと思うんだけれど」

すかさず、今度は、マオさんが、

「そうだよそうだよ!! アツマさんは、カッコいいんだよ!!」

わたしから見て左斜め前のマオさん。

彼女が、次第に、わたしに向かって前のめりに……。

「ねえ、スゴいコト、言っちゃっていい?」

わたしが応答する前に、

「最近なんだけど、アツマさんの妹になる夢見ちゃったんだよ、わたし」

眼の前が真っ暗になるカウントダウンが始まっちゃいそうな、本当の妹のわたし……!!

「うわ~っ、羨ましいです、マオさん!」

明るく羨ましがるアカ子さんの声が遠のきそうになってくる……。

「アカ子ちゃん、あのね、わたしさ、夢の中で、お兄さんになった彼に、お弁当作ってあげたんだ」

「ステキ~~!! 羨ましい!! わたしもお弁当作ってあげたいわ~~!!!」

 

マオさんも、アカ子さんも……。

なんなんですか、そのテンション……。

 

兄貴がベタ褒めされてるのに、泣きたくなってくる、妹。