葉山ちゃんの部屋を掃除していたら、かわいいデザインのノートが埋(うず)もれているのを発見した。
彼女には悪いと思いつつも、好奇心にかられて、ノートを開いてみる。
するとそこには――。
『夏』
夏。
なんてったって夏。
最上級の夏。
季節に抱きしめられて。
わたしの夏は、
あなたの夏も、
ソルティライチだったらいいのに。
わたしとあなたの夏が、
ソルティライチであってほしい。
ソルティライチみたいな甘さが、
溶け出してくる夏に、
さざなみのように聞こえてくるのは、
8月のオカリナの音色。
これ、
もしかして、
ぽ、
ポエム、
って、やつじゃないかな、
そうだよね、
どうしようもなく、
ポエム。
そっかあ。
葉山ちゃんも、スミにおけないなぁ~。
あはは……。
× × ×
「ルミナさーん、掃除もう終わりましたー?」
ひょっこりと顔をのぞかせる葉山ちゃん。
さりげない場所にさりげなくノートは置いておいた。
「終わったよ」
「ひゃ~、とてもキレイ~~! 部屋が生まれ変わったみたい!! いつもながらありがとうございます、どうやったらここまでキレイにお掃除できるんですか!?」
「特別なことは、してないよ。
ただ――真心込めて、やってるかな。
ピアノ練習させてもらう代わりの、約束だし」
「――あれっ」
ん、
どうしたのかな。
なにゆえ、照れてるみたいな顔になってるのかな、葉山ちゃん。
まるでなにか発見したみたいに。
彼女は顔を赤らめて、
「――もしかして、
見つけちゃいました?」