「郡司くん、今日は短縮版」
「……!?」
「だからー、短縮版だってばあ」
「意味がわからんのだが、高輪(たかなわ)」
「わかってよ」
「えぇ……」
「わかってってば!!」
「お、驚かせるな」
「驚かせるよ」
「……」
「あのね、短縮版だから、1000文字までに終わらせるからね」
「……文字、とは」
× × ×
「時間と場所の説明。
現在(いま)は、土曜日の午前11時過ぎ。
わたしと郡司くんが居るのは、某大学某学生会館某5階――『漫研ときどきソフトボールの会』のサークル室」
「そんなに丁寧に説明する理由は?」
「地の文が無いから」
「……」
「あっ!! 郡司くん、『もうコイツになに言ってもムダかもしれない』って言いたげな顔してるぅ」
「そ、そ、そんなに極端なこと、思ってねぇよ!?」
「あやしいね」
「高輪、おまえ……」
「なに」
「……いや、やっぱいい」
× × ×
「ねー、もーちょっとシャッキリできないの、郡司くん?? 洗いたての野菜みたいに」
「なんじゃいな、その比喩は」
「洗いたての野菜になってよ」
「野菜にこだわるなよ」
「こだわる。わたしがフレッシュ幹事長なら、あなたはフレッシュ副幹事長」
「……」
「出た出た~~。『おまえの言語センス、明らかに飛躍してるぞ……』って内心ツッコミ入れてそうな顔面」
「……入れてない、ツッコミなんか」
「言い切れるぅぅ??」
「む、ムカつく顔しやがって!! まるで、高校時代を彷彿とさせる――」
「え~~~っ」
「――その不満に満ちた声も、高校時代を彷彿とさせてくるんだが」
「読者の皆さま」
「おいこら、こっち向けや」
「不都合なことに、わたしと郡司くんは、出身高校も同一でありまして」
「横目でチラ見するぐらいできんのか!」
「わたしよりも郡司くんのほうが引きずってるみたいで。高校時代を懐かしがりたい症候群になってるんだと思います。気持ちはわかる。だけど、もう大学4年生になる寸前だというのに、これでいいんでしょうか?! 就活シーズンも迫ってるのに」
「テーブルをグーで連打しながら喋るな!!」
「このままだと、自己PRで彼は、高校時代の思い出を盛りに盛ってしまいそうで……」
「いやそこまで腐ってないから」