【愛の◯◯】番組史上最も厄介な飛び入りゲスト

 

「はい!!!

 

 水曜日!

 冬の、水曜日!!

 

 ウインター水曜日だ!!!

 

 ランチタイムメガミックス(仮)、はじまるよっ!!!」

 

「うわぁ~~、異様なテンションだぁ~~、羽田くんが」

 

「…異様で悪い? 小路(こみち)さん。」

 

「悪いなんて言ってないよ」

「だったら、自己紹介して」

 

「無茶振りな羽田くんだなあ。

 わかったよ。

 えー、臨時特別ゲストで来ました。

 3年の小路瑤子(こみち ようこ)ですよん。

 お見知り置きを」

 

「……小路さんだから、許したんだよ?」

「なにを」

「ゲスト出演を!

 アポイントメントほとんどとってませんでした状態、だったでしょ。

 いきなり『出たい!』とか言ってきたから、困ったよ。

 次からは、3日前までに連絡してきてよね。

 アポだよ、アポ」

「――アポ、かあ」

「な、なに」

「わたしって、アホだと思う?? 羽田くん」

「なななっ……!」

「アポだけに、アホ」

「……意味が。意味が、わかんないよ」

「そっか。

 アホなこと言っちゃって、ごめんねえ」

 

「…小路さん、」

「なーに」

「『アホ』ってさ、関西弁だよね…」

「それがどーかしたの」

「きみは……関西地方の、とっても名門な国立大学を受けるみたいだけど」

「だけど?」

「早くも……関西に染まった気でいるのか」

「エー、羽田くんヒドいよっ」

「……A判定なんでしょ? あの大学」

手塚治虫大学だね」

「……まあ、出身者的には、手塚治虫大学だけど」

「あと著名出身者だれがいたっけ」

「いるでしょ、他にもいっぱい」

「例えば?」

 

「……ここで、オープニングナンバーを……」

 

「あ~、羽田くん逃げた~~。

 イケない男子だ~~」

 

ちょっと黙ってよっ!!

 

 …本日の1曲目。

 

 スピッツで、『ロビンソン』」

 

× × ×

 

「常日頃、わたし感じてるんだけどさ」

「なにを」

「羽田くんの選曲…不可解じゃない?」

「不可解ってのは」

スピッツの『ロビンソン』って。ゆとり世代ならいざ知らず、わたしたちの世代は完全に後追いで知った曲じゃん」

「…まあ、1995年の楽曲だし」

「そーゆーパターン、多い」

「ぼくたちが生まれる前の楽曲、流しすぎってこと?」

「うん。

 羽田くんの趣味、不思議」

 

「こ…ここで、お便りコーナー」

 

「――逃げるんだ。またしても」

 

「……逃げるが勝ち、とも言う」

「ほんとかな」

「ほんとだよ。勝つよ」

「アハハハハ」

「そ、そんな大笑いは自重」

「さぞかし――今から羽田くんが読むお便りも、爆笑できるような文面なんだろうねえ」

「有る事無い事を……。

 これだから、小路さんは」

 

「羽田くぅん」

 

「きょ、距離を詰めすぎじゃない!? ぼくに向かって――」

 

「あのさぁ。

 きょう1日、限定で……」

 

「……??」

 

「『羽田くん』じゃなくって、『利比古くん』って呼んでいい?」