【愛の◯◯】帰ってきたわたしは帰ってくるアツマくんを待ち受けて、それからそれから……。

 

一緒に外をぶらぶら散歩した。

帰ってから夕ご飯を作ってあげた。

それから2泊目の夜を過ごした。

さすがに添い寝はしなかったけど、大井町さんのベッドのすぐそばに寝転んで、彼女を見守っていた。

それにしても――念のため2泊分の着替えを持ってきてたのが功を奏したわね。

 

× × ×

 

5月10日の朝。

ブログの中ではまだ水曜日。

 

電車を乗り継ぎ、わたしとアツマくんのマンションに戻る。

彼はお仕事に行っている。

したがって、ふたり暮らしの部屋にわたしひとり。

大学に行ってもいいんだけど……。

どうせだからサボっちゃおう。

今日の講義はこれまで全出席だったんだし。

部屋で時間を潰す。

そうやって彼の帰りを待ちたい。

 

× × ×

 

18時15分にアツマくんは帰宅した。

「おかえりなさい」

「ただいま、愛」

「ごめん、お風呂まだ入れてない。忘れちゃってた」

「あーあー、別に構わん」

「それと」

「?」

「2日間も不在で、あなたに迷惑かけちゃったわね」

「そんなことねーよ。緊急事態の大井町さんを助けたかったんだろ?」

「しっかりと助けてあげたわ」

「ご苦労さんだな」

「ありがと」

 

真正面に立つアツマくん。

ジッと見つめてきたかと思うと、わたしにカラダを寄せ、抱きしめてくる。

珍しく向こうからのハグ。

そんなにわたしが不在で寂しかったの?

 

わたしの背中をポンポン叩きながら、

「お疲れだったよな」

と。

「ぶっちゃけ、そんなに疲れてはいないけど……。珍しいわね、あなたのほうから抱きしめてくるなんて」

「珍しいか?」

「いつもより積極的じゃないの。なにか理由でもあるの」

「無い」

「えー」

「黙って抱かれてろよ」

「えー、なにそれー」

 

× × ×

 

お風呂を入れている間に手短に報告をする。

「で、大井町さんは立ち直れたんか?」

「立ち直れたと思うわ。学業のこともなんとか立て直せるはず」

「おまえの貢献も大きかったんだろうが、彼女も強い子なんだな」

「ピンチなことをわたしに打ち明けるまでは、弱い子状態だったけどね」

「二面性……ってやつか。強さと弱さの」

「まさにそう」

「みんなにいろいろな事情があるってこったな」

「無いほうがヘンよ」

「うむ」

「彼女、いろいろな事情を抱えてる、その一方で……」

「??」

「……美脚の持ち主で」

「び、びきゃく!?」

「身長はわたしとほとんど同じなの。だからモデル並みの身長ってわけじゃないんだけど、脚はスラリと長くて美しくって」

「は、反応に困るんだが」

もっと彼を困らせたい気持ちもあったけど……残念、お風呂のタイマーが鳴ってしまった。

 

× × ×

 

お風呂上がりのアツマくんに、

「ねえねえ、今夜は飲みましょーよ」

と迫っていく。

「飲んでどーするんだ?」

おバカねえ。

「おバカねえ。どーするもこーするも無いわよっ」

「ぬぬ……」

「そういう顔のしかめかたは良くないわよ?」

「ぬぬぬ」

 

彼に構うことなく冷蔵庫へ向かい、とっておきの日本酒を取り出す。

2日間も彼のそばに居てあげられなかったんだし。

不在の埋め合わせじゃないけど、ふたりで、お酒を。