【愛の◯◯】『ランチタイムメガミックス(仮)』春休み特別編(ただし録音)

 

「はい!

『ランチタイムメガミックス(仮)』、

 とっくべっつへ~~~ん!!!

 

 ――あらためまして、

 板東なぎさ、ですわよ、

 ですわよ、オホホ……。

 

 ……とか、お嬢さま口調は、置いておくとして!!

 

 きょうは、というか『今回』は、特別編です!

 というか、特別編というより、

 はっきり言って、録音です!!

 

 えっと、いま、春休みに学校来て、旧校舎の【第2放送室】に来て、しゃべってるわけなんですけど、

 春休みは当然学校休みで、ランチタイムという概念が存在しないので、生放送やっても意味ないわけです。

 だからこれは録音の特別編で、後日皆さんに発表する形になるわけなんですけど、『この番組は2021年4月2日に収録したものです』というお断りは、とりあえずここで入れておきます。

 

 ――そういうことだよね? 構成作家の羽田くん。」

 

「え、えっ、ぼく、『構成作家』でもなんでもないんですが……」

 

「今回はスタジオに構成作家の羽田利比古くんが来てくれてます」

 

「だから『構成作家』ってなんですか。ぼくはただのアシスタント役――」

 

「羽田くん」

「はい?」

構成作家はね、『笑い声』を出さなきゃならない仕事なんだよ」

「??」

「パーソナリティのしゃべりに反応して、笑い声出して、番組を盛り上げるの」

「おっしゃる意味が……」

オールナイトニッポンとかで、パーソナリティでもないのにゲラゲラ笑ってる人の声が聞こえない? あれは構成作家の声」

「深夜放送は、あまり……。夜ふかししないので」

「あれれ~」

「ダメ、ですか?」

「新しいラジオ番組作るんじゃん。主導権は羽田くんみたいなもんだし。ラジオの勉強のために、オールナイトニッポンは一度聴いておくべきだよ」

「そうなんでしょうか……」

「……本編に戻ります」

「……なんのために、ぼくに振ったんですか?」

「いいの、本編に戻るの!!

 

 ――きょうは、溜まってきたお便りを、たくさん読みたいんだよ、わたしは。

 録音だけど、時間があまりあるわけでもないし。

 

 ほら、羽田くん、早くお便りの紙、わたしに渡して。

 

 ――そんな仏頂面になんないで。

 

 えー、お便り読みます、読みまくりまーす。

 

 まずは、ラジオネーム『モンスターハンターハンター』さんから。

 

『最近あまりにも早い時間に眼が覚めて困ってます。朝5時にもならない時間帯とかに。寝不足というわけでもないんですけど、どうしたものでしょうか?』

 

 んー、起きるのが早すぎて困ってる、ってことですよね。

 でも、べつに、朝5時前に起きるって、悪いことじゃなくないですか?

 そんなに早起きしたのなら、朝ごはんまでの時間を有効に使っちゃえばいいんですよ。

 読書の時間にあてるとか、近所をランニングするとか。

『早起きは三文の徳』ってことわざあるけど、あれ、ぜったい三文どころじゃないよね。

 

 ――羽田くん、あなたのお姉さんも、早起きで有名なのよね?」

 

「ど、どうしてぼくに振るんですか、また、」

「だってわたしはあなたのお姉さんのファンだし」

「公私混同めいてませんか……」

だまらっしゃい!!!

「……本番中にアシスタントにキレないでください」

 

「お姉さんの早起きについて、なにかコメントしてちょーだいよ」

「そんな流れなんですか?

 有名であるかどうかは、わかりませんが……。

 そういえば、きのうは、姉は朝4時半ぐらいに起きたらしく、ずいぶん早い時間に、ぼくを起こしに来ました」

エッ!? 羽田くん、お姉さんに、起こされちゃったの!?

「――そのトキメキはなんなんですか、板東さん」

「ときめくよ。どうやって起こされたの、どうやって」

「気づいたら、姉がぼくの部屋に入ってきて、枕元で、『おはよう!』って――」

えええっ、きわどい、すんごくきわどい

「それから、『朝ごはん、作ってあげてるよ』って」

「エプロン――してたんでしょ」

「よくわかりましたね」

ひゃーったまんないなあー

「なんか……どんどん脱線してませんか?」

「これからもわたしは、あなたのお姉さんを応援していくから」

「……どうぞご勝手に」

 

「ねえ、次のお便りは、羽田くんが自分で読んでよ」

「丸投げするんですか!?」

「たまには、いいじゃん」

「……。

 

 ラジオネーム『ヤングマガジン普及委員会』さん。

 

『僕はマンガが好きです。板東さんは、マンガの巻数は、全何巻がベストだと思いますか?』

 

 …だそうです」

 

「――『進撃の巨人』って、完結したら、全何巻になるんだっけ?」

「そんなこと、知りませんよっ。いきなり『進撃の巨人』を持ち出したのは、なにゆえ?」

「もうすぐ終わりだから」

「あー、最終回のネタバレが、どうだとか……」

「あとで全何巻になるのかググっといてよ」

「……それで、『マンガは全何巻がベストか?』という板東さんへの質問だったと思うんですけど」

「ものによるよ」

「それ言っちゃ終わっちゃうでしょう」

「んん~~~、

 15巻から19巻のあいだぐらいが、ちょうどよくない?」

「ずいぶん、ピンポイントなんですね」

「フィーリング、フィーリング」

「フィーリングにしては、具体的すぎやしませんか…」

「…話は逸(そ)れるけどさ」

「またですかっ」

「面白いマンガの、見極めかたなんだけど――」

「はぁ。」

「――とりあえず、5巻までは、読んでみるんだよ」

「5巻?」

「そこまで読んで、先が気になるかどうかだよね。

 まあ、過去の名作で全5巻っていうのもあるけど、それはまたべつの話」

「どうして、5巻まで、なんですか? 『5』っていう数に、なにか妥当な根拠が――」

「フィーリング、フィーリング」

「なんでもかんでもフィーリングで済ますんですかっ!!」

「マンガなんて、フィーリングでしょ」

「……板東さんのラジオこそ、『フィーリング』の象徴ですよね」

「ふふっ☆」