「おおっと! 利比古くんだぁ」
「あすかさん……。どういうオーバーリアクションですか、それは」
「どういうもこういうもないよ」
「……朝も早くから」
「なんで頭を抱えるの利比古くん? そっちこそ、オーバーリアクションなんじゃん」
「悩みが尽きないんですよお、あすかさんのおかげでっ」
「悩むだけ、ムダなんじゃないの」
「……」
「ほら、顔、上げようよ」
「……プリキュア観たから、そんなに元気ハツラツなんですか?」
「えっ――関係なくない? たしかに、さっきプリキュアは観てたけど」
「……プリキュア、先週も観てましたよね」
「そうだよ、よく憶えてるね。きょうはデジモンも観た」
「――すっかりアニメなあすかさんですね。」
「アニオタではないからね、念のため」
「そんなことわかってますよ」
「――『オタク成分』」
「はい??」
「オタク成分なら、ぜったい利比古くんのほうが、『濃ゆい』でしょ」
「な……なにをもって」
「タブレット端末持ちながらわたしとしゃべってるんじゃん、いま」
「それが……どうかしましたか」
「タブレットが、手から離せないんだねえ」
「……タブレットとオタク成分の因果関係はなんなんですか」
「利比古くんがタブレットですることといったら、ひとつしかないでしょ?」
「う」
「そう。……ウィキペディア」
× × ×
「ウィキペディアを頻繁に閲覧してるから、オタク成分が濃ゆいと!? ちゃんちゃらおかしいですよっ!!」
「そんなに取り乱さなくても」
「ちゃんちゃらおかしいと思わないんですか!? あすかさん」
「まーまー、クールダウン」
「……」
「タブレット端末も、お熱出しちゃうよ。……流していこうか、この話題は」
「流すって……ふっかけたのは、あすかさんのほうですよね」
「利比古くん」
「なんですか……」
「湯気が出てる」
「湯気が出る原理を教えていただけませんか」
× × ×
「時間は経過して、おっひるまえ~♫」
「わざとらしい登場の仕方しないでくださいよ……」
「甘いね利比古くん。『時間が経過した』という事実を説明しておかないと、読者のみなさんがわかりにくいでしょ? ただでさえ、今回は地の文ないんだから」
「……はいはい」
「わ~、利比古くんが、手をヒラヒラ振って、わたしをあしらった~~」
「……べつにぼくは気を悪くなんかしてませんよ?」
「それならオッケー。……ここ、座るよ?」
「ご自由にどうぞ」
「ふう。退屈だ。退屈なうえに、おなかもすいた」
「なら、お昼までの時間つぶしに、クイズでもしましょうよ」
「く、クイズぅ!?」
「ハイ」
「ヤな予感するんだけど」
「――さいきんは、ウィキペディアで、九州地方のテレビ局について調べることが多いんですが」
「で、出た!」
「なにが出たんですか?」
「利比古くんの伝家の宝刀、ウィキペディアでテレビ局リサーチ」
「伝家の宝刀とはちょっと違う気が……。まあいいか。あすかさん、これからぼくが、九州地方のテレビ局に関するクイズを出します」
「……答えなきゃいけないの??」
「第1問。『RKB』は、どの県の放送局の略称でしょう?」
「あーる……けーびー……???」
「アルファベット3文字で『RKB』」
「……わかるわけないよ」
「残念です……あすかさん」
「だって、ぜんぜん問題のつかみどころがないんだもん」
「答えは、福岡県。RKB毎日放送です」
「……」
「第2問。『RKK』は、どの県の放送局の略称でしょう?」
「放送局の略称にこだわるとか……ストレートに、オタクっぽい」
「ヒント出しましょうか」
「せめてヒントでも出してくれないと、こんなクイズ、つきあってられないよ」
「ヒントは、『K』。アルファベットの『K』です」
「K」
「Kが、なにかの略になってるんですよ」
「K……K……。あっ、もしかして」
「気づいたみたいですね」
「熊本か、鹿児島の、2択?」
「正解にぐーっと近づいてます」
「なんとなくだけど……熊本だと思う」
「やっぱりあすかさんはすごい!!」
「え、当たった?」
「当たりです。熊本なんです。RKK熊本放送です」
「……ねえ。もしかしてあなた、ほのかちゃんにも、おんなじようなクイズを出しているんじゃ……」
「第3問!」
「……第3問で終わりにしようね」
「――では、『KKB』は、熊本か鹿児島、どちらのテレビ局でしょう?」
「鹿児島」
「おー、まさかの即答」
「茶番は早く終わらせたいし。さっきの正解が熊本だから、どうせ次は鹿児島なんだろうって」
「冴え渡るあすかさんの直感……!」
「鹿児島で合ってるの?」
「合ってます!! KKB鹿児島放送」
「――おつかれさま」
「あっちょっと待ってください!! すぐに席を立とうとしないで」
「第4問ならお断り」
「耳寄り情報がありまして」
「うさんくさい……」
「耳寄り情報というのは――九州・沖縄のテレビ朝日系列の放送局は、福岡を除いて、みんなリモコン番号が『5』なんですよ」
「あのさあ……」
「?」
「そんなこと知って……利比古くんは楽しいわけ?」
「楽しくならないんですか? あすかさんは」
「……シャワー浴びたくなってきちゃった」