【愛の◯◯】ことばのあせり

今日は冷えるし…ということで、おねーさんが昼食に温かいうどんを作ってくれた。

 

・おねーさん

・利比古くん

・わたし

・お母さん

 

で食卓を囲んでいる。

 

なかなか、斬新だ。

 

羽田姉弟と戸部母娘で向かい合うかたちになった。

 

おねーさんから見て右隣に利比古くん、

わたしがお母さんの左隣に座っている。

 

つまり、利比古くんとわたしが向き合っている状態だ。 

 

「利比古くん。」

「なんですか、あすかさん。」

「こうやって互いに向かい合ってごはん食べるの、はじめてじゃないかな」

 

「さぁ…どうでしょうか……」

 

なんで微妙に狼狽(ろうばい)してんの。 

 

「利比古」

「なに? お姉ちゃん」

「あんたとあすかちゃんの現在(いま)の位置関係のことをね、

 対面(トイメン)とも言うらしいんだってw」

 

「と、と、といめん???」

「葉山先輩っていうわたしの先輩が、教えてくれた」

 

ーー思わずわたしはお母さんの顔を見たが、ひたすらニコニコ笑っていて、いつもどおりだった。 

 

× × ×

 

食後。

 

いつもどおりにお母さんは昼寝。

おねーさんは、食器を片付けたあとで、洗濯物を畳みに行ってしまい、

ダイニングにはわたしと利比古くんだけが残された。

 

 

 

 

まだ向き合ってる。 

 

「あの」

「なぁに」

「葉山先輩って、どんな人なんですか」

「エキセントリックな人だよ」

「具体的には?」

「んー、

 常識に縛られない人」

「ぐ、具体的ですか、それは」

 

いじわる。 

 

「…簡単には、他人の敷いたレールに乗らない人だよ」

「はぁ…」

「こんど利比古くんにも会わせてあげるように、おねーさんに掛け合ってみるよ」

「は、はい…」

 

 

「ねぇ、利比古くん」

「は、はい??」

人生ゲームしない?」

「!?!?

 

 それは……あすかさんとふたりで、ですか!?」

ばかっ、おねーさんも呼ぶのよ」

 

(少しのけぞる利比古くん)

 

あ。

 

ああっ……、

 

また、利比古くんに「ばか」って言っちゃった。

 

 

 

 

 

 

優しくできない。

 

優しくしようと思ってるのに。

 

心よりも、ことばが、先走ってーー