「アツマくん、今日は短縮版よ」
「ちっ」
「舌打ちダメ!! ダメゼッタイ!!」
「やけにテンション高いな」
「悪いかしら」
「大学で嬉しいことでもあったんか? 愛ちゃんよ」
「嬉しいことは、特には。だけど――」
「だけど?」
「――昨日、大学でわたし、ちょっと大人気(おとなげ)なくって。大学というか、サークルで大人気なかったんだけど。大人気なかったっていうことが、今日のハイテンションに直結してるのかも」
「愛……。大丈夫なのかよ、おまえ」
「ちょちょっとお!!! どうして頭を抱えちゃうわけ!?」
× × ×
「サークルで大人気なかったのと今日ハイテンションであることとは直結するわけがない。冷静になって考えてみろよ、おまえも」
「わかったわかった、わかったわよ。わたしが支離滅裂だったってことにしてあげるから」
「はぁ……おまえの将来が思いやられる」
「あのねアツマくん。サークルで大人気なかったっていうのはね、具体的にはね、」
「……」
「どうしてソッポ向いちゃうの!? どうしてわたしの顔見てくれないの」
「ソッポ向いてるわけじゃねーよっ。
ランニング。ランニングに行きたいんだ、おれは!」
「ランニングの身支度がしたいってわけ!?!?」
「そーだ。タオルとか、取りに行く」
「ゆるさない」
「は!?」
「わたしも、アツマくんに、つきあう!!」
「……つきあうって、ランニング……を??」
「そーにきまってんでしょー??」
「なぜ……」
「あなたが走るんだったら、わたしも走る」
「む……」
「普段の生活が二人三脚なら、体力づくりも二人三脚よ」
「……かなわねーな、おまえには」
「あなたがわたしにかなうわけないでしょ!?」
× × ×
「愛よ。『その気』なのなら、着替えて来いよ」
「わかってるわよ。着替えるわよ」
× × ×
「~~♫」
「マジでテンション高いのな。着替えたあとで、鼻歌歌いながら部屋から出て来やがって」
「フフッ」
「お、おれのツッコミが、なんかおかしいかっ」
「最高ね……。
土曜日の朝に、好きなヒトと、一緒にランニングができる、幸せ……。
愛してるわよ、アツマくん」
「ば、ば、ばっきゃろ!!
読者の皆様の99%が気色悪がるようなセリフを……!!」
「99%は大げさよ~~」
「今日……おれは……何度頭を抱える羽目になるのか」