【愛の◯◯】短縮版のアン

 

「杏(アン)、今日は短縮版よ」

「えっマジ、はーちゃん」

「マジよ」

「……」

「? 不満なのかしら、アンは」

「だって」

「だって?」

「せっかく久々にブログに登場できると思ったのに。短縮版だなんて……『中の人』も、ヒドいことするよね」

「なるほど。ガッカリしてるってワケね」

「ガッカリだよ。

 中の人だけじゃなくって、戸部にもガッカリ

「……戸部くんにまでガッカリする必要もないでしょうに。可哀想よ」

 

× × ×

 

「あーもうっ。はーちゃん、わたし状況説明するっ!」

「お願いするわ」

「わたし藤村杏(ふじむら アン)。そして、わたしが『はーちゃん』って呼んでるのは、親友の葉山むつみ。

 現在(いま)は、土曜の午前中で――わたしの自宅に、はーちゃんに来てもらってる」

「そして、ここは、アンのお部屋」

「そう。2人とも床に座って、紅茶を飲んでいる」

「わたしはアンと対面(トイメン)」

「……隙(スキ)あらば、麻雀用語だね」

「申し訳ないわね」

「別にいいんだけどさ……。

 ところで。」

「なあに? もうお腹が減ってきたのかしら? それなら、わたしがお昼ごはんを作ってあげてもいいけど」

「違うよっ、そーゆーことじゃないのっ」

「どんなことに話題を切り替えたいの?」

「はーちゃんってさ……」

「?」

「珍しい喋りかた、するよね」

 

「えっ」

 

「いろんな見解は、あるにしても。

 イマドキ、はーちゃんみたいな喋りかたする若い女の子、なかなかいないと思うよ?」

「もしかして、あなた……語尾のことを言ってるのかしら」

ビンゴ

「……」

「『~わよ』とか『~かしら』とか、わたしの知り合いで語尾にくっつけてる子は、はーちゃんと羽田愛ちゃんぐらいだと思うんだけど」

「……あのね、アン。

 羽田さんの名前が出てきたけど……彼女があのような口調になったのには、ちゃんとバックグラウンドのようなものがあって」

「はーちゃんは、どうなの?? はーちゃんにも、バックグラウンド、無いの??」

 

それは……話せば……時間が……際限なく……

 

「いや、赤面しすぎでしょ」