『誕生日、おめでとうございます!』
電話の向こうで、羽田愛ちゃんが、あたしの誕生日を祝ってくれている。
「ありがと~」
『あの、ルミナさん……』
「なあに」
『アツマくんも、ルミナさんの誕生日、ちゃんと憶えてて……』
「なんと!」
『それで彼、『ルミナさんの誕生日をおれも祝福します、って言っといてくれ』って、わたしに』
「律儀だね」
それにしても……。
「戸部くんの記憶力も侮れないな。あたしの誕生日、ちゃんと記憶してるなんて」
『そこらへんは案外きちんとしてるんです、彼』
「それは、愛ちゃんの実感?」
『はい』
……微笑ましいんだから。
「愛ちゃん」
『…?』
「これからも、戸部くんに頼らなくちゃダメよ」
『…え?』
「頼りたいだけ頼らなきゃ」
『ルミナさん……?』
ゴメンね。
言いかたが、不器用で。
× × ×
夕方5時を過ぎて、じぶんの家を飛び出し、ド近所のギンのお家(うち)まで歩いて行く。
出迎えてくれたおばさんへの挨拶もそこそこに、階段を猛スピードで上がる。
ドバーン! と、ギンのお部屋のドアをオープン。
「ノックもせずに、おまえは……」
ギンが盛大に呆れている。
が、
「ギンは、女の子じゃなくて、男の子だし」
「は!?」
「…ま、女の子男の子云々は別として、『ギンの部屋にはノック無しで突入しても構わない』って法律があるんだから」
「どういう法律だよっ」
「あたしがいま制定しました」
「……」
「あたし立法」
「……ほんとうにおまえ、法学部卒なのかよ」
そうツッコみつつも、ギンはあたしに身体を向けて、
「今晩、母さんが、特製チキンライスを作ってやるってよ」
「マジ!?」
「ああマジだ。奮発して、肉屋さんから上等な鶏もも肉を買ってきたとさ」
「おばさん……ありがとう……」
「や、感謝するなら母さんに直接感謝しろよ」
「……だね」
おばさんに、感激。
…特製チキンライスを作ってくれるおばさんへの感激を持続させつつ、ギンの冴えない幼なじみフェイスを凝視して、
「ギン。――あんた、なんか忘れてるでしょ」
「へ??」
「きょうはなんのひかなー」
「……。
なるほど」
「……理解したのなら、言いなさいよ」
「おう。言ってやる」
「早く。もったいぶらせないで」
「……」
「ぎ、ギンってば」
「階下(した)から……チキンライス作ってる匂いがしてくる」
「なぐられたいの!?」