冷蔵庫の中のスポーツドリンクを取りに、ダイニング・キッチンに行った。
そしたら、ダイニングテーブルに、愛と流(ながる)さんの2人が、隣同士で座っているではありませんか。
あれっ?
あなたたち2人って、ケンカしてませんでしたか?
不協和音は、どこへ?!
テーブルに置かれた紙を見ながら、2人はアレコレ話している。
おそらく、流さんの書いた小説をプリントアウトしたものを見ながら、話し合っているのだ。
仲睦まじく。
笑いも交(まじ)えて。
いや。
おふたりさん。
いったいどうやって、仲直り??
おれを察知した愛が、
「なーにボーっとして突っ立ってんのよ、アツマくん?」
と、笑いながら言ってきやがった。
「ずいぶんおマヌケなご様子ね」
ぬな。
「用があってここに来たんでしょ? 動きなさいよ」
ぬなあ。
…冷蔵庫を開ける前に、愛&流さんコンビの向かい側の椅子に腰掛ける。
右手で頬杖をつき、
「なかよしだよな、おまえら……。
一夜にして、ガラリ一変(いっぺん)、か」
と言う。
「ガラリ一変(いっぺん)ってなんだよ、アツマ」と流さん。
「意味がわかんないわ」と愛。
「だって……昨日の夜は、ソッポ向き合ってたし」
「アツマくーん」
愛が、
「いつまでも、わたしのこと、女子高生みたいに思ってない??」
なっ……。
「……んなわけあるか」
「ホントぉ~~??」
挑発的な笑みで、
「ひと晩寝たら、チャラになるんだから」
と愛。
「チャラになる、って」
「元通りになるってこと。
仲直りするまで、時間はかからない。
オトナなんだもの。
そう。
オトナ同士なんだから……わたしと、流さんは。」
ニコニコと流さんに笑いかける愛。
うなずく流さん。
× × ×
夕飯の席でも、愛と流さんは隣同士だった。
一気に友好的になりやがって。
折り合った理由が一向にわからないまま、自分の部屋で漫画雑誌を読んでいた。
すると、ノック音。
愛が勝手に部屋に入ってくる。
ノックの意味ねえだろ。
まあ、それはいいとして、
「なあ。『いつ』仲直りしたんだ、おまえら? きっかけは?」
と訊くのだが、
「比較的珍しいわね、あなたがヤングキングアワーズを読みふけってる光景は」
とか、わけのわからんことを言い、おれの疑問には一切答えようとしない。
「……なんで仲直りできたのかを教えてくれんと、モヤモヤしちまうだろが」
愚痴ると、
「そうね。モヤモヤよね」
と言い、
「金曜の夜なんだし、モヤモヤは晴らしちゃったほうがいいわよね」
とか言い、
「パーッとやりましょうか」
とか言い出し、
それから、
「飲むわよ。アツマくん」
とか、言い出してきやがる……!!
「飲む!? 酒を、か??」
「お酒に決まってるでしょ。さっきも言ったけど、わたし、オトナだし」
「……」
「ダメよお。そんなカタい顔しちゃあ」
「飲むって、どこで」
「階下(した)のダイニング」
「おまえと、ふたりで?」
首を横に振り、
「ううん、流さんと3人で。あなたとふたりで飲むのは、また今度」
「流さんと、ってことは――仲直り記念パーティー、的な」
「そこまで大げさじゃないけど」
苦笑しつつ、
「でも、それもあるわね」
ハァ……。と溜め息をつき、おれは、
「わかったよ」
と素直に言う。
「おまえが羽目を外しすぎる危険性もあるしな。ビールとか、炭酸系に手を出さないかどうか……見てないと」
「マジメなのね」
「おまえよりは」
「生真面目なくらいに」
「それはおまえの不真面目レベルが凶悪すぎるからだ」
「えぇーーーっ」
「オーバーリアクションやめーや!!」