「利比古くん、きょうは短縮版だよ」
「たん…しゅく…ばん…???」
「できれば、800字以内で締めたいよね」
「あすかさん、短縮版っていったい」
「あのね」
「……はい」
「『中の人』もさ、
毎日毎日更新していくためには、ときどきこうやって負担の少ない回を挟んでいくことも必要なんだよ」
「負担、って、なんですか……いったい、だれの、」
「『中の人』の負担に決まってんじゃん」
「……」
「納得できない??」
「い、いえ、決してそんなわけでは」
「…折り合っていこうよ。」
「…すごいニッコリ顔ですね、あすかさん」
× × ×
「『アタック25』が終わっちゃうんだってね」
「長寿番組が終わりを迎えてしまうと、さみしい気持ちになっちゃいますよね」
「亡くなった児玉清の存在が、偉大すぎたのかな……」
「貴重な、昔ながらのスタイルを保っていた番組だったんですけどね」
「『昔ながらのスタイル』~??」
「な、なんですかあすかさん、ぼくなんかマズいこと言いましたか」
「『昔ながらのスタイル』って、具体的には」
「……えっと、ですね。視聴者参加型クイズ番組という点が、まず――」
「そこはだれでも知ってるでしょ」
「ウッ」
「具体的な説明になってないよ利比古くん。もっと突っ込んだ説明をしてくれないと」
「……」
「どんな点が、『アタック25』を、『昔ながらのスタイル』たらしめているのか!!」
「たらしめている……ですか」
「そう!」
「あすかさんも、」
「?」
「『たらしめている』とか、なかなか女子高生が使わないような言い回しを使うんですね」
× × ×
「――あすかさぁん、いい加減こっち向いてくださいよぉ」
「利比古くんが変なこと言うからでしょっ!!」
「――あ、こっち向いてくれた」
「……」
「そ、そんな険しい表情で見なくても」
「話は逸らすし、女子高生の言い回しがどうとか言うし……」
「ごめんなさい」
「……いいよ。」
「かっ変わり身早い」
「早いよっ!!!」
「ひぇ」
「――800字、超えちゃってるんだけどさ」
「はいっ」
「『アタック25』について、もう少し…というか」
「んっ」
「『アタック25』にしても、30分前の『新婚さん』にしても、テレビ朝日じゃなくって、大阪のテレビ局が作ってるんでしょ」
「ABCテレビですね」
「そう、ABC。…たしか、プリキュアもABCだったでしょ」
「アッ!! たしかにっっ」
「アタック25、新婚さん、プリキュア……。日曜の5チャンネルって、大阪発の番組が、存在感あるよね」
「気づかなかった~~。言われてみればそうですよね~。日曜はABCテレビか~」
「…『気づかなかった』、って」
「えっ、その不満顔はどうして」
「本来、こういうことは、テレビオタクの利比古くんが、真っ先に気づかなきゃいけないことじゃんっ!!」
「ヒエェッ」
「『ヒエェッ』じゃないよまったくもう! まるでわたしのほうがテレ朝系列に詳しいみたいじゃん」
「んん……」
「もっとテレビオタクになってよ、もっとテレビオタクしてよ、利比古くん」
「……申し訳ありません」