「ギン、今日は短縮版」
「あーそうかー、ルミナ」
「……相づちがいい加減ね」
「悪かった」
「それと、ギンはなんで、さっきからスマホいじりまくってんの?」
「おれのスマホ調子悪くって」
「どんなふうに」
「音割れするんだよ。満足に音楽が聴けないんだ」
「水が入ったとかでしょ」
「うお、よく分かったなルミナ」
「スマホに水を入れちゃうなんて自業自得ね」
「おっしゃる通り!」
「素直すぎない……?」
× × ×
「ねえねえギン、あたし、戸部アツマくんと羽田愛ちゃんがさ――」
「気になるんか」
「気になるよ!! 『どんなふたり暮らしを送ってるのかな!?』って」
「もしや、豊島区某所のマンションに行ってみたいとか」
「なんであたしの気持ち分かったの」
「おまえがおれの幼馴染みだから」
「……あっそ」
「いや、ここでプイッと顔を背ける意味が分からん」
「……」
「ルミナ。説教する気は無いが……ふたりのマンションにアポ無しで押しかけるのだけは、やめような」
「ちゃ、ちゃんとアポぐらい取るよっ、社会人なんだから」
「社会人……か」
「ぎ、ギンのアホっ」
「なぜアホと言うか」
「ぜったい呆れかけてんでしょ、あんた」
「まあそうとも言えるかなあ」
「ほんとーにアホなんだからっ」
「アホとかバカとか連呼するのは、あんまり良くないぞ?」
「なんでよ」
「節度だ、節度。――それこそ、社会人なんだからさ」
× × ×
「ギンの態度のせいで25分間もスネちゃったじゃん、あたし」
「わるかったわるかった」
「……ねぇ、ギン。あのね」
「なんだ、そのジト目は」
「いま、あたしとあんた、あんたの家のあんたの部屋に居るんだけど……」
「??」
「今度でいいから……『ここ』で1日中過ごしてみたい」
「……『ここ』で、1日中??」
「そ」
「なんだよ、『ふたり暮らし』気分を味わいたいとかか」
「び、ビンゴ……」
「変なタイミングで照れるのな」
「とにかく!!!」
「うお」
「1日中、『ここ』で過ごして、それで……チキンライスをあんたに食べさせたい。作りかた、おばさんに教えてもらって……」
「おまえはスキあらば『チキンライス』だよなー、ホント」
「コドモ扱いしないで!!!」
「してないから」