「小麦(こむぎ)さん、今日は短縮版ですよ」
「たんしゅくばん!? それ、おいしいの!?」
「とぼけないでください」
「とぼけるよ~~」
「『800字ぐらい喋ってください。短縮版なので喋りすぎにはご注意を』と言われたんです」
「だれに?」
「それは秘密です」
「卯月(うづき)ちゃん卯月ちゃん。『800字ぐらい喋る』って言い回し、なーんか不自然じゃない?」
「細かいコトはいいんですよ」
「うぉ」
「……なんですか」
「卯月ちゃんが、『細かいコトはいいんですよ』って言うなんて!」
「悪いですか」
× × ×
「短縮版、だっけ? こういう場に登場するのは2人とも初めてじゃん? 自己紹介をしたほーがいいんじゃないの」
「小麦さんらしからぬ賢さですね」
「うえーん、卯月ちゃんがイジメてくるー」
「……しますよ、自己紹介。
私は鈴木卯月(すずき うづき)です。
泉学園に通っていてもうすぐ高校2年、部活動は放送部。
なにとぞよろしくお願いします」
「エエッ、自己紹介それだけ!? 卯月ちゃん」
「短縮版なので、あれこれ言っているヒマはありませんから」
「あーっ確かに。
んっと、わたしからも自己紹介しなきゃだねえ。
わたしは、中嶋小麦(なかじま こむぎ)っていいます。
泉学園に通っていてもうすぐ高校3年、すなわち卯月ちゃんの1個上のセンパイ! そして部活動も卯月ちゃんと一緒の放送部!!
さらにさらに、卯月ちゃんとは、家が『ご近所さん』同士。中学3年になったときに、わたしが卯月ちゃんのご近所に引っ越したの。それからは家族ぐるみの付き合い――」
「『家族ぐるみ』は余計じゃないですか?」
「エーーーッひどいよ卯月ちゃん。わたしのファミリーと卯月ちゃんファミリー合同で、何回もピクニックに行ったりしたじゃん!」
「……」
「あれ」
「……行きましたけど」
「もしやもしや卯月ちゃん、ピクニックに行ったこととかバラされると、恥ずかしくなっちゃうの!?」
「……小麦さんっ!!」
「どわぁ」
「800字、過ぎてますからっ」