【愛の◯◯】「善意」と「ホテル」と「お散歩」

 

関係各所に連絡する。

電話やらメールやらで、大井町さんが学業に復帰できるように、尽力する。

ひと通り「手続き」が完了。

いまだ絶望の只中(ただなか)に居る様子の大井町さんに、

「なんとかなりそうよ。安心していいわ」

と言ってあげる。

そして、彼女の左肩に左腕を持っていき、抱き寄せる。

スキンシップは大事だ。

「羽田さん……」

「なあに」

「あなた、どうして、ここまで、わたしのために」

「おバカねえ、あなたも」

「!?」

「ここで、なんにもしてあげなかったら、最悪のオンナじゃないの、わたし」

「最悪……って」

「そこまで腐りきってないのよ、性格」

「……」

弱々しいを通り越した状態の彼女に、

「おなか、すいたでしょ?

 わたしが朝ごはん作るわ。

 わたしが作ってる間に、顔を洗ってきたらどうかしら?」

と告げる。

わたしのほうをジットリと見てくる彼女。

それから、ゆるーりゆるーりと、ベッドから立ち上がる。

その挙動を合図に、わたしも立ち上がる。

 

× × ×

 

朝食後。

 

「ねえ、大井町さん大井町さん」

「……?」

「あなた、大きなお風呂に入ってみたくない??」

「……!?」

「良い入浴スポットに招待してあげるわ」

唖然として、しばらくこっちを凝視して、それから、

「もしかしたら……あなたが住んでた、お邸(やしき)に……」

「ビンゴよ☆」

「で、でも、こころの、準備が」

「まあそれもそうよね」

それもそうなんだけど、

「でもいつかは、あなたに来てほしいな~。大浴場以外にも、いろんな『お楽しみ』があるんだし」

「な、なにそれ、『お楽しみ』??」

「あのお邸(やしき)は、ホテルなのよ」

「ホテル!?」

「是非ともお泊まり、してほしいんだけどな~~」

彼女の頬(ほほ)がちょっと赤くなる。

構わずに、

「あなたにお泊まりしてもらった暁には――」

「……えっ?」

「――ううん。あなたが『ホテル』に来てくれるまで、『これ』は取っておくわ」

 

× × ×

 

部屋に籠(こ)もっていては心身ともに悪影響なので、ふたりで外をお散歩してみることにした。

「羽田さん」

大井町さんが、

「わたし、ジャージのままで外に出るわけには……」

まあそうよねえ。

「まあそうよねえ。着替えるのがベターよね」

「そう。ベター。だから……わたし、着替えるから」

「どうぞどうぞ」

恥じらう大井町さん。

あのねーっ。

「あなたの部屋なのよ? しかも、オトコの人が居るならまだしも、女子2人だけの空間じゃないのよ、今は」

――しかしながら、恥じらいを持続させながら、彼女は自分のジーンズを取りに行く。

それから、微妙過ぎる距離を置いて、ジャージからジーンズに着替え始める。

ジャージを脱ぎ、ジーンズに脚を通す。

彼女が微妙過ぎる距離を取っているので、ペナルティとして、

「きれいな脚ねえ。きれいだし、わたしより長い。まさに美脚――」

と言ってあげた。

途端に顔がカーッとなって、

ど、ど、どこ見てるのよ!?!? 変なこと言わないでよっ!!!

大井町さん。

だって。

だって、ホントに美脚なんだもの。